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1700タブの起動がわずか15秒、ベンチマークで2倍の高速化を実現。「Firefox Quantum」最初のバージョンが11月14日リリースへ、Mozillaが発表

2017年11月1日

Mozillaは高速化プロジェクト「Quantum」の成果を組み込んだ「Firefox Quantum」を11月に公開する。Firefoxは今後1年にわたってさらに高速化されていき、その成果はAndroid版にも組み込まれる見通しである。


Mozillaが総力を挙げてFirefoxの高速化を実現しようとしていると言って過言ではない「Quantumプロジェクト」の、最初の成果が組み込まれた「Firefox Quantum」が、11月14日に公開されます。

これに先立ち、Mozilla Corporationのコアブラウザー担当プロダクト管理ディレクター ジェフ・グリフィス氏と、コアブラウザー担当 シニアプロダクトマネージャ シンディ・シャン氏が来日し、記者向けの説明会を行いました。

Mozilla Corporation コアブラウザー担当プロダクト管理ディレクター ジェフ・グリフィス氏 Mozilla Corporation コアブラウザー担当プロダクト管理ディレクター ジェフ・グリフィス氏

MozillaはQuantumなどによるFirefoxの改善を通じて、2020年までにWebブラウザにおける20%のシェア獲得を目指しているとのことです。

複数のサブプロジェクトからなる「Quantum」プロジェクト

Quantumプロジェクトは昨年からMozillaが取り組んでいる、Firefoxを高速化するプロジェクトの総称です。

サブプロジェクトとして、CSS関連の「Quantum CSS」(別名「Stylo」)、レンダリングエンジン関連の「Quantum Render」、GPU関連の「Quantum Compositor」、DOM関連の「Quantum DOM」、ユーザーインターフェイスなど上記でカバーされない領域を対象とする「Quantum Flow」などがあります。

さらにQuantumプロジェクトにおいてCSSエンジンやレンダリングエンジンなどを記述しているプログラミング言語である「Rust」もMozillaが中心になって開発したものです。

Rustによって、並列処理に強く、クラッシュしにくく安全で高速なプログラムの記述が容易になっており、これがQuantumプロジェクトを推進するうえで重要な位置を占めています。

また、ジェフ・グリフィス氏の説明によるとQuantum FlowにはFirefoxのJavaScriptエンジンであるSpiderMonkeyの高速化に関連する改善も数多く含まれているため、QuantumプロジェクトはWebページの描画を高速にするだけでなく、JavaScriptの実行速度の向上にも貢献するとのことです。

Quantumプロジェクトの進行によりFirefoxはさらに高速に

現在のFirefoxである「Firefox 56」の次のバージョンである「Firefox 57」から、このQuantumの成果が組み込まれることになります。

Quantumはあくまでもプロジェクト名ですが、MozillaはFirefox 57からQuantumが組み込まれることを強調するために、このバージョンを「Firefox Quantum」と呼んでいます。

Firefoxは現在、6週間から8週間ごとにバージョンアップしており、MozillaはこのQuantumプロジェクトをFirefox 61もしくは62まで継続して行っていく計画です。当然、その進行に合わせてFirefoxの高速化は今後もさらに進むとされています。

そのため「Firefox Quantum」は特定のバージョンのFirefoxを指すのではなく、「Firefox Quantum 57」から「Firefox Quantum 61」もしくは「62」まで、しばらくのあいだ続くことになります。

ベンチマークで2倍高速、使用メモリも減少

このQuantumプロジェクトの成果によるFirefoxの高速化の度合いを、Mozillaはいくつかの資料で示しています。

その1つは、ベンチマーク「Speedmeter 2.0」で、Firefox 52と比べて2倍以上高速になったという結果をたたき出したことです。

Firefox Quantumはベンチマーク「Speedmeter 2.0」で、Firefox 52と比べて2倍以上高速に

使用メモリはMicrosoft EdgeやChromeと比較して少ないとのことです。

Firefox Quantumの使用メモリを示したグラフ WindowsのFirefoxの2つのグラフは、32ビット版と64ビット版。MacOSとLinuxは64ビット版のみ

Mozilla社内の実験では、1691タブをFirefox起動時に開く起動時間が、これまで8分近くかかっていたものが、15秒に短縮されたとも説明されています。

こうした高速化は、マルチコアに対応した分散処理の実現、フォアグランドになっているタブの優先処理などによるもので、またGPU処理のプロセスを分離したことで安定度の向上なども実現しています。

また、同社はFirefox Quantumのベータ版とChromeとのスピード比較動画も作成。Chromeに引けを取らないスピードをアピールしています。


Firefox Quantumでは高速化のほか、ユーザーインターフェイスの改善なども行われています。

Android版FirefoxにもQuantum対応へ

現在のところQuantumプロジェクトはデスクトップ版Firefoxのみが対象ですが、Mozillaのジェフ・グリフィス氏はモバイル版Firefoxへの適用も検討していると説明します。

Android版でもQuantumの効果が見込めるのか、Mozilla社内で評価したところ、効果があることが分かったとのこと。そこで次の次のバージョン、つまりFirefox 58のAndroid版では、Rust対応のレンダリングエンジンやCSSエンジンなどの投入に向けて評価を続けていることを明かしました。

Firefox Quantumはすでにベータ版が公開されており、すぐに試すことができます。

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カテゴリ Web技術 / JavaScript
タグ  Firefox , Webブラウザ


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