利便性か、スピードか…?
現在、スマートフォン用ブラウザもデスクトップ並に充実してきました。機能も速さも異なるブラウザ、果たして一番あなたに合ったブラウザはどれでしょうか? 米GizmodoのDavid Nield記者が、代表的な5つを調べてくれました。
携帯を購入して以来、ずっと同じブラウザを使っていますか? あるいは一週間ごとにスイッチしているでしょうか? 現在モバイルブラウザはデスクトップPC並に選択肢があり、動作の仕方もそれぞれ少し異なります。今回は大手のChromeやSafariから、比較的新しいPuffinまで、メジャーなブラウザの情報を揃えてみました。
自分に最適なブラウザをお探しの方はぜひ読んでみてください。
ブラウザのベンチマーク
ブラウザはクールな機能だけではなく、動作の速さも重要です。そのため、お手持ちのスマートフォンにもっとも適したブラウザを探すにはベンチマークを使うのが効果的です。この記事を書くのも、そこから始まりました。
しかし、テストの完了時間の代わりにスコアを表示するという意味で、ベンチマークの評価はどうしても“人工的”です。つまり、ソフトウェアをトリックすることで、実性能よりも高いベンチマークスコアを得られる、ということです。
なので、しっかり調べるためには複数のベンチマークを使うことをオススメします。ありがたいことに、ほとんどのベンチマークアプリは無料で使い方も簡単ですしね。
今回のテストでは二つのベンチマークアプリを使いました。新しいBasemark Web 3.0と、昔からあるPeacekeeperです。BasemarkはHTML 5、Web GL、JavaScript、その他の技術を使ったコンテンツをレンダリングさせてブラウザをテストする一方、PeacekeeperはHTML 5のみに絞っています。
このテスト項目の違いが理由でベンチマークの結果は大きく変動し、テストに使用したNexus 6P上では結局どのブラウザも他を大きく抜きん出ることはありませんでした。一応、Chromeはどちらのテストでも2位になりましたが。
iPhone 7 Plusでテストした際も、決定的な勝者は決まりませんでした。Microsoft EdgeがBasemarkで2位、Peacekeeperで1位を獲得したので、厳密にいえばEdgeが勝者かもしれません。一方、PuffinはiOSではBasemarkを走らせることすらできませんでした。
この結果が何を意味しているのかと言うと、ブラウザを決める前にしっかりとリサーチをする必要があり、1つのベンチマークの結果を額面通りに受け取らないほうがいいということです。
Google Chrome(Android、iOS)
アプリサイズ: 182.0MB(Android)、59.4MB(iOS)
デスクトップ版のChromeとスムーズに同期し、履歴、ブックマーク、ログイン情報などを共有してくれるので、多くの人にとってデフォルトの選択だと思います。デスクトップ同様のスピードにスマートな見た目で、音声を使った検索などGoogleらしい細かい機能も見られます。
その他の大きな特徴はワンタッチ検索機能(言葉などをすばやく検索するのに便利)、ウェブページのサイズを最適化するデータセーバーモード、オフライン閲覧のためにサイトごとキャッシュできるダウンロードボタン、そしてデスクトップ版同様、Google翻訳をネイティブで搭載しているので、お好みの言語で他言語のサイトを閲覧できます。
最初に登場した時は新鮮でしたが、現在はベンチマークによれば必ずしも最速のブラウザではないし、もっとも機能的が豊富なわけでもありません。しかし、デスクトップ版の人気と、Google関係の全ツールとの密接な連携が、AndroidやiOSのChromeを価値あるものにし、他へスイッチさせにくくしているのです。
もちろん、モバイル版Chromeの使用感が悪いわけではありません。スピーディーだし、画面上の要素はスマートにレイアウトされ、邪魔の少ないインターフェイスは小さいスクリーンに特に効果的です。しかしながら、アプリそのものの特徴や機能より、アプリ以外の要素が多くのユーザーを引きつけている理由であることは否めません。
Apple Safari(iOS)
アプリサイズ: N/A
「慣れきっているから」という理由で、今でも使っているiPhoneユーザーが多いこのブラウザ。最近では優秀なアドトラッカーブロックや、今までより密接なSiriとの連携など、Appleは今も新しい機能を追加しています。Chrome同様、さまざまな情報を同期するので、デスクトップでもSafariを使っていると、モバイル版もより魅力的になります。
iCloudのおかげで開いているタブまで同期してくれるし、iOSそのものと深く統合されているため、コアなAppleのユーザーでスイッチしたい人をあまり見ないのも納得です。もっとも見た目が美しいわけでもないし、もっとも使いやすいインターフェイスでもありませんが、そこまでの問題ではないし、Googleほどあなたのブラウジングのクセを逐一トラッキングすることはないでしょう。
Safariのベンチマーク結果はそこそこ良好で、リーダーモードやリーディングリストなどの機能は便利ですが、結局のところChromeと似たような印象です。つまり、アプリそのものの性能がどうこうではなく、他のApple製品とのタイトな連携があってこそSafariが輝くということです。
Siriの影響力がどんどん大きくなっている今、その印象はより強くなるでしょう。モバイルとデスクトップで同じブラウザを使えるという恩恵を考えると、Windows用Safariの開発が滞っているのは驚きです。それによって、iOSを使っているWindowsユーザーにChromeを選ばせる理由を与えてしまっているのですから。
Mozilla Firefox(Android、 iOS)
アプリサイズ: 53.9MB(Android)、56.3MB(iOS)
かつてはInternet Explorerの代わりで、今はGoogle Chromeの代わりとして見られているFirefox。Chromeと同じくクロスプラットフォーム同期が可能なので、デスクトップで使っているならモバイルも同じにした方が理にかなっていると言えるでしょう。他にも、ビデオコンテンツの自動再生を防ぐトグルスイッチなど、便利な機能を備えています。
開いているタブを表示するサムネイルのシステムはChromeのカード式より見やすく、Google以外(BingやAmazonなど)の検索エンジンに切り替えるのも簡単です。また、アドブロッカーからウェブページの見た目を変えるものまで、モバイルでもアドオンが豊富です。
美しいインターフェイスや高いカスタマイズ性、幅広いアドオンのサポートなどのクレバーなアイデアもあり、ChromeやSafariよりこちらを選ぶ理由は十分です。ベンチマークのスコアではiOS上では良い成績を残しましたが、Androidではあまりよくありませんでした。しかし、それでも自分で試してみることをオススメします。
試用している間、機能面では私たちはFirefoxに感心していました。しかし一番の疑問は、デフォルトのブラウザからスイッチするだけ魅力があるか?ということです。結論から言えば、恐らくノーです。特に、すでにChromeやSafariを使うのに時間を費やしているという方にとっては。
Opera(Android)Opera Mini(Android、iOS)
Operaアプリサイズ: 71.0MB(Android)、N/A(iOS)
Opera Miniアプリサイズ: 21.3MB(Android)、40.6MB(iOS)
Operaは果敢でイノベーティブなチャレンジャーで、Android、iOS、Windows、macOS、その他ありとあらゆるプラットフォームに対応しています。モバイルの面では主にAndroidにリソースを割いているようですが。その証拠に、iOSはフルのOperaではなく、軽量なOpera Miniしかありません。
Android用のフルバージョンOperaは、開くとすぐにGoogle Now風のニュースフィードが表示されますが、これはオフにすることもできます。また、お気に入りのサイトにすぐに飛べる、便利な「スピードダイアル」ビューも備えています。ブラウジングと検索はなめらかで、他のブラウザ同様、Operaアカウントを作ることで他のデバイスのブックマークや履歴を同期させることができます。
他にも、フルバージョンにはOperaのサーバーを通じてWebサイトを圧縮して受け取るデータセーバー機能があります。AndroidおよびiOS用のOpera Miniも、速度とデータ圧縮がメインの売りです。超コンパクトで軽量でも、アドブロックやオフライン閲覧、シンプルなニュースフィードや便利なナイトモードがついてきます。
ベンチマークの点ではOperaは複雑でした。Android用のBasemarkではトップを飾る一方で、iOSのPeacekeeperでは最下位でした。Firefox同様、クールな機能もあって性能も問題はそこまでないのですが、やはり、アドブロックやデータセーバーが大好きで、デスクトップでも既に使っているというわけではないなら、スイッチしたいとは思わないでしょう。
Puffin(Android、iOS)
アプリサイズ: 32.6MB(Android)、41.9MB(iOS)
恐らくこのリストの中でもっとも馴染みが薄いであろうPuffinが約束するのはただ一つ、スピードです。光速の動作が評判で、確かにウェブを徘徊しているとページを構成する要素が即座に表示され、ページ内容に意識がいく頃には読む準備ができています。
興味深かったのがベンチマークスコアです。いくつかベンチマークを使った結果は、もっとも判断に困るものでした。AndroidのBasemarkでは最下位な一方で、Peacekeeperではダントツの1位でした(他のサイトでも似た結果が得られました)。iOSではBasemarkを使うことすらできず、Peacekeeperでは下位でした。
これは最近の技術に関しては苦戦するということかもしれませんが、日常的なブラウジングに関して言えば、その小回りの良さは私たちを関心させました。それだけでなく、機能もなかなかです。たとえば、ウェブゲーミングに便利なゲームパッドのオーバーレイや、画像、映像の質を独立して設定できるデータセーバーツールなどです。
Android上でページの読み込みスピード最速を求めるなら、Puffinを試してみる価値はあるかもしれません。デスクトップとの同期は諦めなければなりませんが。とはいえ、スマートな機能が十分にあるので、必要な時のためのセカンドブラウザとしてインストールしておいてもいいかもしれません。
Microsoft Edge(Android、iOS)
アプリサイズ: 66.9MB(iOS)
新参者のMicrosoft Edgeは、つい最近AndroidとiOSにベータ版で登場しました。テストには誰でも参加できますが、iOSではTestFlightをインストールする必要があり、Androidでは順番待ちリスト入りする必要があります。記事を書く段階では、残念ながらAndroid版は手に入りませんでしたが、iOS版は試すことができました。
まだまだ開発中であることを念頭においても、ベンチマークスコアに関してだけはEdgeには期待できます。iOSのPeackeeperではトップに輝き、Basemarkでは2位だったのです。もちろん、それだけでスイッチしたいかどうかは別問題ですが。
リーディングモードからブックマークまで、標準的なものはすべて揃っていますが、一番の売りはデスクトップ版Edgeとのスマートな同期です。しかし、すでにChromeやFirefoxでデスクトップとモバイルを同期しているなら、ミリ秒単位のスピードの差はスイッチする理由にならないでしょう。
じゃあ、どのブラウザを使えばいいの?
ベンチマークや試用に使った時間を考えるとちょっと残念ですが、最終的な結論は、最初に予測したものと同じでした。すなわち、デスクトップとモバイルでブラウジングを同期できる便利さは、ちょっとしたスピードの差やユニークな機能に勝るということです。
ということは、使っているデバイスや、GoogleとAppleどちらのエコシステムに投資したかにもよりますが、選ぶのはChromeかSafariでしょう。TwitterやFacebookが独自の統合されたブラウザを使い、iOSが他のブラウザを使いづらくしている以上、それら以外にスイッチする理由がないのです。
究極的な話をすれば、FirefoxもOperaも、ユーザーにデスクトップとモバイル両方で使うよう促す必要があります。しかし、ベンチマークスコアやダークモードなどを見せたとしても、習慣を変えるのは難しいものです。Puffinはいくつかの分野で優秀ですが、デスクトップ版がないのでその他のメジャーどころに水をあけられてしまっています。
Microsoft Edgeはまだ生まれたてですが、Windowsのユーザーベースをつかむことでマーケットに切り込もうとしていますし、見る限りは登場するアプリも完成度が高そうです。スイッチしたいと思わせるかどうかは保証できませんが、ぜひとも自分の使っている以外のブラウザも試してみてください。
どうやってスイッチするのか
色々試した結果PuffinやEdgeに乗り換えたいと決めたなら、いくつかの手順を踏まなければなりません。
まず、Appleらしいのですが、iOS上でデフォルトのブラウザ(ウェブリンクをタップすると開くブラウザ)を変更できません。Googleはちょっとしたトリックを用意していますが-iOS用Gmailをインストールしているなら、左上部のメニューから設定、「Googleアプリ」を選択すると、Gmail内で開くブラウザをChromeにできます。
手元のAndroid端末上では(編注:メーカーによって表記等が異なる可能性があります)、設定を開き、「アプリケーション」、「標準アプリケーション」、「ブラウザアプリ」をタップすると、インストール済みのブラウザからデフォルトを選択できます。
Image: Gizmodo US
David Nield - Gizmodo FIELDGUIDE [原文]
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