日経ビジネスが実施したエアライン満足度調査で、日本航空(JAL)は座席の評価で全日本空輸(ANA)に差をつけた。特に座席同士の間隔を広げたエコノミークラスが高い評価を受けている。経営破綻というどん底から、どのように座席作りを見直したのか。JALの藤田直志副社長や開発担当者に聞いた。
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「シートが競合に比べて劣後していた」。日本航空(JAL)の関係者は口をそろえる。
JALが2010年に経営破綻するまで、設備投資の余裕がなかったため、古い機材が多く、座席は特に劣化していた。
「客室乗務員がまず乗客に『シートが古くてすみません』と謝らなければならなかった」と藤田直志副社長は振り返る。
ところが、今回の調査では座席への評価が高かった。座席スコア(国際線)は40.5点とランキング対象になった企業で3位につけ、36.1点だったANAを上回った。しかも、上位2社はオイルマネーによって新しい機材ばかりのカタール航空とエミレーツ航空だけであり、調査では座席に対する好意的な意見が数多く寄せられた。2012年の調査では21.1点、2014年が28.9点だから劇的にスコアが上がっている。
この座席の刷新は、JAL再生の象徴でもある。藤田副社長は「破たん後の大きな課題が座席をどうするかだった」と話す。
再建ではコスト削減が必須だ。座席にコストをかけることが再建の方向性と合っているのか。社内では侃侃諤々の議論があった。
コスト削減だけでは顧客満足度を高められない。再建計画を策定するなかで、「最高の座席が将来の成長につながる」という考えにまとまり、座席にもしっかり投資することが決まった。
そして、約3年の開発期間を経て13年からビジネスクラスに「スカイスイート」を導入。全席が通路にアクセスできる上に、座席のフルフラット化を実現した。
エコノミークラスの座席は、従来の座席間隔から最大で10cm広げ、世界最大級のスペースを確保した。またボーイング787型機では横に9席配列するのが主流だが、それを8席に減らし、座席幅を5cm広げた。
ただ、開発までの道のりは平たんではなかった。役員会では2つの派閥に分かれて大議論が巻き起こっていたのだ。
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