日本銀行は31日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を8対1の賛成多数で決定した。片岡剛士審議委員が前回に続き反対。「15年物国債金利が0.2%未満で推移するよう長期国債の買い入れを行うことが適当である」ことを理由として挙げた。
誘導目標である長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」といずれも据え置いた。長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針にも変更はなかった。
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片岡委員は「当面の金融政策運営」について、オーバーシュート型コミットメントを強化する観点から、国内要因により物価目標の達成時期が後ずれする場合には「追加緩和手段を講じることが適当」であり、これを声明文に記述することが必要として反対した。
ブルームバーグがエコノミスト43人を対象に23-24日に実施した調査では、全員が今回の会合での金融政策の現状維持を予想。金融緩和に積極的なリフレ派として知られる片岡氏の対応が注目されていた。黒田東彦総裁は就任直後の13年4月、2%の物価安定の目標を2年をめどに達成すると宣言し、4年半が経過したが物価は低迷している。
同時に発表した3カ月に一度の経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、17年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通し(政策委員の中央値)を7月時点の1.1%上昇から0.8%上昇に下方修正した。18年度も1.5%上昇から1.4%上昇に下方修正、19年度は消費増税の影響を除き1.8%上昇に据え置いた。「19年度ごろ」としている2%達成時期は維持した。
野村証券の桑原真樹シニアエコノミストは発表後の電話取材で、物価見通しの下方修正は「想定の範囲内」と指摘。日銀は昨年9月の総括的な検証により長期戦に移行しており、黒田総裁の任期が終わるまで「よほどのリスクがない限りは現状維持」が続くとみている。
会合結果の発表前は1ドル=113円10銭前後で取引されていたドル円相場は発表後、113円20銭前後で推移している。黒田総裁は午後3時半に定例記者会見を行う。決定会合の「主な意見」は11月9日、「議事要旨」は12月26日に公表する。