【ゴルフ】国内男女ツアーとも2週連続最終日中止で優勝者決定という史上初の珍事2017年10月30日 紙面から
男子プロゴルフツアーのマイナビABC(兵庫県加東市・ABCGC、優勝賞金3000万円)と女子の樋口久子・三菱電機レディス(埼玉県飯能市・武蔵丘GC、同1440万円)は29日、それぞれ最終ラウンドを行う予定だったが、台風22号の影響による大雨のため、中止になった。男子はプロ10年目の小鯛竜也(27)、女子はツアールーキーの永井花奈(20)が、いずれも念願の初優勝を決めた。ともに規定により賞金ランキング加算額は75%に減額される。男女とも2週続けて最終日が中止になったのは史上初めて。 ◇男子 マイナビABC「率直に言って、ほっとしました」と小鯛。首位で迎えた前夜はなかなか寝付けず、何度もスマホで天気予報を確認したという。午前5時ごろに起きてカーテンを開けると、雨が降っておらず、「やるんや」と、一度はスイッチを入れたが、コースでパター練習をしているときに雨が降り出し、気持ちが切れた。小鯛ら最終組の1組前の3人が1番の第1打を打ち終わった直後に中断。気持ちを整理しようとロッカーの一番奥にこもっていたところ、30分後に中止が決まった。 高校時代にプロ入りし、大型選手と期待されたが、下部ツアーにすらなかなか出られず、気持ちが腐った時期もあった。しかし、3年前に長女の仁望(にの)ちゃんが誕生。顔を見ていると、「自分は何をしているんだろう」と思った。その頃から、縁あって石川遼(26)=カシオ=が12月に行っている沖縄合宿に参加。2~3週間、血豆ができるまで毎日1000球近く打つ練習に耐えた。 成績が悪くても何も言わなかった年上の妻ゆいさん(34)を神戸市の自宅から呼び、ついに晴れ姿を見せられた。副賞の乗用車はその妻にプレゼントすることになりそう。今季残り5戦の出場も決めた。「3日間になってラッキーだったかもしれないが、すぐに4日間戦って、2勝目を挙げたい」。地元で優勝という小鯛ならぬ“大物鯛”を釣り上げたイケメンは、もっと大きな獲物を狙っている。 (大西洋和) <小鯛竜也(こだい・たつや)> 1990(平成2)年2月1日生まれ、大阪府阪南市出身の27歳。178センチ、66キロ。小学時代は高校の体育教師だった父・剛文さんの指導で、自宅ガレージで練習。中学3年時の2004年に日本ジュニア2位。クラーク記念国際高時代の2007年にプロ転向、11年にツアーデビュー。16年に下部ツアーで初優勝、賞金ランク4位になり、今季レギュラーツアー前半戦の出場権を獲得。7月のダンロップ・スリクソン福島オープン6位などの活躍で今大会の出場権を得た。
◆女子 三菱電機レディス永井の“秘密基地”は東京都内の自宅の車庫。小学4年生のころ、父・利明さん(50)が一人娘のゴルフ上達のためにネットを張り、作ってくれた練習設備だ。小型車が一台入るだけの狭いスペースは、ショートアイアンでハーフスイングの練習をするのが精いっぱいだった。 前日の最終18番パー5でのバーディーが、念願のプロ初優勝を決める結果になった。事実上のウイニングショットは「ピンまで残り78ヤードを52度のウェッジで」1・2メートルにつけた第3打。これこそ、永井が10年間、車庫で磨きをかけた“ガレージ・ショット”だった。 「2週間予選落ちが続いて、先週は土曜もコースに居残って打ち込んで、ショットはだいぶよくなっていた。自分はやっぱりショットメーカーなんだから、それでスコアをつくらなきゃと思って」。自宅に戻ってからは、もちろん車庫でウェッジの練習。腰から腰の高さまでのスイングでインパクトを研ぎ澄ました。雨続きでぬかるんだ芝の上からのコントロールショットは永井にとっては腕の見せ所だった。 「イメージしていた優勝とは違う形になりましたけど、本当に今年優勝したかったので本当にうれしい。真剣に取り組んでるのにうまくいかなくてつらかった時期もあったけど、そんな自分に負けてたまるかとやってきました。まだまだ優勝を重ねていきたい」。6月に20歳の誕生日を終え、両親と3人でワインを飲むのが楽しみになったと笑う。この日は人生で一番の美酒に酔いしれたことだろう。 (月橋文美) <永井花奈(ながい・かな)> 1997(平成9)年6月16日生まれ、東京都品川区出身の20歳。155センチ、55キロ。両親の影響で6歳からクラブを握り、同区立伊東学園中3年時の2012年にロレックスジュニア、日刊アマ全日本大会で優勝。日出高(東京)進学後の13、14年に関東女子アマを連覇、14年の日本女子オープンではローアマ(3位)。16年1月にプロ転向宣言し、米下部シメトラツアー3戦、米ツアー1戦、国内LPGAツアー4戦に出場後、プロテストトップ合格。QTランク14位で今季フル参戦。
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