鋭い意見が満載!? 大川豊総裁が「インディーズ候補」に注目するワケ
- 2017年11月1日
「国難突破解散」で行われた今回の衆院選は、284議席を獲得した自民党の大勝に終わった。
民進党の分裂に始まり、与党を脅かすとみられた希望の党は大失速。その一方で、あわただしく結党された立憲民主党が反自民票の受け皿として急浮上し、結果として野党第一党となった。
自民党の勝利という結果は、事前のメディアの世論調査通りだったとはいえ、候補者にはいろいろとドラマがあった今回の選挙戦。「政治マニア」を自認する大川豊総裁にはどう映ったのだろうか。ライフワークである「インディーズ候補(泡沫候補)」ウォッチングから選挙の是非まで、幅広く語っていただいた。
大川総裁が演説の最前列に! その時、豊田真由子氏は……
――徹底した”現場主義”を貫く大川総裁ですが、今回の選挙もさまざまな候補者のもとに足を運ばれたのでしょうか。
大川 一通り行きましたよ。安倍総理、小池さん、枝野さん、前原さん。その他、インディーズ候補の方々も含めて、関東20か所くらいで演説を聞いて周ったかなぁ。
――インディーズ候補に絞っているわけではないんですね。
大川 そこはみなさん誤解されているんですよ。僕が演説を聞きに行くと、主要政党の候補者まで「俺もインディーズ候補扱いか……」って思うみたいですし。ただ最近は、メジャーのインディーズ化が進んでいるようにも感じますけど。
――どういうことでしょうか。
大川 政治のスキャンダルって、昔でいえば「ロッキード事件」とかですよ。いかにも”権力者の不正”って感じがしたじゃないですか。それに比べたら、最近の政治絡みの話題はもはやコント。籠池夫妻なんて芸人として悔しいレベルの面白さですよ。そんな人が国会に呼ばれちゃうんですから。
――つまり、自由な振る舞いが持ち味のインディーズ候補たちと変わらぬ言動が、メジャーの舞台でも見られるようになってきていると。
大川 そうなんですよ。豊田真由子さんも「このハゲーー!!!」で大ブレイクしたじゃないですか。「違うだろーーーー!!!」とか完全に腹から声が出てましたもんね。
――その手のスキャンダルほどメディアで取り上げられる時間も長く、目立つのかもしれません。
大川 だから豊田さんも相当引きずっていたと思いますよ。僕、志木市駅前で行われた彼女の演説を最前列で聞いてたんです。そしたらすっかり頭髪が薄くなった僕を見て、「あっ、ハゲの人だ!」と思ったんでしょうね。「このたびはご迷惑をお掛けしまして、本当にすみませんでした……」って突然謝ってこられて。
――向こうは大川総裁と気づいてなかったと。
大川 そうなんですよ! 僕もビックリしましたね。 その日は雨が強かったから、ビデオカメラが濡れないように帽子を取ってかぶせていたんです。ただそれだけのことだったですが、向こうからしてみれば、目の前のハゲが急に帽子を取ったから、抗議しに来たと思っちゃったんでしょうね。号泣しながら謝ってくるので、僕も一緒に泣いちゃいましたよ(笑)。
実はまとも? インディーズ候補たちの鋭い主張
――大川総裁が「インディーズ候補」と呼ぶ人たち、つまり既存の主要政党の支援を受けず、しがらみのなさを生かして大胆な主張をする候補者のことですが、今回もたくさん演説に行かれたのでしょうか。
大川 生粋のインディーズ候補はどこで演説しているかわからないケースが多いんですよ。選管(選挙管理委員会)に連絡先を伝えてなかったり、自宅を選挙事務所に登録していて普段は誰もいなかったりするので。
――じゃあ、演説の情報を運良くキャッチしないと見られないわけですか。
大川 そうなんですよ。だから、これまでは公示日に選管で候補者を捕まえていたんです。インディーズ候補の場合、本人がいらっしゃるケースが多くて、朝8時にマック赤坂さんが一人で来たりするんですよ。そこを捕まえて、直接連絡先を聞くと。
――なかなかゲリラ的な作戦ですね。
大川 いや、向こうもゲリラですからね。こちらも大胆に攻めていかないと。
――今回の選挙戦で大川総裁の目を引くインディーズ候補はいましたか?
大川 例えば神奈川8区で出馬したフェア党の大西つねきさん。彼はもともとJ.P.モルガン銀行で働いていた金融通で、「世界有数の金持ちである日本で国民の生活がここまで苦しいのは、日本政府の金融に対する無理解が原因だ」と力説されていました。その突破口として、「外国に貸している300兆円以上の対外資産をもとに政府紙幣を発行して全ての財源に充てる」って。面白い発想だと思うんですけど、有権者は通り過ぎてしまうんですよね。
――知名度の壁が立ちはだかってしまうと。
大川 そうなんです。だから、インディーズの皆さんも有権者に注目してもらおうといろいろ工夫していて。ほら、この山口4区の選挙公報を見てください。
大川 これ、郡昭浩さんという候補者の政見なんですが、手書きでちょっと怖いじゃないですか。で、肝心の政策については、「難しいことは私が当選させて貰えば話します」って、ようは受からないと教えてくれないんですよ! これも有権者に興味を持ってもらうための作戦らしいです。郡さんに電話したら、ずっと「イーヒッヒッヒッ」って高い声で笑ってましたよ。
――山口4区といえば首相のお膝元ですね。
大川 首相に憲法論議を挑むために、わざわざこの選挙区から立候補したそうです。そもそも憲法って誤訳と言われているじゃないですか。郡さんは親が裁判所勤めということもあって法律に詳しく、憲法も英語でスラスラ言える。つまりGHQ版を理解した上で憲法論議を仕掛けようとしていたんです。
――選挙公報から受ける印象とはかなり違いますね。
大川 まあ、確かに怪しいかもしれませんが、きちんと話を聞くと、彼の狙いもわかる。憲法9条の加憲について聞いたら、“憲法の番人”と言われた「枢密院」の話をパッと出してきて、加憲というやり方の是非も教えてくれましたし、法律の知識は相当なもの。ついでに選挙資金について尋ねたら、母親が資産運用の達人で選挙資金も出してくれる、と明るく答えてくれました。
選挙で600億円を使う意味はあったのか?
――衆院選全体の印象も聞かせてください。そもそも600億円も使って選挙をやる意味があったのかという意見もありますが、総裁はどうお考えですか。
大川 選挙に金がかかるのは日本の有権者の態度の問題でもあるような気がします。日本の場合、首相ですら駅まで来て演説してくれるでしょ。国民が“待ち”の姿勢だから、経費がかかっちゃうんですよ。選挙カーもうるさいって言われるけど、有権者が候補者に会いに来ないからですよね。自分から会いに行けばいいんです。それは演説に限りません。選挙事務所を訪ねれば、候補者の実態が良くわかります。人前でいくら綺麗ごとを言っていても、選挙事務所でスタッフらの態度が悪いケースもある。そこで候補者本人の本質が見えますよ。
――とにかく有権者は自分の目で見ることが大事だと。
大川 そうです。政治団体「支持政党なし」のことも、みんな詐欺的手法だって言いますけど、彼らの主張を聞いた上で批判している人がどれだけいるんだっていう。
――確かに主要候補に比べてインディーズ候補の主張はきちんと届いていないかもしれません。
大川 それではマズいと思うんですよね。新規参入がない分野は必ず衰退しますから。経済界では新規上場が珍しくないのに、政治の世界はほとんどない。最近だと橋下徹さんの維新くらいのものでしょ。せっかくいろんな人がチャレンジしているんだし、しがらみのなさを生かして魅力的な主張をする人もいるわけですから、こっちもきちんと耳を傾けないと。そのうえで、有権者も自分の意見をガンガン伝えていけばいいんですよ。
――自分の考えを候補者たちに伝えるということですか。
大川 そうですよ! 例えば今回、北朝鮮のミサイル問題が重要なトピックになっていましたよね。僕は緊急事態に備えて大川興業の地下稽古場をシェルターとして活用したいと思っているし、全国的に防空壕を復活させてほしいと考えています。日頃は震災対策の備蓄場所にすればいいわけですから。
この考えは演説に出向いた全政党に言いましたよ。日本のこころ・中野正志代表は「ええな! それこそ日本のこころだ!」って言ってくれましたね! 選挙もやったら終わりじゃなくて、ネットなどで常に国民から意見を集めて、政治家たちが議論を重ねるシステムになるといいですよね。
――それが今後の政治に期待したいことですか。
大川 はい。でも、実際は難しいかもしれない。今の政権はちょっと浮かれている気がしますから。ただ、今回は自民が大勝しましたけど、政権の支持率は高くないじゃないですか。有権者は極めて冷静だと思いますよ。自民もこのまま調子に乗っちゃうと、国民投票まで持っていけるか怪しいし、次の参院選も厳しいかもしれません。いつ何が起こるかわからないのが政治の世界。なんせ“史上最強のインディーズ候補”トランプが大統領になっちゃう時代なんですから。
(&編集部・下元陽、撮影・逢坂聡)
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大川 豊(おおかわ・ゆたか)
1962年東京生まれ。お笑い集団・大川興業総裁。明治大学在学中、学生宴会芸や素人参加型番組「ラブアタック」などに出演。“ドンと鳴った花火”で一躍注目される。就職試験153社を落ちたため、自ら大川興業株式会社を設立し、154社目にして自分で自分に内定を出す。『現在は政治・経済なども含め幅広いネタで、活字の世界とライブを中心にお笑いを展開している。
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