高い知能は心理学的・生理学的な過度激動(overexcitability)のリスク因子であり、過度激動の影響として高い知能指数と不安神経症・うつ病とに相関があることが発見された。
これはアメリカ、ピッツァー大学の神経科学者、ルース・カルピンスキー率いる研究チームがMENSA会員3715名を対象にその心の健康を調査して得られた研究である。
本研究は「才能ある芸術家の創作意欲を掻き立てる鋭敏な意識は、同時に深いうつ状態に引きずり込む可能性がある」ことを示唆している。
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これは非常に興味深い研究で、サンプルサイズも十分であるが、いくつか注意すべき点もある。
第一に、IQが知能の指標であるのか明らかではない。所得が高い人々ほどIQテストで高いスコアをとる傾向があるし、さらにIQテストは勉強することができる。つまりIQテストで判定しているものは、学習可能なスキルや知識であり、そのスキルや知識を習得する能力ではないかもしれないということだ。
第二に、MENSAの会員であるということは、思考力や世界における立場に関して内在する不安定性の指標かもしれず、ゆえにうつ病や不安神経症への傾向を反映しているのかもしれない。この場合、今回の発見は高い知能ではなく、MENSA会員と精神疾患との相関関係が発見されたに過ぎないことになる。
第三に、サンプルはeメールで送信された調査への参加依頼に応じたMENSA会員であり、本結果は精神疾患を開示してもかまわないという意思と高IQ(あるいはMENSA会員)との相関関係でしかないのかもしれない。
最後に、米国では、医療的ケアを利用できることは所得と強い相関がある。すなわち、経済的に豊かであるほど、不調の原因が臨床的な病気に起因すると医師から診断される可能性が高くなるということである。
高IQは所得と相関があり、今回のサンプルの所得分布も高所得者に偏っている(年収約1000万円以上が41.7パーセント、760万以上~1000万円未満が16.9パーセント、510万~750万円が20.1パーセント、260万~500万円が14.9パーセント、250万円以下が3.9パーセント)。したがって、相関は所得と精神疾患の診断とのものかもしれない。
ここからは内省的性質とうつ病・不安神経症との関係らしき匂いも感じられる。
うつ病と不安神経症の症状は深い内省によって特徴付けられるからだ(つまり「なぜあんなことをやってしまった?」「なぜ連中はこんなことをやるんだ?」「失敗したらどうしよう?」といった思考である。皮肉にも、そこから抜け出すにも内省”認知行動療法”が効果を発揮する)。
おそらくは内省と知能は関連があるのではないだろうか。偉大な芸術家や思想家は膨大な時間を費やして思考に思考を重ねて生きた人たちだ。いずれにせよ、今後もさらに研究が必要だとのことだ。
via:sciencedirect / neurosciencenews / boingboing/ translated by hiroching / edited by parumo
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コメント
1.
2.
3. 匿名処理班
つまり、
知能が高い→考えることが多い(もしくは行動力がある)→その分懸念点も多く出てくる→不安要素→鬱
ってことかな?。なんというか回りくどい研究結果に見えるけど、いたって自然の摂理な気がする。
そりゃ何時もひらひら~っと生きてる人間が悩みや懸念を見つけても「まいっか」で済ませるだろうし…(笑)
4.
5. 匿名処里班
逆に人として強く生きていくに高い知能指数なんぞ大して必要ない事も証明
6.