10月22日の衆議院選の結果は、概ね事前の世論調査通りの結果となった。自公を中心とした改憲勢力は全体の3分の2を上回る議席数を獲得した。
ただ、驚くべきは、前回の衆院選での歴史的大勝後ということもあり、さすがに議席数を減らすと思われていた自民党が、解散前の議席数を維持したことであった。公明党がわずかに議席を減らしたものの、政権与党トータルでは、ダメージはほぼ皆無だったと考えていいだろう。
一方、野党は、小池百合子東京都知事が率いる希望の党の失速が目立った。代わって、選挙戦直前に「排除」された「日本的リベラル議員」が結集した立憲民主党が躍進した。そして、立憲民主党との選挙協力を優先させた共産党の議席数は大きく減少した。
メディアではあまり強調されなかったが、今回の衆議院選の結果は、安倍政権の政策運営について国民が信認を与えた結果となったと考えられる。
逆にメディアで取り上げられることが多かった立憲民主党の躍進は、与党勢力が選挙前とほとんど変化がなかったことを考えると、野党支持層を食い合っただけの結果となった。つまり、単なる反安倍勢力間での議席の再配分に過ぎなかったわけである。
メディアは立憲民主党の躍進を、ツイッターなどのSNSを有効活用した「新しい選挙戦術」の賜物のように報じていたが、出口調査等によれば、立憲民主党を支持した層は団塊世代以上の高齢者層であり、SNSに対するリテラシーは相対的に低い階層であったことが明らかにされている。SNSが有効な選挙戦略のツールであるならば、若年層の支持率がもっと高かったのではなかろうか。
以上のような結果から、与党に対する支持が高かった20代、30代の若年層(及び中年層)に対して、リベラル系の評論家の何人かは、「勉強不足」との批判をしていたが、これは誤りである。若年層の政権与党支持は、すでに指摘されている通り、安倍政権の経済政策によって、雇用環境が予想をはるかに上回るペースで改善した、という実績ゆえの結果であることは明らかであろう。
「アベノミクスでは賃金上昇が実現できないので効果がない」という批判もあるが、それがたとえ非正規社員であっても、無業者、失業者が就職できたこと、また、非正規社員の、より雇用環境の安定した正規社員への転換によって、若年層の生活は旧民主党政権時とは比べ物にならないくらい安定したのは確実である。
したがって、若年層の多くにとって、現政権に「No!」を突きつける理由はそれほど多くないはずである。
現状の日本経済の動向をみると、2014年4月の消費税率引き上げ以降、消費の低迷は依然として続いており、家計の経済活動はなかなか停滞から抜け出せないが、企業活動は徐々に活性化している。
全体的にはまだまだだが、日銀短観の「販売価格判断DI」の上昇にみられるように、将来のデフレ脱却による事業環境のさらなる好転を想定し、雇用の拡大に加え、設備投資を再開させる企業が増え始めている(もちろん、これには好調な世界景気による輸出拡大も寄与していると思われる)。
以前、当コラムで指摘したように(5月25日『日本経済は本当に「完全雇用」に近づいているのか』)、筆者は、デフレ脱却後の日本の自然失業率は2%台前半であると考えているので、日本の雇用環境はまだまだ改善の余地があると考える。
また、現在の日本は、米国同様、人口要因等を加味しても労働参加率が低い(ただし、2013年に底打ち反転している)。これは、求職活動をあきらめている「無業者」がまだまだ多く存在することを意味している。デフレ脱却プロセスが進行するとともに、この「無業者」がさらに減少していくことが期待できる。