謎に包まれた北朝鮮国連代表団-本国同様に孤立、大使との接触は困難
- 北朝鮮代表部はNYマンハッタンの特徴のないビルに入居
- 北朝鮮代表団は指導者のメッセージを伝えるために赴任-シーマン氏
核戦争が迫っていると警告したり、北朝鮮を迫害するために米国が国連安全保障理事会の権限を侵していると主張したりするなど、北朝鮮の国連代表団はしばしばメディアをにぎわす。だが代表団は本国同様、孤立し謎に包まれている。
国連のカクテルパーティーなどで北朝鮮の慈成男(チャ・ソンナム)国連大使やキム・インリョン次席大使を他国の外交官やジャーナリストが追うのは難しい。日本の別所浩郎国連大使はそうした場所で顔を合わせたことがないと言う。
国連は北朝鮮の外交官にとって敵地のようなものなのかもしれない。国連が本部を置く米国は、金正恩朝鮮労働党委員長が「精神的に混乱した老いぼれ」と呼んだトランプ大統領が率いる国だ。
脱北者によれば、北朝鮮の外交官はたいてい子供を含め家族を国内に残すよう求められる。外交官が家族ぐるみで亡命を図ったり、北朝鮮の体制を批判しないようにするためだ。
そのため海外に駐在する外交官は本国からの指示がない限り、たとえ「オフレコ」であっても、対外的に話をする誘因がほとんどない。
ユーラシア・グループのニューヨーク在勤シニアアナリスト、スコット・シーマン氏は「北朝鮮の国連代表団はギブ・アンド・テークの外交活動を行うというより、指導者のメッセージを伝え、指導者の代わりに振る舞うために赴任している」と語る。
北朝鮮国連代表部はニューヨーク市マンハッタンの特徴のないビルの13階にあり、下の階にはホールマーク・カーズの店が入っている。同じフロアには「在米バスク国家代表団」と投資銀行のカーン・キャピタルが入居。トイレは共用だ。非常口脇にある茶色の頑丈な扉にはのぞき穴が付いている。
この北朝鮮代表部を何度か訪れたが、扉の向こうからの応答はなく、電話をしても先方からはかかってこなかった。ただ最近の訪問時に呼び鈴を何度か鳴らすと扉がわずかに開いたことがあった。片手に歯ブラシを持ったカジュアルな服装の男性がいて、大使との面会を申し入れると首を左右に振った。
原題:North Korea’s Elusive UN Envoys Hard to Track Down in Manhattan(抜粋)