日本から学ぶべき教訓:完全雇用、賃金上昇を意味しない

  • 日銀、消費者物価上昇率の見通しを再び引き下げ
  • 雇用が数十年ぶりの売り手市場でも賃金上昇には不十分

金融政策の実験場と化している日本では、雇用が数十年ぶりの売り手市場となっても急速な賃金上昇にはつながらないことが明らかになりつつある。

  世界の約75%で景気改善が進行している。企業は利益を膨らませているものの、賃金上昇は見られないままだ。この両者を結びつけようと奮闘する各国・地域の中央銀行や政府にとって、日本の実験成果は不吉な前触れと言える。

  日銀は31日、大規模な金融緩和策の据え置きを決定。同時に発表した展望リポートでインフレ予想を引き下げた。企業と家計の間に物価は上がらないという姿勢が深く根付いていることなどを理由に挙げた。失業率が3%を下回っていても、状況に変化はない。

  日本海に面する福井県は、日本と世界の賃金の謎を示す縮図だ。厚生労働省が発表した9月の有効求人倍率で福井県は1.98倍と東京都に次いで都道府県で2番目に高かったが、賃金は今年に入り下落が続いている。

  東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは、「労働市場は非常にタイトな状況だが、賃金は上がらない」と述べ、「女性や高齢者など、いま労働人口に入っていない人々がまだ多数控えており、そうした人々が労働市場に入ってくると安い賃金での雇用が増える。賃金の押し下げ圧力になる」と説明した。

  失業率と物価上昇率との間には関係があるとされ、この相関関係を示す指標にフィリップス曲線がある。だが、かつてほどフィリップス曲線は参考にならないとの議論が強まっている。

  日銀の黒田東彦総裁は31日、金融政策決定会合後の記者会見で、このテーマは日本だけでなく他国でも活発に議論されていると指摘。企業が支出を増やし始めるには企業景況感のいっそうの改善が必要だと主張した。

原題:Lesson From Japan: Full Employment Doesn’t Yet Mean Higher Wages(抜粋)

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【米国株・国債・商品】S&P500上昇、小型株に買い-国債下落

更新日時
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Photographer: Michael Nagle/Bloomberg
  • 10月はS&P500種が2.2%高、ダウは約1000ドル上昇
  • 米国債は下落、FOMC声明を翌日に控え動意薄

31日の米株式市場は小型株主導で反発。減税実現の可能性や次期連邦準備制度理事会(FRB)議長人事の影響を見極める展開だった。S&P500種株価指数は10月、月間ベースの上昇率が2月以来最大となった。一方、米国債は小幅安ながら、長期債は比較的よく持ちこたえた。

  • 米国株は上昇、小型株高い-S&P500は月間の伸びが2月以来最大
  • 米国債は下落、イールドカーブがフラット化
  • NY原油は続伸、OPEC減産継続観測-10月として2011年来の大幅高
  • NY金は反落、ドル上昇で-月間では2カ月連続下落

  堅調な経済指標、減税実現期待の高まり、好調な企業決算などを支えに、10月はS&P500種が2%余り上昇し、ダウ工業株30種平均も1000ドル近く上昇。米国債は朝方の経済指標にあまり反応せず、その後も手掛かり材料が乏しい中で長期債が比較的よく持ちこたえ、5年債と30年債のイールドカーブはフラット化した。

  S&P500種は前日比0.1%高の2575.26。ダウ平均は28.50ドル(0.1%)上げて23377.24ドル、ナスダック総合指数は0.4%上昇。ニューヨーク午後5時現在、米10年債利回りは1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して2.38%。

  ニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が続伸。10月として6年ぶりの大幅高となった。世界的な供給過剰が解消しつつある兆しや、石油輸出国機構(OPEC)加盟国・非加盟国が減産を継続するとの観測が背景。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は前日比23セント(0.4%)高の1バレル=54.38ドルで終了。月間ベースでは5.2%上昇。ロンドンICEの北海ブレント12月限は47セント上げて61.37ドルと、15年7月以来の高値水準。

  ニューヨーク金先物相場は反落。ドルの上昇が手掛かり。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は前日比0.6%安の1オンス=1270.50ドルで終了。月間ベースでは2カ月連続の下落。

  この日は週末にかけての手掛かり材料が意識される中、前日の動きを消す相場展開だった。トランプ大統領による次期FRB議長の人選や連邦公開市場委員会(FOMC)声明、税制改革法案の詳細などが、2、3日以内にに明らかになる。またロシア疑惑の捜査で3人が起訴されたこともあり、様子見気分が強かった。

  S&P500種の業種別11指数では生活必需品と情報技術が上昇。一方、資本財・サービスは下げた。

  朝方発表された10月のシカゴ製造業景況指数と民間調査機関コンファレンスボードの米消費者信頼感指数が好調だったにもかかわらず、月末を迎えた米国債相場は方向感のない展開となり、午後もレンジ取引に終始した。

原題:U.S. Stocks Cap Monthly Gain as Dollar Strengthens: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Mixed, Flatter as Long End Underpinned Into Month-End(抜粋)
USTs Rangebound, Flatter Into Month-End; Futures Volumes Muted(抜粋)
Oil Delivers Best October Since 2011 as OPEC Strategy Pays Off(抜粋)
PRECIOUS: Gold Futures Post Second Monthly Drop as Dollar Rises(抜粋)

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