英国女性の半分が職場などで性的嫌がらせ被害 BBC調査

Man touching woman's hand at work Image copyright Getty Images

英国女性の半分、男性の2割が職場や教育の場で性的嫌がらせを受けたことがあると、BBCの調査で分かった。

嫌がらせを受けた女性のうち、63%は誰にも報告していないと答えた。被害にあった男性の場合、79%が誰にも言わなかったと答えた。

BBCラジオ5ライブが英世論調査会社ComRes を通して行った調査で、2000人以上が回答した。

BBCラジオ5の調査に回答した英国の成人2031人のうち37%(女性の53%、男性の20%)が、性的嫌がらせ・暴行を受けた経験があると答えた。内容は職場や勉強の場における不適切な言動から、実際の性的暴行まで、多岐にわたった。

さらに回答者の25%以上が、不適切な「ジョーク」や「からかい」の形で嫌がらせを経験したという。また、7人に1人以上が、不適切に体に障られたと答えた。

加えて、加害行動を受けたことがあると答えた10人中1人が、性的に暴行されたことがうかがえる。

男性よりも女性の方が、上司や上級管理職の標的になりやすいという結果も出た(女性の被害は30%、男性の被害は12%)。被害に遭った女性の10人に1人が、職場や勉強の場を去ることになったという。

調査は、米映画プロデューサーのハービー・ワインスティーン氏による性的加害行動の訴えが相次ぎ表面化したのを機に、セクハラ被害体験を共有する動きがソーシャルメディアを通じて拡大した後に実施したもの。

性的嫌がらせや暴力を受けた女性や男性たちは、自分の体験を「Me Too」(私も)というハッシュタグでソーシャルメディア上で共有。その数は、性的加害行動が世界的にいかに深刻な問題となっているかを表している。

この動きに先立ち、女優のアンジェリーナ・ジョリー氏、グウィネス・パルトロー氏、ローズ・マッゴーワン氏をはじめとする20人以上の女性が、ワインスティーン氏から強姦された、あるいは性的暴力の被害に遭ったと名乗り出ていた。

ワインスティーン氏は、性的な関係は全て合意の上でのものだったと主張している。

「下品で不快」

Sarah Killcoyne
Image caption サラ・キルコインさんは学生時代、教師と大学教授から性的暴行を受けた

ケンブリッジ在住のサラ・キルコインさんはBBCニュースに対し、まだ学生の頃に2人の男から性的暴行を受けたと話した。1人目は10代の時の教師で、2人目は大学教授だという。

キルコインさんは、「獲物を追い求めるプレデター(捕食者)はほんの少ししかいない。周りの人たちが、ぜひ止めさせてほしい」と話した。

匿名希望の男性は、女性上司から嫌がらせを受けたと話した。

「上司は常に、僕の外見や服装について言及していた。僕の胸毛を話題にして、女性のどういうところが好きかどんな部分が好きかということを聞いてきた」

「職場のスタッフは主に女性で、みんな笑って済ませていたけれど、僕は下品で不快だと感じていた」

「僕はうつ状態になって自信喪失し、結果として不安神経症で休職するはめになった」

ワインスティーン氏の疑惑が明るみに出てから、多くの著名人がソーシャルメディアで性的暴行の問題を取り上げており、中には自分たちが受けた性的嫌がらせを詳しく語る人もいる。

「恐怖で体が動かなくなった」

労働党のジェス・フィリップス議員やメアリー・クレイ議員も、性的加害行動の被害者たちに声を上げてもらおうと、自分たちの体験を明らかにしている。

フィリップス議員は英夕刊紙ロンドン・イブニング・スタンダードに対し、パーティーで目が覚めると、上司にベルトを外され、ズボンの中に手を入れられそうになっていたと話した。「恐怖で体が動かなくなってしまった」という。

クレイ議員は、わずか7歳のとき、学校の運動場で追いかけてキスをする鬼ごっこをしていた最中に、男子約12人に性的暴行を受けたと明らかにした。

BBC調査に先駆けて、昨年公表された英労働組合会議(TUC)の調査でも、半数以上の女性が職場で性的嫌がらせを受けたが、大半の人は報告しなかったという結果が出ていた。

通報する人は少ない

セクハラ被害に遭っても報告しない理由は様々だ。いやがらせ行為は「微妙」な内容だった、あるいは冗談めかしていたので、あえて報告しないという人は多いと、英エクセター大学のマヌエラ・バレート教授(社会学・集団心理学)はBBCに話した。

しかし、具体例が報道を通じて明らかになれば、被害に遭った人の受け止め方が変化するという。

「自分の体験をより良く理解できるようになり、何がセクハラに相当するのか気づきやすくなる」と教授は言い、さらに報道などで広く注目されることによって、「これは重大な問題だし、これは問題なのだと多くの人が賛同していると認識できるようになる」のだと説明した。

「私も」運動の勢い

活動家のタラナ・バーク氏は10年前、貧しいコミュニティーの性的加害行動や性的暴行、搾取、嫌がらせの被害者たちに「共感を通じて力を与える」ため、最初のMe Too運動を米国で始めた。

バーク氏はBBCラジオ5に対し、性的嫌がらせの扱われ方が今、本格的に変わろうとしているうねりを感じると語った。

「私が見聞きする動きや、世論の支持が高まっている様子からして、勢いが失速するようには思えない」

「究極的には、これが一時的なものではなく、動きになるようにするのが私の目的だ。私たちの声を聞いてもらい、大きな変化を起こすまで、声を上げ続け、現状を揺さぶり、話をし続ける」

(英語記事 'Half of women' sexually harassed at work, says BBC survey

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