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働き方、集団単位から個人単位の改革へ(八代尚宏氏)

日経DUAL

2017/10/27

 国を挙げての取り組みが注目される「働き方改革」。「同一労働同一賃金」が真っ先に取り上げられ、議論されています。政府の取り組みに先駆け、昭和女子大学では八代尚宏氏を座長に2016年9月~2017年2月の半年間にわたり、「労働法制の変化と『働き方』研究会」を開催しました。「働き方改革」が抱えている問題点や女性と高齢者の活用について、八代尚宏氏にお伺いしました。(以下、八代氏談)

■まず話し合うべきは、男女間の賃金格差

 「同一労働同一賃金」の当初の目的は、正規社員と非正規社員の賃金格差をなくすことでした。女性の約半数と高齢者の約9割が非正規社員(契約社員、業務委託、パートタイム、派遣)であることから、「同一労働同一賃金」の問題は、女性活躍推進と密接な関係にあります。

 高齢者の非正規雇用が増えているのは定年退職後の再雇用の増加によるもので、今後さらに増加することが予測されています。一方の女性に関してですが、妊娠出産後の女性の離職率の割合を示すM字型カーブが以前よりも緩やかになったのは女性活躍推進が功を奏した結果などと報道される向きもありますが、これは誤解です。母集団に注目してみれば分かりますが、男性と近い働き方の未婚女性が増えている構成変化が大きな要因です。

 そもそも「同一労働同一賃金とは何か?」という根本問題ですが、ガイドラインによれば、勤続年数が同じ非正規社員にも正規社員と同じ賃金の適用を求める、とあります。皆さん、これをどう思われますか?

 グラフを見れば明らかですが、非正規社員の賃金は男女ともにフラットです。これに対し、正規社員の賃金は年功賃金のカーブの傾きが大きいうえに、男女で賃金の大きな差があります。「同一労働同一賃金」では勤続年数に応じて非正規社員の賃金を正規社員の賃金に近づけるとうたわれているのですが、もともと非正規社員は一部を除いて、勤続年数の短い人がほどんどではないでしょうか。非正規社員の多くが勤続年数に応じて生じる年功賃金カーブが上昇する前に辞めてしまっているのです。

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