ピザのメニューを見て、マルゲリータピザも好きだけど、テリヤキチキンも食べたいけど、今日はシーフードピザを食べてみようと思いました。
受話器を持ち上げて電話をかけました。
ルルル ルルル
ピザ屋さんのお兄ちゃんが出て、
「お客さまの名前とご注文のピザをお願いします。」
と言うので、
「西野拓です。シーフードピザを1つお願いします。」
と頼んだら、
「30分でお届けにまいります。いつもありがとうございます。」
と元気な声。タクくんは、ほんとうれしくなりました。
ピザを待っている間、大好きな「しろいうさぎとくろいうさぎ」の絵本を本だなから取ってきましあ。ガース・ウィリアムズぶん・え まつおかきょうこ やくと書かれたその絵本は、タクくんの大のお気に入り。ところどころやぶけて、角も丸くなっていますが、なんどもくりかえしくりかえし読みました。
しろいうさぎとくろいうさぎがうまとびをしている絵をじっとながめている時に、インターホンが鳴りました。
「ピザお届けにまいりました。」
タクくんは財布をつかんで玄関にかけだしていきました。
「はい、千五百円です。あついので気をつけてください。」
ピザ屋のお兄ちゃんが、そっとタクくんにあつあつのピザを手渡してくれます。
タクくんはお金を払って釣り銭とピザを受け取ると。ありがとうございますとピザ屋のお兄ちゃんにちゃんとお礼を言いました。
リビングのテレビの前のテーブルまでピザを持って行き、箱を開いてから、小皿を取りに台所まで行って帰ってきて、歌番組を見ながらピザを食べ始めました。
しばらくして、白いカーテンごしの窓の外、洗濯物を干しているベランダから何か物音がします。
タクくんがふりかえると、そこには何かが動くけはい。す~っとシーフードピザの匂いをかいで、鼻をぴくぴくさせています。
びっくりしてカーテンをさっと開けるとそこには雪よりも輝いた、しろつめぐさを集めたような、まっ白な猫がいました!
「おまえは、さてはシーフード好きの猫だな。」
猫は、ふん、ふん、ふんっと鼻をぴくつかせて長いおひげをふるわせました。
「ピザは欲しいか?」
猫は、びっくりしたように目を大きく見開いて口を横に開きました。ピンクの舌がこきざみにふるえています。
タクくんはシーフードピザをひと切れ取って、ぽ~んと勢いよくベランダに投げ入れました。
猫はすばやく飛びついて、上にのっているリングのイカやら、ぷりぷりしたエビをひとつひとつぎんみするように食べていきます。
猫はおいしかったといわんばかりに、にゃ~んときげんよく鳴いてから去っていきました。
それから、タクくんがシーフードピザを注文するたびに猫はベランダに来るようになりました。そのたびにタクくんは、猫にシーフードピザをひと切れやりました。
ある日、仕事から帰ってきたお母さんにその話しをしたら、
「あら、シーフードピザの好きな猫さんね。なんならベランダで猫かってもいいわよ」
という信じられない返事。
タクくんは、さっそく近くのホームセンターに猫の首輪を買いに行きました。
あの白い毛に合うものと考え、ディズニーアニメのおしゃれキャットのマリーのようなかわいらしいピンクの首輪を買いました。
タクくんは、猫に買ったばかりのピンクの首輪をつけてあげました。猫はごろごろとのどを鳴らしてきげんよさそうにしておとなしくしていました。
「おまえはこれからうちの猫だからな」
猫はうれしそうに鳴きました。
それから猫はベランダに長くいつくようになり、タクくんは猫に名前も付けてやろうと思いました。
「そうだな、お前はシーフードが好きな猫で色も白いから、名前はイカだ! それでいいな。」
猫はわたしには似合わないわという顔をちょっとしましたが、せっせとシーフードを食べて長いしっぽをふるんと振りました。
タクくんはピンクの首輪にサインペンでイカと力強く書きました。それから猫はお父さんとお母さんがいない時も、ずっとタクくんのそばにいてタクくんにさみしい思いはさせませんでした。