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同志社大学生命医科学部の池川雅哉教授らのグループは10月17日、アルツハイマー病(AD)脳に蓄積するアミロイドベータ(Aβ)の網羅的解析を、イメージングマススペクトロメトリー(IMS: Imaging Mass Spectrometry)法を用いて、可視化することに成功したと発表した。
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●アルツハイマー病とは
アルツハイマー病は、不可逆的な進行性の脳疾患で、記憶や思考能力がゆっくりと障害される病気である。この疾患は、1906年に、アロイス・アルツハイマー博士が発見。博士は患者の脳を調べ、多数の異常な凝集体(老人斑)と、線維のもつれ(神経原線維変化)を発見した。
脳内の老人斑(Aβ)と神経原線維変化(タウ)の2つのタンパク質は、アルツハイマー病の主な特徴だという。3つ目の特徴は、脳内の神経細胞(ニューロン)間の連結の消失である。この3つの特徴から仮説を立てて、アルツハイマー病発生のメカニズムの研究や新薬が研究されているようだ。
治療によりアルツハイマー病の症状の悪化を抑えられる場合もあるが、この深刻な疾患に対する治療法はないのが現状である。
●アルツハイマー病脳内分布の可視化
質量分析法とIMS法を応用し、Aβ群を含む脳タンパク質の脳内分布を一挙に可視化したという。ブルカー・ダルトニクス社との共同研究開発により、初めて人間の脳を対象としたIMS法による脳病理研究が可能となり、人間の脳におけるAβの産生から排出に関わる脳内での挙動をとらえた。本成果は、正常脳からアルツハイマー病脳へと移行する脳病理の謎を解く鍵を得たものだという。
アルツハイマー病脳内分布の可視化によるAβ発生メカニズムの解明は、新薬の研究にとっても大いなる一助となるであろう。不可逆的な進行性の脳疾患AD新薬への期待は大きい。高齢化社会が抱える課題の一つを緩和させることへの期待だ。なお、新薬はAβをターゲットとしたものが主流のようだ。
●Aβをターゲットとしたアルツハイマー病新薬
エーザイは23日、「米バイオジェンとのアルツハイマー病治療薬開発に関する提携を拡大する」と発表した。アデュカヌマブは、Aβをターゲットとした新薬であり、世界で最も開発が進んでいるアルツハイマー病の次世代治療薬候補だという。
他方、「米製薬大手のイーライリリーが、アルツハイマー病治療薬の有力候補とされてきた「ソラネズマブ」の承認申請を見送る」と発表した。これもAβをターゲットとしたものではあるが、詳細なアプローチは異なるようだ。
人間の脳におけるAβの産生から排出に関わる脳内での挙動の可視化は、これら新薬の研究開発にも威力を発揮するのであろう。今後の研究事例に期待したい。(小池豊)
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