いきなりですが、すこし考えてみてほしいことがあります。あなたが考える、パスをスムーズに繋ぎながら相手を崩すし、得点を得るための手段はなにがありますか?
多くの人は「間をとる」「数的優位をつくる」「ポジションチェンジをする」と、いろいろなことを考えると思います。そのいろいろな手段の中に「三角形をつくる」という手段があるのではないでしょうか?そして、この記事を見ているあなたは、恐らく、タイトルを見て「いやいや、何を言ってるんだ、三角形をつくるのが基本だろ」と思っているはずです。大丈夫です。そう考えているあなたが正常だと思います。では、僕が異常か?と言われるとそうではなくて、ただ、今から話す内容はあなたが考えた常識的な「三角形を形成する」と言ったことを少しだけ否定する内容かもしれないということです。
その今から話す内容は、三角形を形成することとは似て非なるもので、この記事によってあなたに新しい視点を与えることができたらいいなと思います。そして、もし同じような見方をしているという人がいれば再確認の意味で見ていただきたいです。
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三角形はつくるな、ダイヤをつくれ
「三角形はつくるな」と僕は言いました。では、どうしたらいいのか?結論から言うとダイヤをつくればいいという話です。ただ、これだけでは説明が不十分ですので、ダイヤをつくりメリットとは、なぜダイヤなのか、そのダイヤのつくり方とは、ということをここからは説明していこうと思います。まずはダイヤをつくるメリットから。
ダイヤをつくるメリット
ダイヤをつくるメリットはいろいろありますが、まず初めに考えらるのが選択肢の数の違いです。
上、2つの画像を比較してみてください。三角形をつくった場合はボールホルダーから見てパスコースが2つ。ダイヤをつくった場合はパスコースがすべてで3つできあがるのがわかると思います。3つもある選択肢を限定していくのは相手からすれば簡単なことではありません。ボールホルダーからすれば選択肢は多くあった方が当然いいわけで、相手は選択肢が多ければ多いほど限定するのが困難になります。そんな状況を実現することが可能なのが「三角形をつくる」ことではなく、この「ダイヤをつくる」ことだと僕は考えています。
それともう一つダイヤをつくるうえでメリットがあり、それが、スペースの使い方についてです。例えば、三角形の場合、ボールホルダーを中心にサイドに開いてできたスペースを利用したときは、他のポジションの選手がスペースを認知し、ロングランをして初めて利用することができます。ですが、このダイヤの場合は基本的にボールホルダーに対して対角の選手がスペースを使うことになるので、三角形の時に必要としていたスペースを見つけ、ロングランを繰り返すという過程が必要がなくなります。そうなれば、やっていることは結果として変わらないのに、思考と行動が単純化され、非常に効率がいいというわけです。もちろん、場合によっては、ボールホルダーが間のスペースにドリブルで侵入していくのもアリです。「なぜ多くのチームはハイプレスにハマるのか」という記事で紹介しているシーンなんかはまさにその例です。
ただ、サイドの選手が空いたスペースを利用するのは個人的にはあまりおすすめできません。このダイヤを使うメリットとして先ほど選択肢を増やすことができると言いましたが、サイドの選手が入ってきてしまうと、その選択肢が一つ削られてしまうことになるうえに一番狙いたいはずの対角へのパスが味方選手によって塞がれてしまいます。なので、サイドの選手が中へ入るというパターンはできるだけやらない方が無難でしょう。最初の配置でボールホルダーの対角にいる選手がサイドに下りればダイヤをつくることそのものは解決しますが、それではダイヤをつくるのが目的になってしまい、もし片方のサイドを相手DFに切られてしまったら、ダイヤをつくるうえでのメリットを失ってしまいます。それではダイヤができあがっても意味がありません。
今、説明しているダイヤのイメージがつかないという方はビルドアップ時にGKがボールを持った状況をイメージするといいかもしれません。CB2枚がワイドに開き、間にできたスペースをボランチの選手が利用することで、パスコースを生み出す方法です。このようなシーンなんかは相手に選択肢を与えることで対角の選手を使うことができるのでかなり理想的だと僕は考えています。では、なぜ対角の選手が受ける必要があり、スペースを利用することが理想的かと言うと、対角の選手を使った場合というのは、高確率で次のダイヤへと繋げることが可能だからです。例えば、このシーンでボランチの選手がボールを受ければ、両CHとCFとダイヤの関係をつくることができます。なので、この対角へのパスを狙ってあげれば理論上では半無限にパスコースを3つつくりあげることができ、さらに前進することも可能になるということです。そのような状況になれば、相手はプレーを限定しきれないので、常にプレスをかけられない状況が続くことになります。
今回、この記事で僕が言いたいことを簡単に言ってしまうと、このビルドアップ時の状況をピッチのあらゆる場面でつくりだすことができれば、そのビルドアップ時と同じように、よりスムーズに試合を運ぶことができるということです。ですが、そんなことができるのか?という疑問があると思いますので、ここからはダイヤをつくる方法を少しだけ紹介していきます。
ダイヤをつくる方法
ここからはフォーメーションによる盤面で説明していこうと思います。正直ここは誰がボールを持っていたとしてもいいのですが、とりあえず右SBがボールを持った状況を仮定します。4-3-3で考えた場合、右SBが普通にボールを持つとそのままの状況ではサイドで三角形しかできあがりません。むしろ、それが基本だと思います。ですが、こうなるとボールホルダーから見た選択肢は前方に2つ。これでは、ボールホルダーの選択肢が簡単に限定されてしまいます。そんな限られた選択肢を増やすのがダイヤです。では、どうしたらダイヤができあがるのか?そのダイヤをつくる具体的な方法を2つほど今から紹介していきます。
これはどういう状況かというと、右CHがボールホルダーとほぼ平行まで下り、その右CHが元々いたところにできたスペースをCFが利用したという状況です。また、ボールホルダーである右SBは中を見つつ前方を向いているので、中、縦、左と全て選択ができます。だとしたら、その方向にパスコースやスペースをつくってあげればよくて、その結果として、ポジションを取ったときにパスコースが全てで3つできあがりダイヤができたというのがこの形ということです。
このように、CFが元々いたスペースを利用し、左CHがCFへ→左SBがCHへ→左CBが左SBへ→ボランチが左CBへ。というように、スペースを利用することによってできた新たなスペースをさらに利用していくのもおもしろいかもしれません。こうしてあげれば、右SBから見て対角の選手をつかった場合に、右WGがハーフスペースを利用し、右WGが元々いた場所に新たにスペースができあがるので、その新たなスペースを右SBが利用すれば、再びダイヤをつくることができます。
ここでも4-3-3をベースに右SBがボールを持った場合を仮定していきましょう。これは先ほどのシーンに比べると、かなり低い位置でボールを持ち、さらに、右SBは前方ではなく、中を向いているという状況です。
そして、これが上のシーンからボールホルダーを中心にダイヤをつくった状況です。右CBと右WGはボールホルダーに対してほぼ平行をとり、右CHは元々右CBがいたスペースを利用し、パスコースをつくっているという状況になります。この状況も上で説明した状況と位置が違うというだけであって、考え方は同じです。パスコースが3つと中央のスペース。対角を使うことでまた新たなダイヤ(右CB+GK+ボランチ+左CB)ができあがります。
ここでは、2つ紹介しましたが、ダイヤをつくる方法はこれだけではないので、是非、いろいろ思考してみてください。
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マンチェスター シティによるダイヤ
ここまでダイヤをつくるメリットとその方法を僕なりに説明してきましたが、それ本当に可能なの?と思われている方も多いと思います。なので、グアルディオラ監督が率いるマンチェスター シティを元にダイヤについてより現実的な話をここではしていこうと思います。
まずはこの動画。
具体的にどこにダイヤができていたかわかりましたか?あえて言うのなら常にダイヤができていました。では、どこにできていたか、より鮮明に理解していただくために画像を使って少し説明していこうと思います。
画面の関係により、一番初めにGKへバックパスするもダイヤはできていましたが、そのシーンは省いています。なので、これはGKがバックパスを受けたシーンです。
GKからパスを受けたシーン。
右サイドへ展開後、再びダイヤ。
ここで、対角の選手を基点に逆サイドへ展開することになります。
再び左サイドへ展開したシーンです。
ここからはレロイ サネにボールが渡った後のゴール前でのシーン。
そして、レロイ サネが裏へ抜け出し、横パスからのゴール。
ここでは、ボールに関連したわかりやすいダイヤをとりあげましたが、同じシーンで複数のダイヤができているシーンがいくつかあります。
以上の解説を読み終えたうえで、下の動画2つを見てもらいたいです。きっと鮮明にダイヤを確認することができると思います。
まとめ
ヨハン クライフは「サッカーはシンプルだ、しかしシンプルにプレーするのは難しい」と言いましたが、このダイヤはシンプルにプレーをするための一つのヒントになるのではないかと僕は思っています。そのヨハン クライフもかつて、ダイヤの在り方についてはかなりこだわっていましたし、もしかしたら、このような未来がくることをヨハン クライフはあの時すでに知っていたのかもしれません。
僕が、この記事のタイトルでも言っている「三角形をつくるな」という理由が伝わりましたでしょうか。今回、この記事で重要なのは、正直な話、ダイヤをつくることでも三角形をつくらないことでもありません。重要なのは、選択肢を増やし、その過程をよりシンプルにしてあげましょうということです。その結果として、本来は三角形をベースに考えていたところをダイヤとして考えてあげることで選択肢を増やすことができればいいわけです。それに、このダイヤも結局は、最初に考えてもらった「得点を得るための手段」にしかすぎません。サッカーでは得点を得ることこそが目的であり、ドリブルもパスもそのための手段です。
ここまでサッカーやダイヤについていろいろ語ってきましたが、この記事をもとに、新たな視点を提供できたらいいなと思います。是非、ダイヤを、サッカー観戦をするとき、サッカーをプレーするときの一つの参考にしてみてください。
では、また。。。。。
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※三角形の方が効果的なシーンというのも存在しますし、ダイヤを三角形2つという見方もできるので、三角形をつくるなというのは言い過ぎました(笑)