「有効求人倍率が、47全ての都道府県で1倍を超えました。」と、参院選で自民党が高らかに喧伝しています。有効求人倍率が高くなることは、それはまぁ悪いことではないのですが、それだけでは良いことでもないのです。
下の表を見てください。この表は、第2次安倍内閣が発足した平成24年12月を境に前後3年の12月の求人求職の状況をまとめたものです。
いわゆる「有効求人倍率」は、左から4列目の「倍率(A/B)」の欄で、これは確かに改善しています。ですが求人がどんなに増えても、それが就職につながらなければ意味がありません。大事なのは、求職者のうちどれだけの人が職を得ることができたのか?の「就職率」です。
「就職率」は右から4列目と3列目です。4列目の「対有効就職率(E/B)」は、求職者全体のうち何%の人が就職できたかです。3列目の「対新規就職率(E/F)」は、期間中に新たに受け付けた求職者数を母数とした就職者数の割合です。
この値も改善していることは認めます。しかし「対有効就職率」では、政権交代時に6.7%だったものが7.3%になっただけです。母数を新規の求職者にした「対新規就職率」でも、34.9%が35.7%になっただけ。どちらも「改善した」と言っても、1ポイントにも満たないのです。
次に「充足率」を見ます。これは求人数全体のうちどれだけの人を雇うことができたかを表す数値です。全求人数に対する割合である「対有効充足率」は、政権交代時の7.5%が5.4%になりました。母数を新規の求人数にした「対新規充足率」は、23%が16.5%になりました。それぞれ2.1ポイントと6.5ポイントの減、割合にするとどちらも28%も低下しています。
つまり、求人は増えているけれど「就職したいと思わない仕事」が多いのです。H27年12月の「対新規充足率」を見ると、新規に増えた100の仕事のうち、84はそういう仕事だということです。巷間言われているような「カラ求人」や「ハローワークの求人数のノルマ」が、事実なのかどうかは分かりません。しかし、求人数は求職数や就職数より水増ししやすいことは確かですから、ここまで充足率が低いとなると疑がってかかった方がよいと思います。
また、そのような操作がないにしても、就職につながらない求人がいくらあっても仕方ありません。民間に様々な就職産業がある中で、ハローワークの状況だけを捉えた数値にどれだけの意味があるのか?という問題もあります。「有効求人倍率」を何かの指標にするのは無意味であるどころか、有害だと思います。