リクルート「最強の営業」が卒業を決めるまで
「5つの名刺」を駆使する森本さんの仕事論
志望した会社(組織)に入れなかった。希望の職種に配属されなかった。でも、生活していくためには、やりたくなくても目の前のことをやるしかない。ああ、自分は定年までずっと、この仕事を続けなければならないのだろうか……。
平均寿命が伸長し、「人生100年」といわれる時代、働く期間も長くなりつつある。その間、つらい仕事「一職」に従事し続けるほど息苦しいことはない。
そこで今日は、「人生は一度きり! やりたいことは全部やっちゃえ!」とばかりに、一人で「多職」を実践している変人をご紹介しよう。
「一人多職」のスーパーエジェント
1枚、2枚、3枚、4枚、5枚……。
「普段から全部配っているわけじゃないですよ。今日はあえて持ってきたんです(笑)」
そう言って、人懐っこい笑顔で次々に種類の異なる名刺を取り出したのは、森本千賀子。転職エージェントを生業としながら、自ら起こした会社「morich(モリチ)」の経営、NPOの理事、他社の社外取締役など、複数の仕事に携わる女性だ。
インタビュー開始前、机の上には「トランプ」ができるくらい多種多様なカードが机に並んだが、森本さんが一番初めに手にしたのは、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)の名刺だった。彼女は同社で累積売上高歴代トップを誇る伝説の営業ウーマンだ。NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」に取り上げられるなど、業界でその名を知らない者はいない。そんな彼女だが、実は今年9月にリクルートを去っている。約25年勤めたリクルートでのキャリアを振り返ってもらった。