サードウェーブ系のデイティングアプリ「Dine(ダイン)」を運営する Mrk & Co(マーク・アンド・コー)は1日、結婚相談大手のパートナーエージェント(東証:6181)、ベンチャーユナイテッドに対する第三者割当増資と、日本政策金融公庫からの資本性ローンにより、総額1億5,000万円を調達したと発表した。これは Mrk & Co にとって、昨年3月に実施したサイバーエージェントベンチャーズと、iSGS インベストメントワークスからの約4,000万円の調達に続くものとなる。
また、同社はあわせて、「Dine」に日本国内での正式サービスのローンチを発表した。Dine のアプリは iTunes でダウンロードできる(Android 版は2018年初頭公開予定)。
Mrk & Co は2015年、ともに DeNA(東証:2432)でソーシャルゲーム開発に関わっていた上條景介氏(代表取締役)と森岡崇氏(取締役 CTO)により設立。2000年代からインターネットに慣れ親しんでいる人にとっては、上條氏はブログ「がんばれ、生協の白石さん」の作者としても記憶にあるかもしれない。
Image credit: Mrk & Co
コーヒーの話ではないが、上條氏によればデイティングアプリの世界にも「サードウェーブ」の波が訪れているそうだ。当初紹介された「第1世代:検索型」のサービスは、ユーザ数の多さを強みにしたものの、初めてのデートに達する確率はさほど大きなものではなかった。続いて現れた「第2世代:カジュアル型」に分類される、スマートフォン上の左右のスワイプでマッチング確率を上げる Tinder や Happn は、ユーザインターフェイス(UI)においては革新的なアプローチをとっているものの、ユーザは出会いよりもエンターテイメント的要素を目的に使っているケースが少なくないのだという。
そして、Dine は第1世代や第2世代のノウハウをベースにして、デートに至る可能性を格段に上げたことが最大の特徴だろう。Dine のアプリからは、ユーザに対してマッチしそうな相手が1日5人紹介される。ユーザが相手にアプローチする場合は、デートに行きたい場所を最大3つまで選択して最初のデートを提案する。デートの行き先は、Dine のアメリカ版では Yelp の API 経由でレストランを自由に選べるが、日本版では最適なユーザエクスペリエンス(UX)を提供する観点から、恵比寿および銀座それぞれにあるレストラン50軒(合計100軒)からのみ選べる仕様にチューニングされている。
Image credit: Mrk & Co
Tinder や Happn の場合で、出会ってもデートに至るケースは10%以下と言われている。多くはユーザの双方が承認をしてメッセージが開通すると、「Hi!」とか「How’s going?」という会話で始まり、ムダな会話が続いて、疲れてきて終わっているという感じ。
Dine では、メッセージが開通すると最初に日程調整の画面が現れるようになっている。アメリカでのこれまでのサービス実績では、ユーザ同士がマッチして会話が始まれば、デートに至るのは約40%。極めて高い数字と言える。(上條氏)
マッチングには、ユーザが選んだ相手の好みの顔、年齢、それに選んだデートの行き先などをアプリが学習し次第に精度が上がって行く。1ヶ月6,500円か、3ヶ月払の場合4,800円/月のサブスクリプションモデルで、男女公平の観点から男性ユーザにも女性ユーザにも共通の料金体系が適用され、男女ユーザのどちらかが料金を支払っていればデートのセッティングが可能。デイティングアプリの中ではやや強気の値付けではあるが、その背景にはデートのコミットと、マッチングのクオリティの高さがあるようだ。また、なんとなく洗練された雰囲気を醸し出す Dine の UI にも、上條氏らの「デイティングアプリを恥ずかしいものにしたくない」という思いが反映されている。
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Dine は、すでに北米のニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ボストン、フィラデルフィア、ワシントン DC、バンクーバーでローンチしている。日本では今回の東京に続き、ユーザの利用状況を見ながら、大阪・横浜・福岡など都市圏を中心にサービスを拡大させていきたい考え。ニューヨークやロサンゼルスでは、Dine 経由でマッチしたカップルがレストランに来店すると、最初のドリンクが無料になる「Dine Pass」というサービスを試験提供しており、O2O アプリとしての可能性も併せ持つこともうかがえる。
今回資金調達した企業のうち、パートナーエージェントとは戦略的提携を伴うようだが、Mrk & Co およびパートナーエージェントの両社は、現時点で具体的な提携内容については開示していない。Mrk & Co では、これまでの1年間でアメリカ、これからの1年間で日本での市場可能性を見極め、今後、アジアやヨーロッパにも展開を広げ、売上の約半数を日本国外、残りを日本国内で確保できるような体制を目指したいと上條氏は語った。
この分野では、この種のデートをコミットするアプリの参入がいくつか見られる。背景には、サイバーエージェントが立ち上げた複数のデーティングアプリ(通称:カップリングユニオン)が、軒並み好成績を上げていることがバーティカル全体の活性化に結びついていることがあるようだ。当初、今秋解禁されるかもしれないとされた、民放テレビ局での出会い系アプリの CM 放映開始は来年以降にずれ込みそうな様相だが、いずれにせよ、男女の出会いという人間の本能に帰する欲望が失われない限り、デイティングアプリの進化は続きそうだ。