八ケ岳の大パノラマを気軽に満喫!北横岳のガイドトレッキング
本州のほぼ中央、長野県と山梨県にまたがり、個性的な山々が連なる八ヶ岳。森と湖をめぐるトレッキングから本格的な登山まで、コンパクトなエリアに魅力が凝縮しています。そんな八ヶ岳の中でも、ロープウェイを利用することで気軽にトレッキングが楽しめるのが北横岳(きたよこだけ)。今回は登山ガイドの案内のもと、北横岳の魅力を存分に堪能してきました。
南北でふたつの表情をもつ八ヶ岳
そんな八ヶ岳の中でも登山初心者に人気なのが、北八ヶ岳に位置する北横岳。2,500m級でありながら北八ヶ岳ロープウェイと組み合わせれば、往復3時間ほどで登ることができるため、八ヶ岳の中で一番登りやすい山と言われています。
「登山口から山頂までの標高差は約250m。手軽に登れて素晴らしい眺めにも出合えるので、八ヶ岳を初めて登る方や家族連れにもおすすめです」と話すのは、「YATSUトレッククラブ」の上田剛(たけし)さん。八ヶ岳を中心に、少人数によるガイド登山を行っており、ただ登るだけではない登山の楽しみ方を伝えています。
そんな「YATSUトレッククラブ」で用意している登山プランのひとつが「北横岳日帰り登山プラン」。6月~11月初旬まで開催で、料金は1人14,000円(税込)。所要4~5時間です。今回はこの登山プランを利用し、登山歴30年以上の上田さんと北横岳トレッキングへ出かけました!
大自然がつくり出した神秘的な自然庭園・坪庭
登山口までの北八ヶ岳ロープウェイは20分に1本運行。運賃はガイド料に含まれていないため、山麓駅で往復分のチケット(税込1,900円)を購入します。山麓駅から山頂駅までは高低差466m。約7分で到着します。
北八ヶ岳ロープウェイ
長野県茅野市北山4035-2541
[運行時間] 営業時間内の毎時00分/20分/40分に発車(営業時間は8:00~17:00の間で季節・曜日によって変動あり。詳細はホームページを確認)
[料金] 大人往復1,900円・片道1,000円、小学生往復950円・片道500円(全て税込)
0266-67-2009
山頂駅周辺には八ヶ岳最後の噴火でできたとされる溶岩台地の坪庭が広がります。一般的に坪庭は日本庭園などの庭を指しますが、北八ヶ岳ロープウェイの頂上に広がる坪庭は、高原と溶岩石によってつくり出された自然庭園。すり鉢状になっており、日本庭園の坪庭に似ていることから名付けられました。
坪庭は1周30分ほどの散策路が整備されており、北横岳の登山口へは、この坪庭の散策路を経由。高山植物を眺めながら、のんびりと進みます。
ちなみに、火山群である八ヶ岳はあちこちに火口がありましたが、現在も活火山に指定されているのは北横岳だけ。2017年8月現在、火山活動は見られませんが、800年ほど前に噴火したと言われています。
ところで、坪庭から眺める山々の斜面には、不思議な白い縞模様が見られます。これは、木々が帯状に立ち枯れたり倒れたりする「縞枯れ現象」というもの。遠くから見ると縞模様に見えることからこう呼ばれていますが、はっきりとした発生原因は解明されていないそうです。シラビソやオオシラビソの針葉樹が多い八ヶ岳山系に多く見られ、北横岳の南側に位置する縞枯山や、坪庭の先に見える雨池山は特に目立つのだとか。
そんな話を聞きながら上田さんと進んでいると、坪庭の散策路の途中に北横岳への登山道が見えてきました。ここは南北八ヶ岳を通じて最高所となる登山口で、ここから山頂までは約1時間の山行です。
溶岩からなる独特の景観と可憐な高山植物を楽しむ
しばらく歩くと、高台から坪庭全体を見渡せる場所に到着しました。溶岩からなる独特の景観と大自然の美しさに感動!
さらに進むと、坪庭とはまた違った高山植物が見られるようになってきました。上田さんが1つひとつ丁寧に説明をしてくれます。
さまざまな高山植物が見られますが、なかでも不思議な様相だったのが、鋭いトゲが生えたハリブキ。標高2,000m以上の八ヶ岳の樹林帯でよく見られる植物で、山菜のウドの仲間だそう。
また、北横岳では少なめですが、八ヶ岳全体には480種類もの苔が生えていて、日本全体に生えている苔(約1,800種類)の4分の1が見られるそうです。
山小屋を経て絶景の山頂へ
それにしても、山の上は下界の暑さを忘れるほどの涼しさです。ふと山小屋の温度計を見ると気温17度。麓の気温が30度を超えていたので、温度差にびっくりしました。
この北横岳ヒュッテから山頂までは、徒歩15分ほどの道のりです。
まずは南峰に到着!この日はあいにく雲がかかっていましたが、晴れた日には南八ヶ岳と中央アルプス、奥秩父がよく見えます。
さらに南峰から北峰までは、徒歩約5分。北峰からは間近に横たわる蓼科(たてしな)山をはじめ、御嶽山や北アルプス、頸城山塊(くびきさんかい)、浅間山をよく眺めることができます。
北峰では休憩を兼ね、上田さんがコーヒーを淹れてくれました。
森の中に静寂の空間が広がる七ツ池へ
七ツ池を経て下山後は、再び坪庭の散策路へ。一方通行なので、往路とは別のルートを進みます。
なお、北八ヶ岳の無雪期は、おおむね6月上旬から10月下旬。この間が雪の装備や技術を必要とせずに歩ける時期です。
「花を楽しむなら7~8月ですが、9~10月の紅葉もおすすめ。空気が澄んで晴天率も高いので、遠くまで展望できる日が多いですよ」と上田さん。
例年、初冠雪は10月半ば。その頃には防寒対策をしっかりとする必要があります。11月に入ると本格的な積雪期を迎えますが、北横岳は雪山入門コースとしても親しまれ、冬も活気があります。
「YATSUトレッククラブ」では、冬山登山を始めたい、冬の八ヶ岳に初めて登ってみたい方に向け、冬の「北横岳日帰り登山プラン」も用意しています。開催時期は12月~4月初旬。1人13,500円(税込)で、所要は4~5時間です。
また、YATSUトレッククラブでは、北横岳以外に、八ヶ岳のひとつで日本百名山にもなっている蓼科山の登山プランも用意。標高2,530mと高い山ながら、日帰りでも登山が楽しめます(開催時期5~11月初旬、1人14,000円、所要4~5時間 ※税込)。
四季を通じて楽しめる北横岳。夏のガイドツアーでは、八ヶ岳の溶岩石と高山植物が織り成す貴重な坪庭の絶景や高山植物の生命力、自然がつくり出した不思議な縞枯れ現象、そして八ヶ岳の歴史も知ることができました。
八ヶ岳を訪れるのならガイドツアーに参加して、その大自然を気軽に満喫してみませんか。
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料金 14,000円(税込)
島田浩美
編集者/ライター/書店員。長野県出身・在住。信州大学卒業後、2年間の海外放浪生活を送り、帰国後、地元出版社の勤務を経て、同僚デザイナーとともに長野市に「旅とアート」がテーマの書店「ch.books(チャンネルブックス)」をオープン。趣味は山登り、特技はマラソン。体力には自信あり。(編集/株式会社くらしさ)
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