大阪府羽曳野市の府立懐風館(かいふうかん)高校3年の生徒が、約220万円の損害賠償を府に求める訴えを大阪地裁に起こしたことが話題になっていますね。地毛を黒く染めろという厳しい指導で不登校になったというのが理由です。
この生徒さんはお爺さんがアメリカ人なので地毛の色が薄かったのに、しつこく初めるようにいわれて、頭にアレルギーが出るまで染めたそうです。
元々の髪の毛の色とか肌の色を変えろって、あんたそりゃ無理だろという話で、他の国で例えば黒人に「お前、明日から白くしてこいよ」とか、金髪とか茶髪人だらけの国で「お前ら全員明日から黒い髪にしろ」とかいったら、相当頭おかしいんですが、日本のこのニュースは、通常運行通り「奇天烈な国ジャパンのすごいネタ」として全世界に配信されており、全世界を恐怖に陥れています。
ジャパンにいったら「お前今日から髪型はジョジョな。しかもピンクにしろよ!!」といわれるんじゃないかと思う人もいるんじゃないでしょうか。
そういうわけで、この学校のすごい指導に批判が集まっているわけですが、その一方で、この学校の先生方が、生まれ持っての髪の毛の人にまで「染めろ!!」という校則原理主義的な指導の理由をちょっと考えてみましょう。
ここは偏差値がだいたい45ぐらいで、決して超進学校であるとはいえない高校です。卒業後就職する生徒や、専門学校に進学する生徒も少なくありません。
特殊技能がない高卒や専門卒の人の多くはサービス業とか製造業で働くことになります。公務員になる人もいますよね。
そういう仕事は人や工場のラインを相手にしますから、時間を守ること、お客様を怒らせないことが重要です。円滑にオペレーションをするために、出勤時間等様々な規則が厳しく、茶髪を禁止していることが多いです。脳科学者なら頭が鳥の巣みたいだったり、入れ墨でも許されるんですけどね。
公務員の場合は、地元の人の目に触れる仕事をすることも多いので、ある程度きちんとした格好ではないと仕事するのが難しいです。相手にするのは不特定多数の人ですし、その中には保守的な人や高齢者もいるのですから仕方がないことですね。 警察官や自衛官だって刺青や茶髪はアウトですから。腕から弁天様見えてる銀行員とか保険屋に金預けたいと思います?
横浜市交通局では乗務員の茶髪を問題点にしていますし、大阪市清掃局の現業職員の茶髪は市民に批判されています。
サービス業以外の仕事でも服装規定というのもあって、毛染めや派手な服装を 禁止しているところもありますよね。規制系産業だって、内規でビジネスカジュアルの規定がありますよね。公式なルールはないけども、働く人としてあまりにも 派手な格好は芳しくないっていう職場も多いです。パチンコ屋やラブホだって派手な格好の人はだめですよ。
例えば皆さんの職場で金髪の人とか髪の毛が真っ赤の人っていないんじゃないですか。 派手な格好が大丈夫な日本の職場というのも限られていて、私が知っている限りだと、例えばWebメディア業界の一部とか、 ゲーム会社のごく一部、 ベンチャーのごく一部ですね。
私がかつて勤めていたあるベンチャーの会社は金髪の人もいましたし、毛染めの事をあれこれいう人はいませんでしたが、それはあくまで実績を出している人に限ってです。 仕事もちゃんと出来ないのにチャラチャラした格好の人はやっぱり色々いわれるんですよ。
これ英語圏だって同じです。金融やエネルギー、大学なんかは日本以上にドレスコード厳しいですよ。黒人に肌を白く塗ってこいとか、金髪の人に髪を黒く染めろとはいわないけど。
生徒の毛染めはここまで激しく指導する学校というのは、多分生徒の就職を気にしているのでしょうね。
生徒は大抵の場合地元の会社に就職しますから、普段から生徒がツーブロックだったり、茶髪だったら、制服がだらしないと、地元の住民から通報されちゃうんですよね。学校に。
それで、あんな学校の生徒は採用しないとかいわれてしまう。一般民なんてそんなもんですよ。見た目と中身は関係ないなんていってるのはごく一部の人ですから、
子供達が卒業した後にきちんと働けるように、責任感ある学校だと集合時間を厳しく守らせる訓練をしたり、大人としてふさわしい服装をする指導をします。外からみると学校側は頭がおかしいようにみえるかもしれないですけど、現場は必死なんですよ。
私が何でこんなことを知っているかというと、身内の中には底辺校に通っていた人がいるからです。
底辺校は授業中に立ち歩く生徒がいたり、先生に危害を加えようとするような生徒もいる。服装なんかめちゃくちゃで、 制服に真っ白な10センチのハイヒールを組み合わせて登校してきたり、ドレッドヘアの頭で机の上に足をどんどん載せて授業を受けていたりするんです。ヘッドホンつけたまんま。しかも授業参観の時です。髪の毛は茶髪どころじゃないですよ。もう金髪で、どこの国の人だよってレベルですから。
そういう底辺校の親というのは子供の生活態度にも就職も、もちろん学業にも興味なんてありませんから、何の注意もしません。 親子面談なんてすっぽかしますし、そもそも学校にすら来ない。酒のんでて寝てるから。
周囲がどう思うか、就職にはそんな格好ではどういう影響があるか、そんなことは本人も親も考えてないんです。
諦めきっている学校だと先生達は注意もしません。注意なんかしたら先生が襲われるからです。責任感があるごく少数の先生方や学校は、そういう生徒を何とか真っ当な社会人にしようと努力します。なんとか授業を成り立たせようと厳しくやるんです。でも人権だ何だといわれて、それができないこともあるし、折れちゃうこともある。先生になるような人って真面目だから。
こういう傾向は実は日本だけじゃないんです。
例えばイギリスの場合、服装も何も自由なんじゃないかという印象を持っている方がいるかもしれませんが、最近は公立高校で服装規定を厳しくすることが歓迎されています。これはアメリカでも同じです。厳しくすることで秩序や倫理を保ち、生徒に生活習慣を身につけさせ、卒業後働けるような人にするためです。
なぜかというと、底辺校って日本のレベルでは理解できないほど荒れてるから。学校内での盗みなんか当たり前だし、先生は刺されるから机にパニックボタンがあります。すぐに警察を呼べるようにね。授業中に首締められるんです。生徒に。ムショ帰りですよ。当然。私の元同僚が研修教員やってる時に本当にそんな状況。不動産価格高い学区の公立はこんなことないですけどね。だって金持ちしか住んでないから。
こんな状態だから、底辺校はまずは制服とか時間厳守とか髪型から統率しないと秩序が保てないんです。
成績上位校の場合は校則を厳しくする必要はありませんよ。生徒も親も世間の目というものが分かっていますし、自分の行ったことの結果というのを理解しているから。
だから京大は卒業式で好き放題な格好しているし、研究室に入る学生面談する大学の研究者の先生は「俺は髪染めてるかどうかなんて気にしないよ」っていうんです。だって、彼らはジャングル用のナタで襲ってこないでしょ。
ハーフの生徒や地毛の色が薄い子供にまで毛染めを強制することは人権侵害ですし、単なる髪の毛の色を理由にイジメや虐待をすることは許されません。
しかし、厳しい校則が必要な実態も考慮した方が良い気がするのですよね。
厳しい校則は人権侵害であるといっている人達は、おそらく中流以上の多いのだと思うんですよ。金があって、お上品で、エコで、折りたたみ自転車持ってて、タワマンに住んでて、同級生は投資銀行とか医者とか商社とかテレビ局とか、そういうゲットーに住んでて、そういう人達だらけの学校出身。子供はお受験。
そんなことないと否定するかもしれないけど、身内にも知り合いにも深夜に弁当の中身を詰めたり、イラン人に混じって産廃の仕分けする人間いないでしょ。
俺の学校は校則なんかなかった、と階層自慢のマウンティング合戦は忙しいみたいだけど、自分は非正規雇用で時給1500円で契約更新毎月じゃないし。
教育というのは生徒の創造性を育む場でもありますが、定時に出勤できない、服装規定が理解できない人達を訓練して、食べていけるようにする場でもあり、魚をとる方法を教えることだって必要なんですよ。
茶髪のごみ収集人とか店員見たら本社に電凸する人間が多い日本じゃそれは仕方のないことなんです。