データが示す貧困の連鎖
貧困問題の報道でよく耳にする「連鎖」という言葉。だが実際、どのようにして貧困は連鎖していくのか。数ある調査資料の中から7つの数字をピックアップすると、現代における貧困の姿が浮かび上がる。
13.9%:子どもの相対的貧困率

厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」より。子どもの貧困率自体は、2012年から2.4ポイント下がった。だが依然として「7人に1人が貧困」という厳しい状態だ。
「当たり前の生活」が難しい人々がいる。
現代社会で問題になっている「相対的貧困率」とは、所得の中央値を下回っている人の割合だ。収入の問題で多くの人が当然と思う生活が送れなかったり、進学が厳しかったりという状態のことを指す。
19.2%:生活保護世帯に属する子どもの大学等進学率

内閣府「子どもの貧困対策に関する大綱」平成26年版より。高校までの進学率は同じ生活保護世帯でも90.8%と高い。しかし大学進学で一気に数字が落ちている。
152万円:一年間の大学への在学費用平均(子ども一人あたり)

日本政策金融金庫「教育費用の実態調査結果」平成29年版より。大学は実に高校の2倍以上も学費がかかる。大学進学への壁は高い。
教育という投資には即効性がない。
日本は学歴社会であり、大卒か否かは重要だ。しかし「1ヶ月後も同じ生活をする」ことを最優先事項として過ごす人々にとって、子どもの5年後10年後、その先の人生を見据えた投資は、経済的にも精神的にも難しい。
約20万円:大卒男性(50〜54歳)と高卒男性(同)1ヶ月分の収入差

厚生労働省「平成27年賃金構造基本統計調査」より。大卒と高卒の収入差は、新卒の頃は目立たない。だが男女共に年齢を重ねるほど、収入に大きく開きが出てくるのだ。
20%強:男性(25〜34歳)中卒・高卒の非正規雇用率

内閣府「平成27年 税制調査会議事録」より。男女共に、学歴によって非正規雇用率に開きが出ていることがわかる。
43%:中卒の1年目離職率

内閣府「子どもの貧困と社会的不利益」平成26年版より。高卒は19.6%、大卒は13%という数字を見ると、中卒の離職率は著しく高い。
中卒・高卒の人々が置かれる不安定な状況。
高収入・高待遇はあまり望めない。離職率は高い。自分一人生きていくだけなら、なんとかやっていけるかもしれない。けれど、守るべき存在がいた場合はどうだろうか。
子どもだった彼らが親になった時。

彼らは、いずれ親になることもある。だがその時経済的余裕がある可能性は、経済的に豊かな家庭と比べると相対的には低いだろう。一連のデータからわかるように、構造的に苦しい状況が続くからだ。これが貧困の連鎖の原因になっている。
とはいえ、支援制度も進んできている。
貧困の連鎖から抜け出すことはできる。そのための支援も徐々に進んできている。例としては奨学金制度だ。
38.5%:奨学金を貰っている大学生・短大生の割合

日本学生支援機構IR資料「学生数に対する奨学金貸与割合(平成27年度)」より。約2.6人に1人と、非常に多くの学生が奨学金制度を利用している。今年4月から返還義務のない給付型奨学金制度も始動しており、来年度から本格的に利用できる。
給付型奨学金制度も始動。

2017年4月から、返還義務のない奨学金制度が始まっている。大学進学への壁を少しでも低くするための、積極的な取り組みだ。
BuzzFeed Newsでは、貧困支援を以下の記事でも紹介しています。
Ayame Suzukiに連絡する メールアドレス:ayame.suzuki@buzzfeed.com.
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