作家と読者、全員が参加者となる新しい小説コンテスト「第3回カクヨムWeb小説コンテスト」が2017年12月1日よりスタートします。
開催まで残り一ヶ月強となりましたが、作家の皆様は応募に向けて作品執筆に励んでいる真っ最中でしょうか。
皆様の執筆活動を支援すべく、本コンテストより作家デビューの道を掴んだ、歴代受賞者へのインタビューを連続企画でお届けします。コンテスト参加のきっかけから、作品執筆のコツ、またWeb上で創作活動をする際の心構えについてなど、これからのコンテスト参加に役立つ情報が盛りだくさんの内容となっています。
コンテスト必勝法を探るもよし、また執筆の息抜きにインプットをするつもりでお読みいただくのもよし。このインタビュー記事が、皆様の作品制作やコンテスト参加にとってお役立ちできれば幸いです。
連続インタビュー企画第五弾、最終回は第1回カクヨムWeb小説コンテストにてファンタジー部門大賞を受賞した槻影さんとSF部門大賞を受賞した柞刈湯葉さんにご登場いただき、それぞれ5つの質問にご回答頂きました。
槻影(第1回カクヨムWeb小説コンテスト・ファンタジー部門大賞)
Q1. カクヨムWeb小説コンテストで大賞を受賞したことで、何か身の回りで変わったことはありましたか?
元々出版経験はあったので、身の回りの変化はなかったです。
友人や家族に驚かれました。
Q2. 普段作品を執筆する際に心がけていることや、意識して取り入れていることはなんでしょうか?
作中のそれぞれの設定の間に整合性をつけることと、読者が物語を読んでどう感じるか想像しながら書くことです。
Q3. 作品執筆に役立つ知識や、これがあると便利!という道具・ソフトなどがもしあれば教えてください。
役立つ知識はないです。本や漫画、映画など沢山見て自分が面白い、書きたいと感じるものを探すのが大切だと思います。
道具については、軽くて持ち運び出来るノートパソコンは個人的に必須だと思います。喫茶店やファミレスなど、場所を変えて書くと気分転換になって書く速度が上がったりします。
Q4. Web上で小説を発表することは、作家の執筆活動だけで完結する公募や依頼原稿とは全く違う方法論が求められます。その上で、Web上で創作活動するにおいて大切なことや工夫すべき点はどのような点にあると思いますか?
テクニックという意味で大切なことは、読みやすさを意識することです。
Web上には他にも書いている方が沢山います。皆ライバルです。中身で勝負する土俵に立てないこともあります。
・目を引くタイトルやあらすじをつけましょう。
・適度に改行・空行を入れましょう。紙媒体と異なりWeb小説は改行を入れないと読みづらかったりします。
・書く時は横書きのエディターで書きましょう。見る人は大体横書きです。
・できるだけ毎日更新しましょう。一定数の読者が見込めます。
・細かく山場を作りましょう。できれば一話ごとに作るといいです。
心構えという意味で大切なことは挫けないことです。
公募や依頼原稿とWeb上の創作活動で最も大きな違いは読者の有無です。公募や依頼原稿では出来上がるまで自分しか見ませんが、Web上の創作活動ではリアルタイムで感想が入ってきます。
あまり気にしすぎないようにしましょう。自分の書きたいものを書きましょう。
(終)
第1回カクヨムWeb小説コンテスト・ファンタジー部門大賞
『誰にでもできる影から助ける魔王討伐』著:槻影 イラスト:bob
kakuyomu.jp
柞刈湯葉(第1回カクヨムWeb小説コンテスト・SF部門大賞)
Q1. カクヨムWeb小説コンテストで大賞を受賞したことで、何か身の回りで変わったことはありましたか?
経済的な余裕ができました。
大学で研究職をやっているのですが、任期制で成果を出さないと数年後の職がないという立場なので、手元にまとまったお金があると気楽に仕事ができるようになった気がします。
あとバイクを買ったので駅をあまり使わなくなりました。
Q2. 普段作品を執筆する際に心がけていることや、意識して取り入れていることはなんでしょうか?
ひとことで言えば「地元住民の視点」です。
Web小説の王道である異世界転生ものでは、読者と同じ立場の主人公が「自分の知っている世界と違う」と言うことで異世界を描写するわけですが、私は「その世界で生まれ育った人間」を主人公に据えて、読者と違う価値観を持たせることで世界観を描くようにしています。
たとえば「横浜駅SF」の主人公は旧世界の遺物を見て「人間にこんなでかい建物が作れるわけないだろ」といったことを言います。この世界では建物は勝手に増殖するものだ、という常識をそういう形で描写するわけです。
Q3. 作品執筆に役立つ知識や、これがあると便利!という道具・ソフトなどがもしあれば教えてください。
執筆はMacBookのPagesを使っていますが、文字数がリアルタイムで表示されて便利、というだけの理由です。別になんでもいいと思います。
設定をEvernoteに書いたりしますが、本文を書く際に参照したりはしないです。作者が覚えられないような設定は、自然さが足りないので使わないほうがいいと思っています。
とくに初心者に大事なことは「道具がよければうまくいくはずだ」という幻想を捨てることです。
たいていの「プロ向けの道具」はプロ特有の長時間使用によるストレスを軽減するためのものであり、初心者がプロ並にうまくなるものではありません。
Q4. Web上で小説を発表することは、作家の執筆活動だけで完結する公募や依頼原稿とは全く違う方法論が求められます。その上で、Web上で創作活動するにおいて大切なことや工夫すべき点はどのような点にあると思いますか?
現時点ではWeb小説で人気をとりやすいジャンルというのはどうしても限定されています。もちろん公募でも通りやすいジャンルというのがあります。したがってネットという場の特殊性よりも、作品の内容がどの経路に向いているかを意識した方がいいでしょう。
私自身は基本的にWeb小説向けの作風ではないと思っていますが、たまたまWeb向けに書いた「横浜駅SF」でデビューした縁で、星海社の単行本書き下ろしや集英社の文芸誌、双葉社のWebマガジン連載など多くの媒体で書けるようになりました。あくまで「Webは踏み台」と考えるのもひとつの手でしょう。
内容以外の点としては宣伝があります。ネット宣伝のノウハウは一言で言えるものではないですが、心構えを言うならば、人気というのは時間をかけて積み重ねるものだと意識することです。投稿サイトで言えばフォロワー数ですね。
「書いてみたけど読まれない。システムが悪いのでは?」と思った人は、読者というのはコツコツ増やすものだと心得ましょう。
(終)
第1回カクヨムWeb小説コンテスト・SF部門大賞
『横浜駅SF』著:柞刈湯葉 イラスト:田中達之
kakuyomu.jp
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