安倍自民大勝でも憲法改正の道のりは遠い

強引に発議をすれば国民から強い反発が起きる

2017年10月27日(金)

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(写真:AFP/アフロ)

 10月22日の衆議院総選挙は、自由民主党が284議席を獲得し、単独で過半数を大幅に上回った。安倍自民党の圧勝だ。

 本来ならば、この選挙は、安倍自民党に対する総括だったはずだ。しかし、今回の勝利は、安倍首相が国民から支持されたからではない。

 安倍内閣の支持率は、一時、調査によっては30%を割り込んでいた。そこから安倍自民党が本質的に変わったと言うわけでもない。投票日直前の10月17、18日に朝日新聞が実施した世論調査でも、安倍首相の続投について「続けてほしい」が34%であったのに対し、「続けてほしいとは思わない」が51%という結果が出ていた。

 風向きが変わったのは、小池百合子氏が「排除の論理」を持ち出した時だ。

 小池氏が希望の党を立ち上げ、自ら代表になると表明した直後、マスメディアは小池一色と化した。安倍首相の存在は、その影に隠れてすっかり霞んでしまったのだった。

 翌日、民進党の前原誠司代表は小池氏と秘密会談を行い、希望の党と民進党は事実上の合流を決めた。前原氏は、小池氏のカリスマ性に乗っかることで、反自民の受け皿となり、自民党に対抗しようとしたわけだ。

 この時、前原氏は当然、民進党の議員全員が受け入れられると考えていた。小池氏も承諾していたはずだ。だから、前原氏は民進党員の前で「名を捨てて、実を取る」と発言したのだ。

 ところがその直後、小池氏が「民進党を全員受け入れる気はない」と言い出した。要するに、リベラルは受け入れないということだ。

 民進党は大混乱に陥った。結果的に枝野幸男氏が立憲民主党を立ち上げ、野党同士が戦うことになったのだった。

 自民党が圧勝した理由は、これだけではない。以前も書いたが、自民党は基本的に保守の立場を取っているが、経済政策ではリベラルだ。一方、野党もリベラルである。共産党をはじめ立憲民主党もアベノミクスを批判していたが、対案を出せなかったのは、結局は同じリベラルだからだ。

 国民の多くは、アベノミクスに満足しているわけではないが、野党が対案を出せないから、仕方なく我慢しているのが実状だ。つまり、自民党の勝利は「消極的支持」に支えられたことが大きいと言える。

 北朝鮮問題も、選挙に大きな影響を与えたと思う。米朝間は緊張が高まっていて、いつ火を噴いてもおかしくない。そのような状況の中、野党はどこも、この問題を全く取りあげなかった。

 その様子を見た国民の多くは、「野党では心許ない。やはり外交に強い安倍自民しかないのではないか」という気持ちを抱いたのだろう。

 以上が、今回の安倍自民大勝の背景である。

 余談だが、選挙が行われた22日の夜、僕はテレビ朝日系の開票速報特別番組「選挙ステーション2017」の司会を務めた。そこで視聴者から「野党が酷すぎる。安倍首相はやりたいことをしっかり形にしてほしい」という意見が寄せられた。

 僕は、「野党が酷すぎるとはどういうことだ」と声を荒げたが、それは単純に、野党のどこかダメなのか具体的に聞きたかっただけであって、視聴者に向けて怒りを露わにしたわけではない。当然、野党をかばっていたわけでもない。選挙結果が気に入らなかったわけでもない。議論が白熱していたから、口調が強くなってしまっただけである。

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「安倍自民大勝でも憲法改正の道のりは遠い」の著者

田原 総一朗

田原 総一朗(たはら・そういちろう)

ジャーナリスト

1934年滋賀県生まれ。早大文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経て、フリーランスのジャーナリストとして独立。「朝まで生テレビ!」「サンデープロジェクト」等のキャスターを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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