仮想通貨の話題が尽きない。
認知度が最も高く流通量も豊富なビットコインは、円建て価格の上昇が続き、10月21日、初めて70万円を突破した。年初から比べると7倍の高騰。資産が数千万円、数億円に達したビットコイン長者が増え、雑誌などで特集を組まれることが少なくない。
さらに運営をめぐって分裂が始まり、8月にはビットコインキャッシュが誕生。続いて10月24日にはビットコインゴールドが生まれた。これでビットコインは3種類。いくら管理されない通貨とはいえ、将来どうなるかという不安が漂う。
一方で、9月中旬、中国が投機的な動きをするビットコインを封じ込めるために「OKコイン」など国内取引所大手を閉鎖に追い込み、価格は一時、暴落した。
10月18日には仮想通貨リップルの取引を仲介する「リップルトレードジャパン」の代表が、顧客から現金をだまし取った疑いで逮捕され、「詐欺の温床」を改めて印象づけた。
「光と影」が錯綜するのが仮想通貨である。
手を出していいかどうかがわからない。というより、仮想通貨とそれを成り立たせているブロックチェーンという技術が、どのようなものかがわからない。そもそも理解する必要があるものなのか――。
そこで、商用インターネットの黎明期からWeb・IT分野の幅広い事業に関わり、現在、フィンテックを推進するカレンシーポート代表でブロックチェーン推進協会副代表幹事を務める杉井靖典氏に、「仮想通貨との付き合い方」を聞いた。
――投資対象として仮想通貨に人気が集まっています。
「理由は簡単。値上がりしているからです。でも、仮想通貨は『火』のようなもの。上手に扱わないとヤケドする。自分で判断できない人が手を出すべきではありません」
――認知度が高まり、人気化するのは業界にとっていいことでは?
「注目され、期待されるのはいいことです。でも、値を上げて儲かるから買う、というのでは話が違う。仮想通貨が発行されるのは、利便性が増し、将来的な価値が見込めるからであり、上がることに意味があるわけではありません」
――意味と意義がある仮想通貨とは?
「例えば、個人的に注目しているのはファクトムです。ブロックチェーン技術を使って、文章の認証や存在証明、電子記録などを残し、その記録を第三者機関に委託せずに証明することが可能になりました。その将来性に投資し、ファクトムを受け取り、値上がりを期待するというのが本来の在り方でしょう」
――わかりやすい例で言えば森友学園でしょうか。官僚たちが、「記録が残っていない」「破棄した」などと逃げました。
「バカバカしい話です。ファクトムでなくともブロックチェーンの持つ特性があれば、あんなごまかしを許さない。ブロックチェーンの特性は、正しい記録しかできず、変更できず、消せず、改ざんできず、壊れても自動修復すること。しかも、情報はネットワークで共有され、失われない」
――そうした将来性がありながら、詐欺が横行したり、国家が流通に制限を加えたりと、不安を感じる部分が少なくありません。
「詐欺については、円やドルなどでも起きているわけで、仮想通貨だから発生するというものではありません。『理解できないものには投資しない』というのが原則だと思います。国家介入については、法的規制がないから介入するわけで、どんな形であれ日本のように規制を導入したほうがいい」
――今年4月に施行された改正資金決済法のことでしょうか。
「そうです。法的規制があれば、仮想通貨とは何かの概念がハッキリします。つまりフェアウエイが決まり、何が認められ、何が認められないかの白黒がつけられるようになります。また、取引所が登録性となり、本人確認や資産の分別管理や外部監査など、投資家保護も徹底されました。
日本が唯一、といっていいほど進んでおり、だから仮想通貨の流通量も多い。諸外国ではそうしたルールがないから、中国のようにいきなり発行禁止や流通制限となるわけで、世界共通ではなくとも、各国、各州の法的規制が必要だと思います」