“ネット炎上“ 追跡500日 “ネット炎上“ 追跡500日

インターネット上では“炎上”が毎日のように起きています。SNSやブログでの発言などをきっかけに、批判的な意見が集中し、まるで燃え広がるように拡散する現象です。個人や団体へのひぼう・中傷に発展するケースもあります。
NHKの取材チームは、この500日間、ネットを常時監視、炎上と見られる事案をピックアップして分析してきました。
わかってきたのは、多くの一般の人が、炎上の当事者(批判や非難の対象)になっていることでした。被害を防ぐにはどうすればいいのか。取材チームは、データの追跡を進めるともに、皆さんに広く投稿を呼びかけて情報を集め、取材を続けています。
クローズアップ現代+「ネットリンチ、炎上その後(仮)」(11月放送予定)

追跡 炎上 その実態は

この500日間の炎上記録の分析・取材で得られた情報に加え、それ以前の過去の大きな炎上ケースについて独自に取材、炎上・ネットリンチの実態に迫ります。ショート動画でご覧下さい。(随時追加)

“ネット炎上“ 500日の記録・分析

炎上” どのように広がったか

この500日間の炎上事例、1136件をピックアップして分析したところ、ツイッターが最も多く、ほとんどのケースに介在していました。また、まとめサイトを含むネット専門のメディアに、投稿が引用されたり、記事化されることによって炎上が広がるケースも目立ちました。ユーチューブやインスタグラムなど、写真や動画の投稿が引き金になる傾向も強まっていることがわかりました。

ツイッター 1013
ネットメディア
(まとめサイト含む)
440
ブログ・掲示板 92
ユーチューブ 52
フェイスブック 47
インスタグラム 31

※総数1136件のうち、きっかけとなった投稿や主に炎上が広がったメディアを複数選択。

“炎上” 誰に火がついたか

炎上の当事者(批判や非難の矛先が向いた人や団体)で最も多かったのが一般の人でした。その割合は、全体の4分の1を超え、1000リツイート以上の規模の大きい炎上では、全体の27.6%を占めていました。

大炎上グラフ(RT1000以上)

“炎上” なぜ・背景に何が

まとめサイトを含むネットメディアが“炎上事例”として取り上げ、さらにそれをテレビや新聞・雑誌などの大手のマスメディアが、取り上げることで、炎上がさらに加速・拡大するという指摘があります。これについて炎上のメカニズムに詳しい国際大学の山口真一講師は、次のように話しています。

炎上はネット上の現象ですが、実は、マスメディアも密接にかかわっています。それは拡声器的な役割で、時にはネット以上に厳しく追及・バッシングすることもあります。実際、ある研究では、炎上認知経路として最も多いのはテレビのバラエティ番組ということが指摘されています。その数、実に60%程度で、同研究におけるTwitterからの認知(23%)を大きく上回ります。さらに、マスメディアがネットをチェックして情報を収集しており、炎上を積極的に取り上げるということもあります。

マスメディアとソーシャルメディアの共振
(図:マスメディアとソーシャルメディアの共振)

“炎上” その先には

深刻なのは、氏名や住所など個人情報が特定され、ネットで公開されたり、ネットリンチとも呼べるような深刻な中傷や嫌がらせを受ける状態に追い込まれるケースです。実生活に影響が及んでいる事例もありました。

事例

  • 長年動画投稿サイトで人気を集めていた投稿者が、個人情報を特定され、親族にまで被害及んだとして「引退宣言」をした。(平成28年7月)
  • テレビ番組に出演したアイドルの言動が「うるさい」「イライラする」とネットで炎上、そのアイドルは、自身のブログで謝罪コメントとともに土下座写真を掲載した。(平成29年1月)
  • 会社員が誤って知人との電話の会話内容が入った動画をアップしてしまい拡散。個人情報が特定された。(平成29年3月)

※ネット炎上に関しては、さまざまな見方や定義があります。今回分析の対象にしたのは、「批判的な意見の集中がある」「ネット特有の現象が見られる」「一定の広がりがある」などの基準をもとに、NHKの取材チームがピックアップしたもので、必ずしも全体を網羅しているわけではありません。(平成28年6月から平成29年10月までの記録)

“炎上” 当事者たちの声
投稿から

NHKに寄せられたネット炎上の当事者の声、炎上に関してのご意見などを紹介していきます。

  • あるミュージシャンの掲示板で脅迫やひぼう中傷を受けています。今度ライブで見かけたら後ろから跳び蹴りするとか書き込まれ恐怖を感じています。事実無根の情報も書き込まれています。警察に相談しようかと考えています。

    48歳 男性

  • 私の知り合いがネットで炎上してしまいました。家や学校が特定されました。彼は今、外出できなくなってしまっているようです。

    16歳 男性

  • ネットの掲示板やツイッターでの嫌がらせだけでなく、取引先の企業などに「○○を使うな」というような嫌がらせメールが大量に送られてきたり、周囲の人間が嫌がらせを受けたりと、被害は拡大する一方です。解決法は死んでしまうことくらいしかないな、とはずっと考えています。

    30代 女性

  • 炎上しないために、SNSなら鍵をかけてよほど信頼している知り合い数人だけしか見られないところに本音やぶっちゃけたいことや愚痴を書くようにしています。

    匿名

  • 炎上に参加する側の心理は、正義感よりも、たたくための正当性を求めて正義にすがる場合が多いと思います。世の中や将来に希望が持てず、行き場のない不安や怒りがどんどんたまり、論理的思考能力、倫理観や道徳心はどうでもいいものに変わっていっています。

    18歳 匿名

  • 以前、とある地方の首長の発言に対して、それをとがめる返信を送ったところ、その首長の信奉者と思われる人たちから罵詈(ばり)雑言を送られました。まとめサイトでも批判を浴びました。しばらくはつらくて夜も眠れなくなりました。今でもトラウマです。

    30代 匿名

注目ニュース

画像をタップすると動画が再生します。

  • 小見出し 再生マーク

    大学や学生をツイッターで中傷 群馬大教授を解雇(17/10/11)

    群馬大学の56歳の男性教授が、ツイッターなどで大学や学生を繰り返し中傷したほか、論文の実験データに改ざんがあったとして、大学は、この教授を懲戒解雇の処分にし、11日公表しました。

    続きを読む

  • 小見出し 再生マーク

    ネット炎上の関与は全体の3%(17/9/22)

    インターネット上で批判的な意見が殺到する、いわゆる「炎上」について、自分もそうした書き込みや拡散をすると思う人は全体の3%にとどまることが文化庁の調査で分かりました。専門家は、「炎上が起こるとネットのユーザー全体が批判しているように見えるが、実際には少数だ。炎上が全員の意見だと鵜呑みにしないことが大切だ」と話しています。

    続きを読む

  • 小見出し 再生マーク

    欅坂46の握手会で発煙筒事件 初公判(17/9/21)

    アイドルグループ「欅坂46」の握手会で、発炎筒をたいて握手会を中断させたとして威力業務妨害などの罪に問われている被告の初公判が、9月21日、千葉地方裁判所で開かれ、被告は起訴された内容を認めました。検察は「事件を起こすことでファンだったメンバーへの同情を集めようとした独善的な犯行だ」として、懲役2年を求刑しました。

    続きを読む