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マニュアルだらけの日本人。フランス人女性が不思議に思うこと

<特集:秋の読書週間> 実は身近な物語「日本通の外国人」編

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5 hours ago by Shimizu Toshihiro Reporter

3 Lines Summary

  • ・教育無償化には懐疑的
  • ・プレミアムフライデーは「みんな平等」の考え方が失敗
  • ・マニュアルに頼らないための教育が大事

今週は秋の読書週間。ホウドウキョクでは「少し遠い世界のようでいて、実は身近に存在していること」について書かれた本を紹介していく。

『実は身近な物語』と題した特集・第一回のテーマは「日本通の外国人」。

外国人観光客の増加がニュースになることが多いが、日本で実際に暮らす外国人も増えている。そんな「実は身近な日本通の外国人」は、日本社会についてどう考えているのだろうか。

そこで、『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』の著書を持つフランスAFP通信の西村・プペ・カリン特派員に話を聞いた。

日本人のコミュニケーション能力が下がった

――今回の衆院選は教育無償化などが議論されました。どう感じていますか?

教育無償化が完全に良いのか、ちょっと疑問があります。フランスの場合、大学は無料です。誰でも行けるシステムですが、大学の設備は日本に比べて本当に使えない。結局、大学はお金があって設備を更新できますが、フランスでは無料のために何にも良い設備がない。

完全に無料にするよりも、有料にして収入に応じて払えばいいと思います。収入が高い人は100%払って、お金のない家族には、国が足りない部分を払ってくれればいい。完全に無償化は、いいかどうかはわからないんですね。

日本の社会は抜本的に変えなければいけないところが多いです。海外を見ると色んなアイデアが出るので、それを参考にしないといけないですが、海外の例を単純に真似することは不可能です。日本独自の制度が必要です。政治とか経済とかいろんな面で、海外の真似するのは本当にいいことにならない。


 ――日本はかなり特殊ですか?
 
そうそう。文化もありますし、長い歴史もありますし、それを無視することはできません。だから、単純に真似することはできない。

 
――「海外の働き方を見習おう」という感じで、プレミアムフライデーが生まれたんですかね?

あれはねぇ、ダメです。ははは。プレミアムフライデーはダメです。

 
――どこがダメですか?
 
すべての企業が、毎月最後の金曜日に全員を休ませることなんてできないんですよ。なんでこういう制度になったかというと、日本は「平等」だと思っているんです。みんな同じ時間、同時に休むことができたら、みんな平等。そう思っているんですが、そんなことは不可能です。

だから結局、プレミアムフライデーは全然うまくいかないんです。もっとフレキシブルな考え方で、一人ずつ違う日でいいならもっとうまくいったんじゃないかなと思います。月1回、午後3時から休む日をいつにするか、社員が自分で上司や同僚に話して決めればいい。

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みんなで月末金曜は…

――みんなで一緒に、という日本的な発想なんですね。
 
そう。チームワークの考え方がフランスとちょっと違うと思います。日本ではチームワークはみんな同時に仕事することだと思っているんですが、フランス人はむしろ誰かが休む時にチームの一人が休んでいる人の部分を負担する。同時に仕事をするのではなくて、順番に仕事するのもチームワークです。
 

――「上司が帰らないから帰らない」なんてことはありえないわけですね。
 
ありえない。私は上司に「帰っていいですか」って言わないです。「今から帰ります」と言います。質問じゃないんです。決断したことを言うだけ。そこもコミュニケーションが大事だと思います。

 
――日本人のコミュニケーションは問題ですか?

そうですね。20~30年前と比べたらコミュニケーションの能力が下がったと思います。電車で偶然に誰かと私が会話するとしたら、ほとんどおばあちゃんです。彼女たちは昔のやり方でそのままやっている。誰かに話したければ話すんですね。ただ、若者はあまりそんなことはしないんです。
 
一つの問題はスマホだと思いますが、後は教育の環境も変わったと思います。簡単に会話をする機会が少なくなってきたんじゃないかなと。

 先生は、カリキュラム全部を年度末までに終わらせないといけない。そこには会話の時間もないんです。それはフランスの学校とも違います。

フランスの学校では、必要なら自由議論とかするのが大事だと思っています。日本ではそれが少ないから、コミュニケーションの能力がたぶん下がったと思います。

自分で勝手にやるのはダメ?

――西村さんの著書の中で、日本のテストに驚いたという話が出てきますね。

2016年の夏、朝の電車の中でのこと。高校生の女の子が英語の教科書を広げていた。わたしの目に飛び込んできたのは、つぎのような問題だった。

In my country, (   )(   )(   )(   )(   )(   ) Swiss where the (   )(   )(   )(   ).
<1 mountains  2 volcanoes  3 high  4 are  5 than  6 more 7 there  8 also  9 in>

この問いに対する彼女の解答は、つぎのとおり。

In my country, ( 7 )( 4 )( 6 )( 2 )( 5 )( 9 ) Swiss where the ( 1 )( 4 )( 8 )( 3 ).

何かしら、英単語と数字がごちゃまぜになった、この不可解な文章は?
『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』より

テストのやり方は本来、自分で考えさせることが大事なのに、「他人が事前に考えた答え」の中でやることがメインのパターンになっています。こんな問題ならこんな答えって。

すると、社会人になっても同じようになっちゃうんですね。何か問題が起きたらマニュアルをあけて、こんな問題ならこんな答えって。もし、マニュアルにない問題が起きたら、全く分からなくなるんですよ。福島第一原発の事故対応はまさにひとつの例です。

事前にすべての問題を予想するのは不可能です。だから、大事なのは自分でどういう風に考えればいいかを勉強することなんです。残念ながらいまの教育、企業の中のルールは、「自分で勝手にやるのはダメ」と言われている。

必ず上司に報告して、上司の許可をもらってやって、あるいはマニュアルで調べてからやって…。それはヒューマンファクターを避けるための方法ですが、事前に考えなかった問題が起きたらどうすればいいかわからないんです。


――日本では「男性にモテるための何か条」といった本や記事は人気ですね。
 
ハウツーみたいな本が日本はたくさんあります。フランスでは、「上司との関係をどうしたら改善できるか」とか、そこまでの本はないですね。
 

――日本人はどこか不安なんですかね?

そう、不安ですね。

 
――それに、日本人は自分をどこかに分類したい気持ちも強いのでしょうか。

あとは、日本には社会のルールが決まったパターンがたくさんある。こんなシチュエーションの中で、こうしなければいけないと決まっている。そうしないといけない。

たとえば、就職活動の時に面接を受けたらどの態度がいいかとか、ものすごく細かいところまで書いてある。フランスでは自分の性格、考え方を見せるのが大事です。何が自分の特徴で、他人との特徴の違いを見せないといけない。

日本では逆です。違いを見せないで完璧な姿、社会が考えた完璧な姿を見せないといけない。

 
――就職活動では服や靴、髪型まで同じことが多いです。
 
そうそう。フランスではそれは考えられないんです。もちろん汚い服で行くのはダメなんですが、どんな人なのか見せなければいけない。フランスは個人主義者で、日本は集団主義ですよね。だからその違いはあります。

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服も、靴も、髪型も…。

フランスでは、65歳まで同じ会社で勤めている人はほとんどいないんです。だから、いくつかの企業の文化を持ってくることができる。文化の違う人が集まれば、何か新しいことが生まれると思います。閉じた環境の中では新しいことは生まれないんです。

日本とフランスを比べたら、総合的には日本の方が優れている点が多いです。日本ほどの国なら、どの課題もいい解決方法を見つけられるはずだと思います。

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日本とフランスの違いを、自らの経験を踏まえて描いた著書
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西村・プペ・カリンさんが驚いた「解散」の記事はこちら
【秋の読書週間】 実は身近な物語
vol.2

「さとり」ってなんですか? 6人のお坊さんに直球で聞いてみた

-.-
vol.1

マニュアルだらけの日本人。フランス人女性が不思議に思うこと(この記事)

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