オランダの英語名は「低い土地の国」を意味し、国土の25%が海面より低い位置にあることに由来する。海面上昇から土地を守るのは、この国最大の課題だ

▼県立美術館で11月11日まで開催中の「テオ・ヤンセン展」にはストランド・ビースト(オランダ語で「砂浜の生命」の意味)と名付けられたプラスチックパイプと結束バンドで作られた作品が並ぶ。誕生のきっかけは、オランダ出身のヤンセンさんの母国の環境問題への関心にあった

▼1986年に新聞に書いたコラムで、砂丘を守るため永遠に砂丘を作り続ける新しい生物が必要だ、と提案した。そして生まれたのがビーストだった

▼最も大きなものは全長約10メートルで250キログラム。巨体が風を受け、72本の脚を生き物のように動かして歩行する映像は圧巻だ。会場内の1体は来場者が押して動かすことができる

▼関節をきしませながら歩く姿に不思議な温かみを感じるのは、風や人の力が動力になっているからだろう。作者は「自然の大部分がタンパク質でできているように、プラスチックだけで作りたい」と材料にこだわる

▼自然を守る事から着想を得たビーストを温暖化の要因である石油由来の物質で作る。そこに作者の皮肉な意図も感じる。人は自然やエネルギーとどう関わっていくべきなのか。展覧会は多くの問いに満ちている。(玉城淳)