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古竹の二芝居 「おい、本軍が来たぞ!」 陽が顔を出して辺りも明るくなった頃、 弥助達が遠く眺める先に、坂原大膳率いる 神保勢援軍の八千と、惟定のいる義正率いる 豊地勢六百の軍勢が姿を見せた。 各砦にいた中隊計三百人も下山して、 尚芳の一番大隊に合流し、一千二百の軍勢で 豊地勢の後ろに従い、更に正道の二百九十の遊軍が 続いて、支城を通り過ぎて古竹本城前に進んだ。 古竹本城は、南北に伸びる緩やかな山の上にあり、 本丸から二の丸三の丸と、段々と南の正門に 下がっていて、西に川が横切る守るに易く攻めるに 難い城で、北から東側へ行くには 山を越えねばならない。 援軍八千はそのまま南の正門方面に三千、 北東に三千、本丸の北に二千と分かれて布陣し、 豊地勢六百は本陣として、川を挟んでその西北に 置かれ、その東には北東の支城に備えるように 尚芳と正道の軍勢が置かれた。 古竹城では各所に幟旗が見え、正門方面では 遠く柵越しに城兵が守りを固める様子が垣間見える。 城も包囲に対して準備をしているらしい。 神保方本陣となった義正の豊地勢の陣では、 惟定を上座に、梶谷左兵衛、新里兵部(義正)、 坂原大膳、峰口左京、梶谷内膳(宗善)、高木尚芳、 淀橋正道の他、諸城代表の武将二人ずつ、 計三十人程が集まって軍議が開かれ、 左兵衛が諸将にあいさつした。 「此度は晴れの本丸様初陣の日であると共に、 長らく我ら神保方を悩ませた古竹討伐の日でもござる。 天もまた澄み切って戦日和といえる。誠にめでたい」 峰口の指示で正道の家来達が、諸将には事前に戦況を 伝えているが、改めて峰口が簡潔に伝え、 古竹城について、 「外につながる門は東南北に三ヶ所、本丸、二の丸、 三の丸とそれぞれ堀切で区切られ、その側面は どこもなかなかに急勾配で距離もあり、上るだけでも 一苦労であることが分かります。また、正門方面には 十重二十重に曲輪が連なって攻め手を迎え撃つ構えで、 本丸方面には側面もまた長い上下の畝(うね)掘が あったりと、攻め手が横へ動けず、少数がそれぞれ 登らざるを得ない堅い構えになっております。 敵が少数であればいずれ落ちましょうが、 やはり我が方の被害も免れません」 と概要を説明し、 「南北の支城には事前に書状を送り、手出し無用で あれば、その後の沙汰もお任せすると伝えてあります。 問題は本城で、無論、当主宛にも送ってあります」 当主宛の書状の内容は、 「・・・・陣取りは時勢の必然にて、此度の儀は神保方に 一歩利ありて偏に運に依るところ大と見るべきところ なり。当然御当家に罪咎無く、御当主一族一党以下城兵 総ての身の保証を確約する故、何卒報復の情より為す 干戈の交えを排し、互いの和平安寧のために門を 開けられたく云々・・・・」 という具合で、穏便に下手に妥協を仰ぐ調子だった。 攻城戦では、攻め手が勝てば城主側は討死や自刃、 場合によっては逃亡であり、あるいはその後、 攻め手側の一族を養子に迎えたり、 城主交替も珍しくない。 古竹側がこれを受けて降伏するかは不明だが、 叶えば互いに死傷者も無く落着する。 「城を大軍で包囲しておいて戦を避けたい云々など、 向こうにすれば慇懃無礼で挑発とも取れるな・・・・」 坂原が失笑した。 「無論、どちらにもなります。城兵総てなで斬りで、 当主一族も斬られ、あるいは自刃して全滅、 滅亡を選ぶか、全員無事に城から出て 地味に、あるいは気楽に余生を送るか二つに一つ。 生きるも死ぬも向こう次第」 「では、当主が拒否すれば・・・・」 義正が聞く。 「当主は己が面目を重んじて、多くの城兵をも 巻き込み死に追いやった鬼畜の俗物、 古竹滅亡は必然、天の道理・・・・」 峰口は吐き捨てるように言うが、 「しかし一方、城兵を救うために降伏した当主は、 褒められこそすれ、謗られる謂れはありません。 その善行は後世まで語り継がれるでしょう」 峰口は当主の善意、あるいは方便に期待している。 「何はともあれ、戦は体を使う前に 頭を使うべきと心得ます」 坂原はギロリと峰口をにらんだが、 義正もさすがに坂原と峰口の不仲は分かっているらしく、 力攻めを急かす坂原に対する皮肉にも取れて、 「ふん、まあな・・・・」 と軽く笑った。 「兵が集まらず弱小とはいえ手堅い山城なれば、 力攻めは避けたく、他に何か手はないかと 考えあぐねておりました」 坂原が憮然として、 「城兵の数は把握しておらんのか」 「我らに気づくのが朝とすれば、篭った数は限られ、 おそらく千も行かぬと・・・・」 坂原は笑って、 「馬鹿馬鹿しい、もはや勝ったも同然ではないか。 弱小の兵を恐れて城攻めになるか!」 と、怒りに変わっている。 「せっかくの堅城も兵あればこそだ。 無駄に大きければ隙が出来る。こちらが数で勝って おるなら、四方八方から攻め立てればよい。 一気に攻め寄せれば敵は支えきれまい」 惟定始め神保方諸将が揃う軍議の場のせいか、 坂原は意気盛んだが、対して峰口は、 「一気に出来る規模ではありません。 寄せれば跳ね返すのが城の守りです。 各個撃破の危険があります」 と、冷や水を浴びせるが如き反論を述べる いつものやり取りである。 「力攻めは危うく、さりとてこれに気づいて 敵の援軍が来れば面倒です。あるいは、 隣国の二樹や芳崎がこの隙にと豊地城へ攻め込む ことがあれば、いつまでもここにはいられません」 豊地城は現在一千余の城兵が守備している。 敵にそれを破る程の兵力があるとは思えないが、 いつもの連携で各地を荒らされては、 これも放っては置けない。 「この大事な日に何を煮え切らぬことを・・・・」 坂原は最初から力攻めで決めているらしく、 苛立ちを示している。 峰口が当初と違って力攻めを躊躇するのは、 今回に限らず集まった諸城の事情による。 諸城の軍勢は多いとはいえない。 その上で被害確実の無理をすれば、招集した 神保本城よりも作戦指揮の豊地勢が恨まれかねない。 一方、諸将にとって参陣は名誉ではあるが、 この後の城攻めを考えれば、浮かれてもいられない。 石峰勢の三橋兵衛繁龍、二郎繁春兄弟もこの場に いるが、手勢僅か二百二十人では城攻めどころか 野戦に向かわせるにも無茶というもので、 義理故の参陣であることは、似たり寄ったりの 各諸将にも分かる。出来れば城攻めは避けたい。 「兄上、如何致しますか」 「う〜ん、厳しいなあ」 石峰勢も援軍の一部として、既に城本丸北部に布陣 している。これをそのまま本丸に攻め込ませるとなれば、 敵の出方次第では、それこそ全滅さえ無いとは限らない。 「指揮は豊地勢の新里兵部様だ。逆らうわけには 行かぬが、従えば大損害の心配もある・・・・」 「我が殿の面目もある故、拒否や撤退など、 石峰勢の評判を落とすわけにも行かぬ・・・・」 繁龍も繁春も困っている。 石峰勢が少勢で攻めるに弱く、被害も大きく なることくらいは、兵達にも察しはつく。 六蔵も参陣して、家来となっているのは自ら選んだ 五郎左、彦三、吉松、助六、勘八に、今回のために 臨時で加わった久兵衛、五作、与平、与助、 五助の計十人である。 上から死ねと命令を受けたから、そのまま 下に死ねと命令を下せるものでもない。 六蔵自身、 (戦は勝つためにやるんだ。 死にに来たわけじゃねえぞ) と強く抵抗を感じる。 神保方が勝利するとしても、 自分達の犠牲の上ではかなわない。 (冗談じゃねえよ、 そこまで義理立てする理由がねえや) 直接間接に神保方を支えた覚えはあるが、 支えられたとは思っていない。 (一工夫要るよなあ・・・・) 六蔵も考えた。 現在、包囲は完了して、 お偉方は本陣で軍議の最中である。 坂原大膳主導であれば力攻めだろうが、 峰口左京が関わるならば、 何らかの策を用いるだろうと推測した。 石峰勢陣中、六蔵は草っ原の地べたに家来十人と 座って見回し、 (ん〜、未だ名前が覚えきれねえ・・・・) と思いつつも意見した。 「支城を過ぎたのは、本城を落とせばそれで決まりと いうことだろう。事前に支城に誘いをかけたかも しんねえ」 久兵衛は腕枕をして目をつむって寝そべっている。 「支城の兵達が襲ってくることは?」 一番若い勘八が心配げに聞いてきた。 「支城の兵は限られてるから来ることはないだろう。 来ても本陣の方で跳ね返してくれるさ。 気になるのは敵の援軍が来るのか、このまま力攻めに しちまうのかどうか、だな」 五郎左も聞く。 「力攻めって、俺ら石峰勢もですか?」 「そうだよ、みんなで突っ込むんだで」 「ぶはは、いやいや、そりゃねえですよ、 俺らぁ桁少ないし、まだ死ぬには早ぇですよ」 「だから、少数は石峰に限んねぇし、 神保方みんなで突っ込もうってことになるわけだよ」 「え〜」 ほとんどの者が露骨に迷惑そうな顔になっている。 六蔵も苦笑して、 「いや、わかってるって、俺だって死にに 来たわけじゃねえからな。死ぬ程のこととも 思ってねえよ。なんとかやり過ごすしかねぇな」 何か有用な策で石峰勢による城取りが叶うのであれば 一番だが、それが無理ならば手柄は当てにならない。 無理をすれば皆返り討ちで討死、戦死である。 六蔵も進んで討死したいとは思っていない。 上からの命令に従い、且つ被害を最小限に収めるには、 どうするか。 (こっちがどうこうより、まずは本陣の偉いさんが 問題だよな・・・・) 六蔵は上司、足軽大将の繁春に献策した。 「親方、我らは城攻めにはあまりに少勢、無理をすれば 討死で、後々城の守りに差し障りがあります。 此度の戦は、参陣して神保方の権勢に貢献すること 自体に意義があります。城攻めについては諸城 それぞれ事情が違います故、一工夫こらすべきと考えます」 命令が大事とはいえ、守っていては石峰勢は 大損害であり、繁春も悩んでいただけに、 六蔵の言い分はよくわかる。 もっとも、繁春自身は口には出さない。 「うむ、一工夫とは何だ?」 六蔵はゴニョゴニョと耳打ちした。 「・・・・うむ、なるほど。止むをえんな」 繁春は石峰勢部将の繁龍に伝えた。が、 「・・・・命令に従え。逆らうことは出来ぬ。 本丸様も御観戦であるぞ」 繁龍は渋い顔である。 「・・・・というわけだ。命令は絶対である」 繁春が六蔵に告げると、 「・・・・では、全員に内容を下知されますように」 「相分かった。伝えておこう」 六蔵はふと思いついた。 (そういえば、まだあいさつしてねぇな・・・・) 仕官が叶ったのは、城山修理の判断が大きいが、 もう一つ、豊地城の峰口の紹介状が功を奏したから だろう。詳細に、好意的に書かれていたとすれば、 感謝すべきことで、無縁で済ませるのは恩知らずで 無礼というものだろう。普段簡単に会える立場では ないが、豊地勢が主役となれば本陣にいるに違いない。 「それから、もう一つお願いが・・・・」 「まだあるか、何だ?」 「豊地勢の腹心に峰口左京様がおられます。 それがしが石峰に仕官が叶ったのは、城山修理様だけで なく、左京様の紹介があればこそでして、今、 豊地勢が大々的に指揮を取っているということは、 左京様も現場で活躍されていると思われます。 せっかくの機会故、ぜひお礼のあいさつに伺いたく」 「左京殿か。うむ、名は存じておる。戦が始まると まずいな、手短にせよ」 「そこで、もう一つお願いが・・・・」 「う〜ん? よく願う奴だな。今度は何だ?」 「それがしが戻るのが遅れた場合に備えて、 代わりに久兵衛が仕切ることをお許し願いたく・・・・」 「久兵衛・・・・あの年寄りか」 「はい、あの者は長らく戦さ場で暮らして 生きながらえて来た、本来足軽頭くらいは十分に 務まる年季者故、我が家来九名を仕切ることも可能と 存じます。なにとぞ許可を、あの、 責任はそれがしが負いますので」 六蔵もまだ久兵衛をよく理解しているとは言い難いが、 これまでののほほんとした言動から、あるときは上手く 器用に、時には狡く立ち回っているように思えた。 買い被りの可能性もあるが、今、 家来共々無事で済むならそれでいい。 「うむ・・・・随分奴を買っておるようだな。 奴は一兵卒だが、役立つならそれもよかろう」 「はい、ありがとうございます!」 六蔵は家来達を久兵衛に任せて急ぎ本陣へ出向くと、 峰口にあいさつした。 「おお、六蔵か。息災であったか」 笑顔の峰口に六蔵は両膝を着いて一礼し、 「はい、御無沙汰でございました、お陰様で石峰城に 仕官が叶い、こうして再び左京様にお目にかかることが 出来まして・・・・」 「そうか、まあ、あいさつはよい、 ここへ来たのはそのためか? 今立て込んでおってな」 「降伏開城について考えを持って参りました」 「なに?」 六蔵は峰口に小声で何かを伝えた。 「・・・・当主も、無論城兵も、降伏する大義名分が 出来ます。裏切りも無理もありません」 「・・・・・・・・うむ・・・・なるほど・・・・」 「問題は、それがしだけでなく、 左京様へも悪評が広がる恐れがありまして・・・・」 「・・・・かまわぬ。やってみようか」 峰口は笑みを浮かべた。 峰口は家来達数人を伴って、古竹城正門から よく見えるように、正門に対峙する陣から やや離れた前方に立った。 やがて六蔵がそこへ、近隣の村人達四十人程を ぞろぞろと連れて来た。村人は老若男女様々で、 風体からして城からも見分けがつく。 そこで矢文を正門内に射ち放った。 矢文には峰口による筆で当主宛に、 「既にお知らせしたように、頑強なる城に対しては、 力攻めもならず、我が方も妥協を示せども、それに お応え頂けない場合は、止むを得ず古竹領民を尽く 撫で斬りにしてその意気に報い、御当主一族一党の 非道ぶりを城兵に知らせ、後世に伝えんと決意の 次第にて、この文が届くであろう頃合いを見計らって 一人一人斬り捨てて行くので、とくとこの忌まわしき 事態を御見物されますように」 と、丁寧なような、嫌がらせのような当てつけた 内容を知らせ、更に「城内将兵に告ぐ」として、 城内各地にほぼ同様の矢文を射ち放った。 首を斬るために藁で作った人形は、 急ごしらえで数は揃わなかった上、 扱いが荒いとばれるので、村人に芝居を頼んだ。 また、後方の陣中の将兵が驚かないように、 「これは投降開門を誘う芝居であるから誤解無きよう」 と断ってある。 六蔵は正門に背を向け、村人達に顔を合わせた状態で 斜め前に立ち、あれこれと指示を出す役目である。 門まで距離があるため、六蔵が村人達に 指示する声は城兵達には聞こえない。 数人の家来が村人達の左右を囲み、 峰口が六蔵に軽く頷くと、 「じゃあみんな、芝居始めるから頼むよ!」 と、六蔵が村人達に叫んだ。 家来二人が着物を着せた藁人形を、いかにも 生身の人間のように抱えて前へ連れ出して地べたに 座らせると、城兵に見せつけるように 一刀のもと首を斬った。首は前に落ちた。 六蔵はここで村人に指示を出す。 「はい、みんな、ここで城兵にどうする!?」 問われた村人達は、どぎまぎしながらも、 一人が城兵に向けて叫んだ。 「おーい、門を開けてくれぇー!」 他の者もなるほどと気づいて口々に真似て叫んだ。 「助けてくれー!」 はっきり聞き取れずとも、叫んでいる様は城兵にも 分かるだろう。 城兵がこちらに注目しているのは 峰口や六蔵達にも分かった。 芝居と分かっているはずが、その場のそれらしい やり取りや雰囲気で真に受けるのか、 泣き出す子供もいて、更にどこぞの婦人が 斬られて派手に倒れると、老婆など一部村人が 口に手を当てて、驚き慌てる素振りなどを見せた。 六蔵は後ろにいた爺さんに、 「爺さん、少し離れて、後ろへ走って、 そいで捕まる!」 と、爺さんは走り出してその場から離れようとして、 家来に捕まり、前へ引き出された。 「爺さん、斬られたくないならどうする!?」 「え、え〜と、た、助けて下さいぃ」 爺さんは土下座して命乞いをした。 「はい、みんなはどうすんの!? 見てるだけかい?」 村人達は慌てて、 「助けて下さい!」 と口々に叫んだ。 六蔵は前にいた老婦人に、 「おばちゃん、ここで俺にすがりついて、 頼むフリしてくれ」 老婦人は六蔵のもとに駆け寄り、 「助けて下せ〜、これでええんか?」 「そういうこと」 峰口が様子を見て顔を背けた。 凄惨な現場に居合わせて辛い、わけはなく、 笑いを堪えているようだった。 一方、城兵からすれば一大事である。 敵を寄せ付けまいと構えていたら、 敵は城兵達の身内もあろう村人達を これ見よがしに一人また一人と斬って見せている。 それを止めようと攻め込むわけにも行かず、 助けを求めているらしい村人達を見ても 手も足も出ない。 城兵の一部は悲憤慷慨、号泣の取り乱しようで、 これには当主一党、兵のまとめ役も対応に苦慮した。 「占領を企てるならば、領民をなぶり殺しに するなど常軌を逸しておる」 「敵は当家に対して寛大なる措置を取ると確約の一方、 応じなければあらゆる手段をもって苦しめると 再三伝えて来ておる。鬼を望むか仏を望むか、 当家次第と」 それでもなお、神保方のやり方は、城攻めに 困っている故だろうと推察し、降伏も開城もしない。 正門前に連れて来られた村人達は、既に半数が 斬られ刺されて横たわり、藁で作った生首が 前に積まれた。 「実に卑劣極まる。まさに姑息な左京、面目躍如だな」 馬上から見物の坂原が、いつものように 笑みをもって峰口に声をかけた。 「・・・・我が豊地勢は、戦において仏にも鬼にもなります」 敵地占領など先を考えれば、勝つためには手段を 選ばず、とは行かないが、あらゆる策を講じる 必要があると峰口は考えている。 もっとも、近隣住民の殺戮は発想外であり、 更にそれが芝居など思いもよらなかった。 (・・・・六蔵め、なかなかに恐ろしい奴だの) 村人達が斬られて減ると、六蔵達は新たによその村人達を 引き連れて来て、同じく首を刎ね、刀で袈裟がけし、 槍で突き、藁の遺体を蹴りつけ踏みつけた。 遺体は藁人形も含めて五十六十と増えて、 一帯が遺体だらけになった。 その徹底ぶりに、多少の勘違い、誤解も生じる。 芝居のはずが神保方でさえも、 「あの男は一体何者か」 「いくら何でもやり過ぎではないか」 「ひでぇ奴がいたもんだ」 と呆れ、嫌悪した。 それでも門は開かない。 坂原は失笑して、 「見ろ、敵は余程の覚悟か見破っておるのか、 まるで変わらんではないか。こんな猿芝居はもはや無用、 左京よ、意固地にならず総攻めを決断せえ」 と言うと、馬を駆って去って行った。 坂原としては、落城させるための総攻め(力攻め)の 主張であって、何らやましいところは無い。 それで死傷者が出るのは当然であり、 各々の武運に尽きるとの覚悟である。 義正は峰口達の策を認めて、総攻めを下知していないが、 援軍諸城が一気に攻めれば落ちるとの考えは 坂原と同じだった。 しかし一方、諸城の協力で成り立つ以上、敵はどうあれ 味方から恨みを買うような力攻めは避けたいという 意味では峰口と同じである。 そのため包囲はしたが、まずは峰口の策をもって 内応などで敵を弱体化させ、突破口に繋げようと 算段して、各陣の諸城部隊も義正からの下知を 待っていた。 坂原は北東の陣に向かうと、 「各々方、これほど盛大に手柄を競える場で 手をこまねいているとは、一体如何なる了見であるか! 本丸様が晴れの初陣で、熱心に御観戦あるのを 忘れたわけではあるまい!」 と諸将に叫んだ。 「いかに各々少勢といえども、合わせれば大軍、 対して城の守りは薄いと判っておれば、 何を怖気付くことがあろうか!」 挑発とも侮辱とも取れる檄に、諸将も顔を強張らせた。 「これは心外、我らは神保方の一軍として 下知を待ってるに過ぎぬ、怖気付いたとは何事か!」 「如何に豊地勢腹心であっても侮辱は許されませんぞ!」 諸城もそれぞれ面目があり責任がある。 言われた諸将は一様に激怒した。 結果、坂原の攻撃を促す檄に判断が分かれ、 ついに部隊の一角が攻撃開始に動いた。 隣が攻め込むならば我が方も動かないわけには行かない、 後で神保本城から責任を問われては敵わない、 出遅れてはまずいと、 「よし、一気に攻め立てるぞ!」 諸城各部隊が攻撃開始を命令し、陣太鼓の音を合図に、 我も我もと雪崩を打つように城へ突撃を始めて 攻め上がった。 三千に及ぶ軍勢の鬨の声と直後の怒号は 正門前の陣にも届き、峰口達にも聞こえた。 「北東の陣が騒がしいが・・・・まさか・・・・」 「城攻めが始まったようです」 訝る峰口に家来が答えた。 峰口は驚いて、 「攻撃の下知など出しておらんぞ! 即刻やめさせぃ!」 急ぎ伝令の馬が北東の陣に走った。 北東の陣の各部隊が攻撃開始と知って、 北の陣もいざ、と身構えた。が、 「しかし、豊地勢から下知はありませんが・・・・」 繁春は繁龍に疑問を示す。 「いや、先程その豊地勢の坂原大膳殿が来られて 攻撃はまだかと急かされておる」 繁龍も覚悟を示したが、繁春は腑に落ちない。 「兄上、下知は豊地勢として、即ち新里兵部様に よるものと受け取ってよろしいか?」 「大膳殿は兵部様の腹心であろう。わざわざこちらに 出向いて催促となれば無視も出来まい。 現に北東の陣では始まっているではないか」 「しかし、本陣からはっきりと下知があるまではと・・・・」 「大膳殿は本陣から参ったのではないのか?」 下知があれば本陣から合図の太鼓や、伝令があって 然るべきだが・・・・と疑念が残るが、既に北東の陣から 城攻めの声はこちらにも響いている。 もはや始まったと見るべきではないか。 「始まったのであれば、動かぬわけには行かぬ・・・・」 しかし、繁龍も繁春も気が進まない。 北東の諸城軍勢、各部隊が攻め上がると、 それを知ってか、たまたま偶然か、正門が開かれた。 城側の武将と兵達が武器を持たずに、 ぞろぞろと門を出て来た。その数約四百人。 兜を脇に抱えた代表らしき敵武将が 数人の家来を引き連れて峰口に会うと、 「我らは正門から三の丸を守る将兵にござる。 そちらからの勧告に従い、降伏を決断致した。 城兵達に対しては、何卒、格別の配慮をお願い致す」 と、頭を下げた。 正門から三の丸までの将兵達が、 観念して降伏を決めたのだった。 「貴殿らの決断に敬意を表し、感謝申し上げる」 峰口は頷き、敵武将に会釈した。 とりあえず幸いだったのは、 北東の軍勢、各部隊が無理をして駆け上がり、 三の丸に到達したときには、城兵は既に正門に移動して 誰もいなかった。もっと攻撃が早く、あるいは 降伏の決断が遅ければ、互いに死傷者が出ただろう。 本丸北部の陣にも石峰勢の他、 他の城の部隊も隣り合って布陣している。 いずれも少数で、城攻めには消極的だった。 正門で城兵達が降伏しに出て来たことはまだ知らない。 北東の陣の攻撃開始に、もはや我らも、 という判断になっている。 久兵衛はのっそりとした調子で繁春に、 「親方、始めるんなら、六蔵の頭から言われたこと、 やってええですかね」 繁春は六蔵から話を聞いている。 「・・・・うむ、頼む」 石峰勢は他の軍勢よりも前方に出た。 「決して手柄を焦って出し抜こうということにあらず、 まずは我ら石峰勢の戦法を御披露したく、 ぜひ参考にされたし・・・・」 と、その様をほんの僅かだけ、しばらく見物する ようにと、繁春は各部隊に要請していた。 攻撃開始の号令の前に、石峰勢が他の軍勢より 少しばかり前方に位置し、その先鋒の一角には 久兵衛達六蔵の家来九人もいる。 後方の繁春の号令やその合図を受けると久兵衛は、 「よーし、始めるぞ〜」 と周りに前置きしてから、 「突っ込めーっ!」 と叫び、走り出すと思いきや、その場に倒れ込んだ。 すると周りの兵達もわーわー叫びながら、 やはり次々とその場に倒れ込んだ。 久兵衛はだらしなく仰向けで、 「我ら石峰勢、討死でござる〜!」 とかすれ気味に叫んだ。 周りの連中も横に寝そべって 「ぐえ〜」「うあ〜」と叫んでいる。 先鋒の足軽五部隊が揃って“討死”し、 後続の部隊も次々に討死した。 繁龍繁春にも改めて「我ら討死!」と知らされ、 繁春は深刻そうな顔で、 「命令に従いましたが、 我らの決意は潰えてしまいました・・・・」 繁龍は苦い顔で、 「これでは戦にならんな・・・・」 と、互いに見合って苦笑した。 北部の陣の各軍勢もそれに続いて、 石峰勢同様に尽く討死となった。 死傷者も無く、疲れが癒えたという奇跡的な事態に、 「我ら未だ武運尽きることなし」 と喜んだ。 命令に従った結果の“北の陣全将兵討死”は、 峰口の耳にも届いた。 顔を引きつらせ驚く峰口に、 傍の六蔵が事情を話した。 「・・・・・・・・」 峰口はしばらく唖然としたが、 拳で軽く六蔵の肩を小突くと、 「またもやりおったか!」 と叫んで大笑した。 北東の陣は攻撃が中断されたが、 将兵は三の丸を占領した。 六蔵も北の陣に戻って久兵衛に聞くと、 「はい、我ら全員討死、隣の軍勢などもまた 全滅してしまいました」 と、周りにいる家来達と同じく笑顔で答えた。 まもなく古竹城は落ちた。 当主と側近数人が自刃し、残る将兵は降伏した。 地元村民の協力で死傷者も出さずに 降伏開城へ導いたことで、 「古竹(城へ)の大芝居」と後に語られたが、 石峰勢では、“全軍討死で無事”が 痛快な話として語り継がれた。
by huttonde
| 2017-10-24 13:35
| 漫画ねた
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