ハムザは絶望していた。
仕事も、周囲の人々も、政治も、世の中の全てが嫌になった。
しかし、自ら死を選ぶ前にもう一度、他の人の意見も聞いておこうと思った。そこで命の相談窓口に電話をかけてみた。
電話の向こうの相談員はハムザの話を親身になって聞いてくれた。
そして、時間をかけて少しづづ、生きることの大変さには共感しながらも、命の尊さ、多くの人が困難と向かい合いながらも生きることを選択していることを伝え、必死に説得した。
しかし、きちんと話を聞いてくれた相談員に感謝の気持ちは持ったものの、死にたいというアニスの意志は結局変わらなかった。
相談員はため息をつき、「これだけお話ししてもあなたの気持ちは変わらないというのですね。わかりました。それでは、別な所におつなぎします」と言った。
電話は転送され、アラビアなまりの声のオペレータが出た。
「こちらはアルカイダの事務所です。お客様がすでに運転免許をお持ちの場合、トラック等はこちらで無償提供いたします」。