なにかと理由を付けて遠くにいきたがるライターの玉置です。
日本国内の様々な場所に行きましたが、中でも10回以上も行っている大好きな場所があります。それは日本海に浮かぶ佐渡島(実際は浮いてませんよ)。
この佐渡島の良さについて語りだすと長くなるのですが、今回は「うまい寿司を食べたぞ!」という話だけ自慢をさせてください!
寿司ネタの8割が「佐渡前」のネタ
ということで本題です。今年の7月後半に感動したのが、佐渡島にある長三郎というお寿司屋さんでした。
▲この店に来たかったんです!
今までは佐渡に行っても寿司は回転寿司ばかりだったのですが(それでもレベルは高いですけど)、佐渡在住の知人である山本さんが長三郎の常連で、銀座だったら何万円コースだよっていう豪遊っぷりをしょっちゅうフェイスブックにアップしているのを、常々羨ましく思っていたのです。
▲こんな写真をしょっちゅうアップしているんですよ!
▲佐渡産マグロの赤身・中トロ・大トロ食べ比べだって!羨ましい!
これはもう山本さんに責任を取ってもらわねばなるまいと、念願だった長三郎へと連れてきていただいた次第です。
▲こちらが山本さん。変な写真しかなくてすみません
さてまず先に断っておきますが、この長三郎は高級な寿司店ではありません。
手ごろな価格で寿司や刺身定食などを出しつつ、ラーメンやカツ丼も出す庶民派のお店です。人気メニューはB級グルメのブリカツ丼。
山本さんに言わせると、たとえば大人はお寿司で子供はラーメンといった感じで、親子連れでも気軽に食事が楽しめるアットホームな店なんだとか。
▲これくらいなら私でも払えそうです。
▲寿司とラーメンのセットってすごいな。
▲丼物だってやってるよ。
この日はちょっと大人数で夕飯を食べに来たので、まずは二階の座敷席で上生ちらし寿司をいただきました。
地方の港町に行っても、意外と地元の魚が使われていなくてガッカリするケースも多いですが、ここのちらし寿司は違いました。
炙りのノドグロ(アカムツ)やトビウオ、佐渡沖で獲れる南蛮エビ(ホッコクアカエビ、いわゆるアマエビ)やズワイガニなど、江戸前ならぬ佐渡前の魚が揃っています!
▲サーモンもイクラもウニも乗っていない。でもそれがいい!
山本さんの話では、この店の親方が佐渡の魚にこだわっており、寿司ネタの8割は島内産を使っているのだとか。これは市場で直接購入できる入札権や、独自の仕入れルートを持っているからこそなのでしょう。
ちなみに佐渡は米どころでもあるため、シャリもうまい!
▲このノドグロ、やばくないですか?
そして山本さんが予約しておいてくれたノドグロ(アカムツ)のカブト焼きがすごかった。写真だとピンとこないかもしれませんが、こんなに大きな頭は見たことがありません。もちろん入荷状況次第ですが、運がよければこんなレアな逸品に出逢えることも!
▲大きさが伝わらなくてすみません!
これが本当にうまかったんです。もうネコでも食べるところがないっていうくらいまできれいにしゃぶりつくさせていただきました。
ちなみに写真左上に写っているのはノドグロの卵を焼いたもので、これも旨味が濃くて最高でした。
ファミレス的な要素もある長三郎ということで、子供たちは立派な海老フライなどを食べて、ご機嫌だったようです。
▲エビフライも立派!
そしてその後、私を含めて男3人だけが店に残って、一階のカウンター席に移動しました。掟破りの同じ店での二次会です。
山本さんによると、空いている時間のカウンター席こそが長三郎の醍醐味。こういった感じで寿司屋のカウンター席で一杯やるなんていう経験は、我が人生では今までほとんどなかったのですが、ここは親方と山本さんにドーンとお任せすれば大丈夫でしょう。
▲親方、お任せします!
「夏は佐渡の魚が一番揃わない時期なんだよ~」とぼやく親方ですが、それでも保冷ケースの中にはぎっしりとネタが詰まっていて頼もしい限りです。
さあさあさあ、まず最初にでてくるツマミはなんでしょうか!
▲なにがくるかな~?
最初の一品は、かにの弁当という小鉢でした。これはズワイガニの胴体にある身をほぐしたものだそうです。
エビやカニなどの甲殻類は鮮度が味に直結しますが、これは産地ならではの味で臭みゼロ。カニカマ大好きなバカ舌な私でもわかります。これはよいカニだ。
▲おかわりしそうになりました。
続いて出てきたのは、ピチピチと踊る立派なクルマエビです。佐渡に何度も来ていて恥ずかしながら知らなかったのですが、島内にある加茂湖(かもこ)という汽水湖で、天然のクルマエビが獲れるのだそうです。こういった食材との出逢いは嬉しいですね。
▲でっかいクルマエビ!
これはもちろん刺身でいただきます。もちろんブリブリのアマアマです。いやーすごい。
▲我が人生で最高のクルマエビに間違いないな。
そして頭は固い部分をカットした上で塩焼きにしていただきました。これもまた香ばしくてうまいんだ。
新鮮な魚介類が生でうまいのはもちろん、焼いてもやっぱり違いがでるんですよね。
▲味噌部分がうまいのよ。
そしてトビウオのお刺身です。さっき食べたちらし寿司にも入っていましたが、もうちょっと食べたいと思っていたところなので嬉しい味の復習です。
▲佐渡島のジュディ・オング、あるいは坂上二郎。飛びます、飛びます。
ほとんどの刺身は脂がのっていてこそですが、このトビウオという魚は例外で、脂っ気のない筋肉質の身の爽やかさを味わいます。脂がないからこそ分かる旨味を感じましょう。
▲さっぱりした魚好きには堪らないトビウオ。
続いて取り出したのは、先程食べた頭の身でしょうか。巨大なアカムツ(ノドグロ)の半身が出てきました。これをバーナーで皮部分を豪快に炙ります。これこれ、さっきのちらし寿司で文句なく一番うまかった、アカムツの炙りです。
▲三枚に下ろしてもこの大きさですよ。
これは我々に出すためというよりは、仕込みの様子をみせてくれたようですが、こんなのを見せられたらもう我慢できません。
▲うおー!たべたーい!
さすがにこれを全部というのは胃袋的にも財政的にも無理なので、2貫ほど握っていただきました。
▲熟成されて旨味が最大限に引き出されたタイミングですな。
いやー、うまい。シャリと結ばれて寿司という形になることで、さらに食べ物としての完成度がアップです。
悲しいのは口に入れるとすぐに溶けて無くなってしまうことでしょうか。この舌の記憶をバックアップして再現できるシステム、できないですかねー。
そして私の隣では、常連さんがタンメンをすすっています。いやー、すごい店だ。
▲また食べたいなー。
続いて出てきたのもすごかった。佐渡沖の定置網で上がったマグロの大トロです。佐渡では初夏から夏に掛けて、ホンマグロ(クロマグロ)が水揚げされるのです。
ちなみに親方の修行先は、かつて東京の万世橋あたりに構えていた老舗の寿司店だそうで、その頃に学んだネタを吟味する力はもちろん健在で、今もマグロにはかなりのこだわりがあるようです。
▲すごい大トロが出てきたぞ。
寿司でたべるにはちょっと脂が強すぎるかなという大トロは、紫蘇を敷いて手巻きでいただきました。値段は……怖くて聞けません。
▲こんな贅沢していいんですかね。
そして最後に玉子のにぎりで締めたのですが、ネタとシャリの比率がすごいことになっています。こんなに重そうにネタを背負ったシャリを見たのは人生で初めてです。
いやー、最後まで楽しませていただきました。
▲重そうなシャリがかわいい。
で、恐怖のお会計ですが、これが普通の居酒屋で飲み食いするのよりも、ちょっと高いくらいといった感じでした。ただ私がいう普通というのはホッピーや酎ハイが似合う店。それなりのちゃんとした居酒屋と比べると、同じくらいか、あるいは安いかもという感じです。都内の寿司屋で同じものを食べたら(なかなか食べられませんが)、何倍もするんじゃないでしょうか。胃袋以上に心の満足度がすごいのです。
「東京の高い寿司屋に行くくらいなら、佐渡まで来てここで食べた方が安いんじゃないかな?」と山本さんは笑っています。
おまかせ寿司コース(税込2,800円)もスゴすぎた
さてそんな長三郎の味が忘れられず、9月後半に仕事でまた佐渡にきたときに、フェリーに乗る前の最後の食事としてやってきました。今回も山本さんと一緒です。
▲また来ました!
お昼を過ぎてお客さんが帰ったタイミングだったので、我々6人でカウンターと親方を独占させていただきました。ここはランチのあとも通しで夜まで営業しているので、変な時間に食事となりがちな旅先ではとっても助かります。
▲またこのカウンターに座れる幸せたるや、ですよ。
今回我々が注文したのは(山本さん以外)、明朗会計のおまかせ寿司コースで税込2,800円。空いている時間だったこともあり、寿司を握りながらネタのプレゼンテーションをしていただきました。
まずはズワイガニの登場です。お値段が手ごろなベニズワイガニもいいですが、やっぱりズワイガニは迫力があります。
▲かっこいい!
そしてバイガイ(この店での呼び方)!貝好きにはたまらない抜群の瑞々しさです!
▲カニやエビ漁で一緒に獲れるこいつがうまいんだ。
アマエビはこっちだと南蛮エビと呼ぶのですが、お安い回転寿司などで食べるものとは、甘さと大きさが段違いです。
▲親しみのあるネタだからこそ、その違いに驚きます。
そしてゴロンと置かれたアワビ。佐渡の海藻をたっぷりと食べているからか、大きさと身の厚さがすごい!
▲ゴローンゴローン。
そんなお腹が鳴りやまないプレゼンテーションが終了し、まず出てきたのはノドグロの卵。これは前回食べて感動したのですが、もう二度と食べられないだろうなーと思っていたので、ちょっと涙がでそうになりました。旨味がしっかりとあり、ホロホロしつつシットリという他の魚卵にはない舌触りなのです。
▲一人一切れですがそれで十分。ノドグロの卵がまた食べられるなんて!
そして待望の握り寿司の登場です。
いやー、すごい。ずっと見ていたい。
でも早く食べろっていう話ですよね。
▲ネタがダイナミックながら気品があります。
いやー、どれから食べましょうかね。
こんなに楽しい選択肢、人生でもなかなかないですよ。
せっかくなので別角度からも眺めさせてください。
▲島外のネタはウニとマグロだけ。
さてさて、やっぱり佐渡といえばブリですかね。
この美しいブリからいっちゃいましょうか。
いやー、美人だ、このブリは。
▲ちょっと美しすぎないですか?
このシャリが隠れるネタの大きさ。
はー……。
▲冬のブリはさらにすごいのかー。
これでも親方と山本さんは、口をそろえて「佐渡のブリはこんなものじゃないよ」というんですよ。ご存知の通り、ブリの旬といえば冬の季節。
11月を過ぎると醤油をはじくほどに脂がたっぷりと乗り、最高の味となるそうです。またカニやタラなども旬を迎える冬こそが、佐渡で魚を味わうならベストシーズンなのだとか。
大きな南蛮エビは3本も乗っています。甘さとねっとり感がすごい!
▲佐渡に来たら絶対に食べてもらいたい!
こっちではスミイカと呼ばれるアオリイカも、独特の歯ごたえと甘味で楽しませてくれます。
▲イカもうまいよねー。
時期的に佐渡産ではないですが、マグロのトロもお見事でした。
▲見てわかる通りうまい!
寿司のネタでカニを食べてうまいと思ったことは正直ほとんどないのですが、殻から取り出したばかりのズワイガニ、これはさすがにうまかった。でも冬はもっとうまいのかー。
▲カニって産地で食べると本当にうまいよねー。
我々の人数が多かったので、サービスで今食べたズワイガニのカニ味噌も回ってきました。これが臭みがなくてうまいんですよ。このあと車の運転がなければ迷わず日本酒を頼んでいたところです。
▲はー、酒が飲みたい。
ウニ、ヒラメ、アワビも文句なし。羽根を開いた蝶のようなバイガイは、ネタが立派過ぎて寿司としてはバランスが悪いかもしれませんが、このド迫力は産地ならでは。
そしてカウンターに並んだ全員がフワフワと夢心地になっていたところで、トドメの一皿が登場です。
▲帰るのを一日遅らせて、もっとゆっくりしていこうかと思う味。
これ、なんだかわかりますか。
生きたアワビの肝ですよ。
ありがたや、ありがたや。一切れずつみんなでいただきます。
海藻の旨味を濃縮したような味で、驚いたことに生臭さは一切なし。これを食べた後、お茶を飲んで口の中を流してしまうのがもったいなく、しばらく黙ってその余韻を味わいました。
はー、これで2,800円ですよ。もちろんお任せのコースなので、ネタやサービスは時間帯や仕入れ状況によって変わりますが(常連の山本さんが一緒だったというのも正直あると思います)、文句なしの大満足でした。
そんな我々を横目に、山本さんは「僕はいつでも食べられるから」と、カツライスのご飯大盛りを食べていたのでした。
▲まさかのカツライス!
佐渡島はこのように四季折々のネタが楽しめる寿司好きにとっての夢の島であり、もはや佐渡島を寿司島(すしがしま)と呼んでもいいんじゃないでしょうか。
東京から長三郎へと行くには、まず新幹線で新潟駅まで移動し、そこから新潟港のフェリーターミナルへバスか徒歩で行きまして、船に乗って佐渡島の両津港へ渡り、バスで南線で新穂の停留所で降りましょう。佐渡島内としては比較的アクセスしやすい場所にあります。レンタカーを利用したり、カーフェリーで車ごと来島するのも便利です。もちろん寿司以外にも、おいしいもの、楽しい場所はたくさんありますよ。
この記事を書きながら、冬の佐渡でしか食べられない魚介類を食べたくてしょうがなくなっています。はーー、どうしよう。
紹介したお店
長三郎鮨
住所:新潟県佐渡市新穂81-4
TEL:0259-22-2125
プロフィール
玉置豊
趣味は食材の採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は古い家庭用製麺機を使った麺作りが趣味。