Photo: ガンダムGPB列伝第41話
『ガンダム ゼルメガス』


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前回のあらすじ↓

【ガンプラ狩り】に弟のガンプラが取られたと言う
《ハタキ》の話を聞いたフクナガは、
訳あって【取り返しに行けない】ハタキの代わりに、
【取り返す】という約束を
彼と交わしてコンビニを去る…
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ハタキとコンビニで別れてフクナガは1人、
街中の表通りを抜けて裏路地をへと歩く。

つい先程、ハタキから教えて貰った
《ヨシカゲ》が居る場所へと、
フクナガは向かっている最中なのであった。

街中の表通りとは打って変わって、
裏路地は薄暗く、
じめじめとした空間が多い所であった。

『…最近の若い奴は、根性がねぇんだな…
自分の弟がやられたのに、
【取り返しに行く】つー根性も見せねぇとは…』
…と、ブツブツ文句を垂れるフクナガは、
ハタキに言われた通りの道筋を辿って、
曲がり角に差し掛かったその瞬間ッ!!

『おい……何してやがんだ?』

『…ファッ!?』

フクナガよりも背丈の大きな巨漢が、
いつの間にか背後に立っていたのだ!!

慌ててフクナガは戦闘体制をとるが、
バキッ!!…と顔面にパンチを
1発食らってしまい、すっかり伸びてしまった。

『他愛もねぇ…こんなモヤシ野郎…』

ヒョイ…と巨漢の肩に担がれたフクナガは
気を失ったまま、
別の場所へと連れていかれてしまった…

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〈フクナガや…フクナガや…〉

…と、川を挟んで、
老婆がフクナガに向けて声掛けをしている。

〈あれは…婆ちゃん…どうして〉
と、その場に立ち尽くし呆然と
婆ちゃんを見つめるフクナガ。

まさか…有り得ない…

俺の婆ちゃんはとっくの昔に死んでるはずなのに…

〈あんたは、まだ来ちゃ駄目だって…
…つーか身体鍛えねぇから、
あんな奴に1発でやられちゃうんだよ〉
と、眉間に皺を寄せて、婆ちゃんは言う…

〈…婆ちゃん、ここ何処よ?〉

〈ここ?【三途の川】じゃけぇw
若いもんが来るにゃまだ早ぇぞ?
もちっと下界で楽しんで来なさい〉

と、笑顔でフクナガに答えた婆ちゃんは、
何処からとも無く杖を取り出して、
フクナガの足元に穴を作った。

不意に足元に穴を作られたフクナガは、
ストーン!!…と、そのまま落ちていった…

ーーーーーーーーーーーーーー

『…はっ!!ここは!?』

フクナガは目を覚ますと、
見覚えの無い場所に身を置いていた。

薄暗くて周りが良く見えない。

鼻に衝く錆び付いた臭いからして、
どうやら製鉄所の様な場所に居るようだ。

フクナガは起き上がろうとしたが、
手足は荒い縄のような物で
縛られており、動かす事は困難であった。

…次第に目が慣れてきたフクナガは、
目線を奥の方へとやる。

そこには、幾つもの量のガンプラが、
とても綺麗に並べられていた。

『兄貴〜!!買ってきましたぜ〜!!』
と、元気よく扉を開けて、
先程の巨漢が袋を下げて入って来る。

フクナガは咄嗟に、
目を瞑ってだらりと腕を垂らして、
気絶をしているフリをし、
すぐ隣を通る巨漢をやり過ごした。

『おう…ご苦労さん』
…と、声がしたが生憎気絶のフリをしている
最中のフクナガは声の主の顔が見れない。

気絶したフリをしながら、
フクナガは彼らの会話に聞き耳をたてた。

『兄貴、言われた物の《焼き鯖》っす』

『…《焼き鯖》…?
…俺が頼んだのは《焼きそば》…』

『……アレ?』

『まぁ…間違いは誰にでもあるよな…
…んで、白飯は?』

『…それ単品ッス』

『…馬鹿かオメッ!!
《焼き鯖》単品でどう食えって言うんだよ!?』

『だって兄貴が《焼き鯖》って…』

『《焼きそば》だッ!!』

(…阿呆な奴らだ…)
…と、フクナガはフフッ…と、心の中で笑う。

しかし、このままじっとしているのも何なので、
フクナガは手近にあった
ガラスの破片を使って、
腕を拘束している縄を切って外そうと試みた。

…がしかし…

(う…上手く切れね〜ッ!!)

見た目は子供、頭脳は大人なアニメの主人公の様に、
上手く縄を切ることが出来なかった。

縄を相手にフクナガは悪戦苦闘していると、
奥でまた彼らの会話を耳に挟んだ。

『…にしても、沢山集まりましたね〜…ガンプラ』

『あぁ、こんだけの量のガンプラを集めりゃ、
あの人との約束も達成出来ただろう』

(あの人…一体裏で誰が…?)

その時!!
ブチッ!!…と腕を拘束していた縄が切れた。

(よし!!これで足の縄を解ける!!)

…と、続けて足を拘束していた縄も手を使って解く。

手足が自由になったので、
これで逃げる事が出来る!!
…と、フクナガは思い掛けたが、
ここに来た本来の目的を改めて思い出した。

【金髪リーゼントの弟のガンプラを取り返さねば】

(しかし…あそこには《2人》も
見張ってやがる…一体どうすりゃ…)

ここでフクナガは咄嗟にポケットに手を入れて、
中に入っていた物を取り出す。

…中に入っていたのは…《小銭》。

(こいつを使って…えい!!)
…と、フクナガは小銭を1つ、
出来るだけ遠くに放り投げる。

チャリーン!!…と、小銭の落ちる音が
辺りにこだまして、奥にいる2人が反応する。

『兄貴ッ!!何故か小銭の落ちる音が!?』

『誰か来やがったな…探せ!!』

音のする方へと、2人が行ったのを確認して、
フクナガはすぐさま
ガンプラが並べられている場所へと行く。

(さっさと取られたガンプラを取り返して、
ここからおさらばするぜ!!)
…と、ガンプラが置いてある部屋に
辿り着いたフクナガは
大量のガンプラを目の前に、
己のとんでもないミスに気がついた!!

【一体どれが取られたガンプラなのか!?】

(ちっ…しょーがねぇ!!とりあえず
適当に幾つか持っていくしかねぇ!!)

と、手当り次第に置かれているガンプラを、
自身のリュックサックに詰め込んで、
戻ってくるあの2人の足音を背に、
製鉄所から飛び出すように逃げ出した!!

『うぉぉぉ〜ッ!!走れぇぇぇ〜ッ!!俺ッ!!』

その時のフクナガの走りは…
恐らく今年一番の全力疾走であったという…

ーーーーーーーーーーーーーー

ガンプラが置かれた部屋に戻った2人は、
何体か無くなっている事に気がつき、戦慄する。

『あ…兄貴ッ!!や…やられました!!
ガンプラが何体か奪われてるッ!!』

『ちっ…クソがッ!!
…よりによって奪われたのが最悪の機体だ…
もし…アレが取り返せなければ…』

『取り返せなければ…?』
ごくり…と、生唾を飲み込んで、
その返答を待つ巨漢。

『俺たちは…消されるぞ…《ヨシカゲ》に…』

『ひ…ひぃぃぃ…』
…と、青ざめる巨漢。

『何としてでも探すんだ…
《ガンダム ゼルメガス》を!!』
和ノ国 fukunagaPublic
ガンダムGPB列伝第41話 『ガンダム ゼルメガス』 ーーーーーーーーーーーーーー 前回のあらすじ↓ 【ガンプラ狩り】に弟のガンプラが取られたと言う 《ハタキ》の話を聞いたフクナガは、 訳あって【取り返しに行けない】ハタキの代わりに、 【取り返す】という約束を 彼と交わしてコンビニを去る… ーーーーーーーーーーーーーー ハタキとコンビニで別れてフクナガは1人、 街中の表通りを抜けて裏路地をへと歩く。 つい先程、ハタキから教えて貰った 《ヨシカゲ》が居る場所へと、 フクナガは向かっている最中なのであった。 街中の表通りとは打って変わって、 裏路地は薄暗く、 じめじめとした空間が多い所であった。 『…最近の若い奴は、根性がねぇんだな… 自分の弟がやられたのに、 【取り返しに行く】つー根性も見せねぇとは…』 …と、ブツブツ文句を垂れるフクナガは、 ハタキに言われた通りの道筋を辿って、 曲がり角に差し掛かったその瞬間ッ!! 『おい……何してやがんだ?』 『…ファッ!?』 フクナガよりも背丈の大きな巨漢が、 いつの間にか背後に立っていたのだ!! 慌ててフクナガは戦闘体制をとるが、 バキッ!!…と顔面にパンチを 1発食らってしまい、すっかり伸びてしまった。 『他愛もねぇ…こんなモヤシ野郎…』 ヒョイ…と巨漢の肩に担がれたフクナガは 気を失ったまま、 別の場所へと連れていかれてしまった… ーーーーーーーーーーーーーー 〈フクナガや…フクナガや…〉 …と、川を挟んで、 老婆がフクナガに向けて声掛けをしている。 〈あれは…婆ちゃん…どうして〉 と、その場に立ち尽くし呆然と 婆ちゃんを見つめるフクナガ。 まさか…有り得ない… 俺の婆ちゃんはとっくの昔に死んでるはずなのに… 〈あんたは、まだ来ちゃ駄目だって… …つーか身体鍛えねぇから、 あんな奴に1発でやられちゃうんだよ〉 と、眉間に皺を寄せて、婆ちゃんは言う… 〈…婆ちゃん、ここ何処よ?〉 〈ここ?【三途の川】じゃけぇw 若いもんが来るにゃまだ早ぇぞ? もちっと下界で楽しんで来なさい〉 と、笑顔でフクナガに答えた婆ちゃんは、 何処からとも無く杖を取り出して、 フクナガの足元に穴を作った。 不意に足元に穴を作られたフクナガは、 ストーン!!…と、そのまま落ちていった… ーーーーーーーーーーーーーー 『…はっ!!ここは!?』 フクナガは目を覚ますと、 見覚えの無い場所に身を置いていた。 薄暗くて周りが良く見えない。 鼻に衝く錆び付いた臭いからして、 どうやら製鉄所の様な場所に居るようだ。 フクナガは起き上がろうとしたが、 手足は荒い縄のような物で 縛られており、動かす事は困難であった。 …次第に目が慣れてきたフクナガは、 目線を奥の方へとやる。 そこには、幾つもの量のガンプラが、 とても綺麗に並べられていた。 『兄貴〜!!買ってきましたぜ〜!!』 と、元気よく扉を開けて、 先程の巨漢が袋を下げて入って来る。 フクナガは咄嗟に、 目を瞑ってだらりと腕を垂らして、 気絶をしているフリをし、 すぐ隣を通る巨漢をやり過ごした。 『おう…ご苦労さん』 …と、声がしたが生憎気絶のフリをしている 最中のフクナガは声の主の顔が見れない。 気絶したフリをしながら、 フクナガは彼らの会話に聞き耳をたてた。 『兄貴、言われた物の《焼き鯖》っす』 『…《焼き鯖》…? …俺が頼んだのは《焼きそば》…』 『……アレ?』 『まぁ…間違いは誰にでもあるよな… …んで、白飯は?』 『…それ単品ッス』 『…馬鹿かオメッ!! 《焼き鯖》単品でどう食えって言うんだよ!?』 『だって兄貴が《焼き鯖》って…』 『《焼きそば》だッ!!』 (…阿呆な奴らだ…) …と、フクナガはフフッ…と、心の中で笑う。 しかし、このままじっとしているのも何なので、 フクナガは手近にあった ガラスの破片を使って、 腕を拘束している縄を切って外そうと試みた。 …がしかし… (う…上手く切れね〜ッ!!) 見た目は子供、頭脳は大人なアニメの主人公の様に、 上手く縄を切ることが出来なかった。 縄を相手にフクナガは悪戦苦闘していると、 奥でまた彼らの会話を耳に挟んだ。 『…にしても、沢山集まりましたね〜…ガンプラ』 『あぁ、こんだけの量のガンプラを集めりゃ、 あの人との約束も達成出来ただろう』 (あの人…一体裏で誰が…?) その時!! ブチッ!!…と腕を拘束していた縄が切れた。 (よし!!これで足の縄を解ける!!) …と、続けて足を拘束していた縄も手を使って解く。 手足が自由になったので、 これで逃げる事が出来る!! …と、フクナガは思い掛けたが、 ここに来た本来の目的を改めて思い出した。 【金髪リーゼントの弟のガンプラを取り返さねば】 (しかし…あそこには《2人》も 見張ってやがる…一体どうすりゃ…) ここでフクナガは咄嗟にポケットに手を入れて、 中に入っていた物を取り出す。 …中に入っていたのは…《小銭》。 (こいつを使って…えい!!) …と、フクナガは小銭を1つ、 出来るだけ遠くに放り投げる。 チャリーン!!…と、小銭の落ちる音が 辺りにこだまして、奥にいる2人が反応する。 『兄貴ッ!!何故か小銭の落ちる音が!?』 『誰か来やがったな…探せ!!』 音のする方へと、2人が行ったのを確認して、 フクナガはすぐさま ガンプラが並べられている場所へと行く。 (さっさと取られたガンプラを取り返して、 ここからおさらばするぜ!!) …と、ガンプラが置いてある部屋に 辿り着いたフクナガは 大量のガンプラを目の前に、 己のとんでもないミスに気がついた!! 【一体どれが取られたガンプラなのか!?】 (ちっ…しょーがねぇ!!とりあえず 適当に幾つか持っていくしかねぇ!!) と、手当り次第に置かれているガンプラを、 自身のリュックサックに詰め込んで、 戻ってくるあの2人の足音を背に、 製鉄所から飛び出すように逃げ出した!! 『うぉぉぉ〜ッ!!走れぇぇぇ〜ッ!!俺ッ!!』 その時のフクナガの走りは… 恐らく今年一番の全力疾走であったという… ーーーーーーーーーーーーーー ガンプラが置かれた部屋に戻った2人は、 何体か無くなっている事に気がつき、戦慄する。 『あ…兄貴ッ!!や…やられました!! ガンプラが何体か奪われてるッ!!』 『ちっ…クソがッ!! …よりによって奪われたのが最悪の機体だ… もし…アレが取り返せなければ…』 『取り返せなければ…?』 ごくり…と、生唾を飲み込んで、 その返答を待つ巨漢。 『俺たちは…消されるぞ…《ヨシカゲ》に…』 『ひ…ひぃぃぃ…』 …と、青ざめる巨漢。 『何としてでも探すんだ… 《ガンダム ゼルメガス》を!!』