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野球 週刊現代

なるほど!広島カープが「清宮幸太郎獲り」に動かなかった理由

なんでも欲しがる巨人とは大違い

知名度・実力ともに抜群の高校生スラッガー。だれもが無条件に飛びつく逸材だと思いきや、セ・リーグ覇者がいちはやく「獲得戦線不参加」を表明。その陰には、チームづくりへの確固たる戦略があった――。

守る場所がないから

ドラフト会議を前に、最大の目玉選手である早稲田実業・清宮幸太郎(18歳)獲得に向けて、各球団が必死の「清宮詣で」をはじめていた。

育成方針や、充実した施設、ケガのしにくい天然芝の球場……。それぞれの球団が自分たちのセールスポイントをプレゼンするため、入れ替わり立ち替わり東京・国分寺市にある早実校舎を訪れるなか、12球団で唯一、清宮側と面談の約束すら取り付けなかったチームがある。セ・リーグ連覇を達成した広島カープだ。

「清宮はものすごくいい選手だけど、うちのスタイルじゃない」

松田元オーナーは、報道陣の前できっぱりとこう明言した。

石井一夫球団社長を筆頭に、最多の5人で面談に押しかけ、なりふり構わぬ姿勢を見せた巨人とは、まるで対照的だ。

近年、坂本勇人を超えるようなスター選手がなかなか育たず、巨人戦のテレビ視聴率は低迷し、地上波での中継は激減している。

高校球界に久々に登場した大物スターである清宮の獲得は、注目度を高める起爆剤になるに違いない。だからこそ、「最恵国待遇」で臨んだとの見方がもっぱらだ。

とはいえ、巨人は今季のセ・リーグホームラン王がほぼ決まりの中日・ゲレーロの獲得にもすでに動いており、現有戦力の阿部や村田、マギーも加えれば長距離バッターは飽和状態。「なんでも欲しがる」体質は、相変わらずのようだ。

ラグビー選手として早大、サントリーの両方で日本選手権優勝という輝かしい実績を残した父・克幸氏から受け継いだDNAと、高校野球の通算最多記録である111本塁打(10月8日現在)をうち立てた実績。

 

話題性と実力を兼ね備えた清宮は、巨人ならずとも、どの球団もノドから手が出るほどほしい逸材。

ではなぜ、広島は早々に「いらない」と宣言したのか。

広島OBで野球評論家の北別府学氏が言う。

「端的に言って、いまのチーム状況を考えると、清宮君がすぐに守れる場所はないということでしょう。去年、今年と連続で優勝し、若手の戦力がとても充実している。

また、カープは昔から若手選手の足と肩を重視していますが、緒方孝市監督が就任してからはそれがますます必須の条件になっている。清宮君の打棒は魅力的ですが、走塁と守備についてはさほど特筆すべきものはない。

将来的には素晴らしいスラッガーになる可能性を秘めていることは重々わかったうえで、『カープの色』の選手ではないと判断したのでしょう」

広島の今季の盗塁数は112個に上り、リーグ断トツの数字だ。35盗塁で盗塁王がほぼ確定の田中広輔を筆頭に、2ケタ盗塁を達成した選手が5人もいる。攻撃的走塁で相手守備にプレッシャーをかける「機動力野球」は、今シーズン41試合もの逆転勝ちを記録した広島伝統の攻撃スタイルだ。