約4万7000人いると言われる保護が必要な子どもたち。
施設は税金で運営されていますが、職員不足が極めて深刻です。また、施設でなくとも、里親という別のリスクも存在しています(参照「子どもが大人を信じきることができない、虐待保護の『苦しい現実』」)。
虐待などで施設や里親のもとで暮らす子どもたちは「児童福祉法」によって保障され、基本的には18歳を境に支援の手厚さに大きな変化が起こります。
近年では20歳や22歳まで適用される制度もありますが、施設や里親、予算の不足なども相まって、基本的には18歳(高校卒業の時期)を過ぎると自立が求められるのです。
虐待で保護された子どもたちは、里親や施設にいる間に家に戻れるケースもあれば、戻れないこともあります。
18歳や20歳まで保護された後、年齢制限が来て施設を出たとしても、貧困や虐待が行われていた家庭環境から劇的に変わるわけではありません。施設や里親を離れても、実親が頼れる存在になることはなかなか難しいのです。
日本では大学生や社会人になっても、実家の存在が大きいと感じることはたくさんあります。たとえば、大学進学を考えると、その実態が浮かび上がります。
入学準備や授業料をあわせると初年度から約100万円、それに加えて月々の生活費もかかります。生活費は、家賃6万円・光熱費・食費・交通費・通信費などを考慮すると、東京都内では最低10万円近く必要になり、学費と生活費を合わせると、毎月20万円以上を自分で工面しなければなりません。
アルバイトで毎月20万円以上を稼ぐのは非常に厳しいので、基本的には奨学金を高校生の間や大学入学後すぐに申請し、借金をしながら残りの約10万円を自分で稼がなければいけないのです。アルバイトのために、課題・研究に取り組む時間がないこともよく聞きます。
高校時代も、普通の子であれば受験勉強に集中できますが、施設や里親のもとで暮らす子どもたちは奨学金の申請を複数しなければなりません。
私たちも受験生の子どもたちの学習を支援していますが、受験がやってくる前に、奨学金の合否に一喜一憂し、奨学金が落ちたら進学のための希望もなくなってしまう子も見てきました。
加えて、大学進学を見据えて、高校時代からある程度アルバイトをしておく必要があります。
都内の施設では大学進学までに100万円程度貯めておくと中退率が低くなるとされています。入学後すぐにアルバイトをすると学業や友人関係にも響き、体調が悪い時も働かざるを得ない状況が続くと無理が来てしまい、中退につながりやすいからです。
一般家庭の子どもが受験勉強だけに集中できる環境の中、施設の子どもは、高校生の頃からアルバイトや奨学金の申請、受験勉強という3つすべてをこなさなければなりません。
仮に大学進学を果たしても勉強だけではなく、アルバイトにも時間を割かなければならず、奨学金によっては定期的に集まらなければいけなかったり、成績を維持しなければいけなかったりというルールもあります。
このような点は、親に頼れない子どもにとって、大学進学は非常にハードルの高さを感じるもの。そこから既に、一般家庭の子どもと差が生まれてしまうのです。