中国新指導部が発足 「習政権」長期化の可能性強まる

中国新指導部が発足 「習政権」長期化の可能性強まる
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中国共産党の新しい最高指導部の7人が25日に選出され、習近平国家主席が党のトップの総書記に正式に再選されたほか、李克強首相も再選されました。しかし、新しく選出された5人の中には、次の世代のリーダーと目される若手の幹部は登用されず、習主席が長期にわたって最高指導者にとどまる可能性が強まっています。
5年に一度の中国共産党大会の翌日の25日、最高指導部を選出する共産党の中央委員会総会が開かれ、習近平国家主席を含む新しい最高指導部の7人が選出されました。

新たな最高指導部は、再選された習主席と李首相のほか、5年前から党の要職に就き習主席の側近として仕えてきた栗戦書氏、経済担当の副首相を務めアメリカとの貿易交渉などを行ってきた汪洋氏、政策ブレーンとして習主席を支えてきた王滬寧氏、人事を取りしきる党の中央組織部長として習主席の基盤固めに尽力した趙楽際氏、そして、かつて習主席が上海市のトップを務めた際に部下として仕えたこともある韓正氏が選ばれました。

総会終了後、習主席は最高指導部のメンバーとともに内外の記者団の前に姿を現し、「われわれは必ず職務を果たし、勤勉に働き、使命に恥じず、期待を裏切らないようにしていく」などと述べ、2期目に向けた決意を示しました。

当初、新しい5人の中には重慶市トップの陳敏爾氏と広東省トップの胡春華氏のともに50代の2人が選ばれる可能性も指摘されていましたが、結局、2人とも見送られ、これまで円滑な指導者の交代のため事前に次の世代のリーダーと目される若手幹部を最高指導部入りさせるという長く続いてきたパターンは踏襲されませんでした。

このほか、7人の政治局常務委員を含む25人の政治局委員も25日に選出されましたが、地方時代の元部下など習主席の信頼が厚い人物が半数以上を占めました。

習主席は、大きな権力を集中させる形で2期目の指導部を発足させ、5年の任期のあとも最高指導者としてとどまる可能性が強まっています。

新指導部の担務

最高指導部に新しく選ばれた政治局常務委員のうち、栗戦書氏は序列3位であることから、来年3月の全人代=全国人民代表大会で、トップの委員長に選出されることが内定したものと見られます。

また序列4位の汪洋氏は同様に来年3月、全人代と同時に開かれる国政の助言機関、政治協商会議トップの主席に就任すると見られます。汪氏は長く経済を担当してきたため、政治協商会議は意外な担務とも受け止められています。

また序列5位の王滬寧氏は25日の中央委員会総会で常務委員と同時に党内の事務全般を統括する中央書記処のトップに、序列6位の趙楽際氏は、規律検査委員会のトップに選出され、王岐山氏のあとを継いで反腐敗運動を取りしきることになります。また序列7位の韓正氏は経済担当の筆頭副首相に就くと見られます。

政治局トップ25人も「習近平派」が多数

中国共産党の指導部で、最高指導部の政治局常務委員7人を含むトップ25人の政治局委員には、習近平国家主席と関係が近いとされ、「習近平派」とも言われるメンバーが多く選ばれ、習主席への権力の集中が鮮明になっています。

このうち、習主席が浙江省のトップを務めていた当時の部下で、昇進の早さから注目を集めていた重慶市トップの陳敏爾氏は、今回、最高指導部には入りませんでしたが政治局委員に昇格しています。

習主席が福建省や浙江省で勤務した当時の部下では、陳氏のほかに、北京市トップの蔡奇氏や、江蘇省トップの李強氏、それに、党の中央宣伝部の副部長を務める黄坤明氏も新たに政治局委員に昇格しました。

また、習氏が上海市でトップを務めた当時の部下では、習主席を補佐する中央弁公庁で副主任を務める丁薛祥氏などが抜てきされています。

このほか、習主席の学生時代からの知り合いで、党の人事を取りしきる中央組織部の副部長を務める陳希氏や、1期目の習近平指導部で経済政策をつかさどる党の中央財経指導グループの主任を務めた劉鶴氏なども昇格しています。

こうした習主席の信頼が厚い人物が25人の政治局委員のうち半数以上を占め、今後、習近平指導部の中核として党や政府の要職に就くものと見られています。

外交重視姿勢も

今回の党大会では、指導部に当たる政治局委員に、外交を統括する楊潔※チ国務委員が昇格しました。外交担当の国務委員が、政治局委員になるのは、江沢民元国家主席の下2002年まで政治局委員を務めた銭其※シン氏以来で、習近平指導部が外交を重視する姿勢を示した人事だと受け止められています。

今後の外交方針について、中国外務省の耿爽報道官は25日の記者会見で「中国は『習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想』の指導の下、平和共存の原則を基礎とすることを確固たる方針とし、各国と友好的な協力関係を発展させていく」と述べ、習近平国家主席の指導理念に基づいて、外交を進めていく姿勢を強調しました。

※「チ」は竹かんむりに褫のつくり
※「シン」は王へんに深のつくり

軍制服組トップにも習主席に近いとされる人物

25日に開かれた中国共産党中央委員会の総会で、中国軍の制服組トップである中央軍事委員会の副主席2人のうちの1人に、習近平主席と関係が深いとされる張又侠氏が新しく選出されたほか、これまで5年間、副主席を務めてきた空軍出身の許其亮氏が再選されました。

張氏の軍歴以外の経歴は公表されていませんが、習主席同様、かつて革命に参加した軍幹部の子息、いわゆる紅二代の1人で、張氏の父親と習主席の父親の習仲勲元副首相は戦友と伝えられており、習主席の信頼が厚いと見られます。
張氏は陸軍出身で、これまで宇宙開発や軍備を担当する装備発展部のトップを務めていました。

軍は、ここ数年進めてきた機構改革や軍幹部の汚職の摘発を通して、習主席と接点があったとされる幹部が重要ポストに多く登用され、習主席が強い実権を握っており、中央軍事委員会の主席もかねる習主席のもとで、「今世紀半ばまでに世界一流の軍隊を目指す」とする中国軍の今後の動向が注目されています。

「間違いなく5年後もトップ」

中国の新しい最高指導部について、長年、中国政治を研究してきた東京大学大学院の高原明生教授は「習近平国家主席は間違いなく5年後も引き続き党のトップに立つ」と述べ、習近平国家主席は5年後に開かれる次の党大会の後に引退せず、中国のトップとしての権力を保持し続けるだろうという見方を示しました。

その理由として、高原教授は、新しい最高指導部に次の世代のリーダー候補が選出されなかった点を挙げ、「後継者が現れなかった点が大事なポイントです。今回の党大会を通じて習主席の1強体制がさらに強化され、少なくとも第3期までトップを務めるという意気込みを感じた」と指摘していました。

また、地方で勤務していたときのみずからが信頼を置く人物を最高指導部のメンバーに登用した点については「いちばんコアの部分では習主席の権力が強化されたのは間違いない。習近平思想が党のイデオロギーにもなったので、さらなる権威の引き上げ、権力の集中が進む」と述べました。

一方、習主席が長く中国の最高指導者であり続けるための課題については、「いまだ、権力強化を考える際に信頼できる有能な部下が足りないのが大きな問題だ。政治的な安定のためには経済運営や社会の安定がうまくいくかどうかも重要で、この5年間の業績が厳しく問われることになる」と分析していました。

官房長官「戦略的互恵関係の下で懸案処理」

菅官房長官は午後の記者会見で、「新指導部に選出された方々に対し祝意を申し上げたい。ことしの日中国交正常化45周年に続き、来年は日中平和友好条約締結40周年になる。新指導部との間でも、引き続き戦略的互恵関係のもとで懸案を適切に処理しながらあらゆる分野で協力や国民交流を推し進めたい」と述べました。

そして、菅官房長官は、日本、中国、韓国の3か国による首脳会議の年内開催を目指して引き続き調整にあたる考えを示したうえで「大局的な観点からさらなる関係改善を進めていきたい」と述べました。

中国新指導部が発足 「習政権」長期化の可能性強まる

中国共産党の新しい最高指導部の7人が25日に選出され、習近平国家主席が党のトップの総書記に正式に再選されたほか、李克強首相も再選されました。しかし、新しく選出された5人の中には、次の世代のリーダーと目される若手の幹部は登用されず、習主席が長期にわたって最高指導者にとどまる可能性が強まっています。

5年に一度の中国共産党大会の翌日の25日、最高指導部を選出する共産党の中央委員会総会が開かれ、習近平国家主席を含む新しい最高指導部の7人が選出されました。

新たな最高指導部は、再選された習主席と李首相のほか、5年前から党の要職に就き習主席の側近として仕えてきた栗戦書氏、経済担当の副首相を務めアメリカとの貿易交渉などを行ってきた汪洋氏、政策ブレーンとして習主席を支えてきた王滬寧氏、人事を取りしきる党の中央組織部長として習主席の基盤固めに尽力した趙楽際氏、そして、かつて習主席が上海市のトップを務めた際に部下として仕えたこともある韓正氏が選ばれました。

総会終了後、習主席は最高指導部のメンバーとともに内外の記者団の前に姿を現し、「われわれは必ず職務を果たし、勤勉に働き、使命に恥じず、期待を裏切らないようにしていく」などと述べ、2期目に向けた決意を示しました。

当初、新しい5人の中には重慶市トップの陳敏爾氏と広東省トップの胡春華氏のともに50代の2人が選ばれる可能性も指摘されていましたが、結局、2人とも見送られ、これまで円滑な指導者の交代のため事前に次の世代のリーダーと目される若手幹部を最高指導部入りさせるという長く続いてきたパターンは踏襲されませんでした。

このほか、7人の政治局常務委員を含む25人の政治局委員も25日に選出されましたが、地方時代の元部下など習主席の信頼が厚い人物が半数以上を占めました。

習主席は、大きな権力を集中させる形で2期目の指導部を発足させ、5年の任期のあとも最高指導者としてとどまる可能性が強まっています。

新指導部の担務

最高指導部に新しく選ばれた政治局常務委員のうち、栗戦書氏は序列3位であることから、来年3月の全人代=全国人民代表大会で、トップの委員長に選出されることが内定したものと見られます。

また序列4位の汪洋氏は同様に来年3月、全人代と同時に開かれる国政の助言機関、政治協商会議トップの主席に就任すると見られます。汪氏は長く経済を担当してきたため、政治協商会議は意外な担務とも受け止められています。

また序列5位の王滬寧氏は25日の中央委員会総会で常務委員と同時に党内の事務全般を統括する中央書記処のトップに、序列6位の趙楽際氏は、規律検査委員会のトップに選出され、王岐山氏のあとを継いで反腐敗運動を取りしきることになります。また序列7位の韓正氏は経済担当の筆頭副首相に就くと見られます。

政治局トップ25人も「習近平派」が多数

中国共産党の指導部で、最高指導部の政治局常務委員7人を含むトップ25人の政治局委員には、習近平国家主席と関係が近いとされ、「習近平派」とも言われるメンバーが多く選ばれ、習主席への権力の集中が鮮明になっています。

このうち、習主席が浙江省のトップを務めていた当時の部下で、昇進の早さから注目を集めていた重慶市トップの陳敏爾氏は、今回、最高指導部には入りませんでしたが政治局委員に昇格しています。

習主席が福建省や浙江省で勤務した当時の部下では、陳氏のほかに、北京市トップの蔡奇氏や、江蘇省トップの李強氏、それに、党の中央宣伝部の副部長を務める黄坤明氏も新たに政治局委員に昇格しました。

また、習氏が上海市でトップを務めた当時の部下では、習主席を補佐する中央弁公庁で副主任を務める丁薛祥氏などが抜てきされています。

このほか、習主席の学生時代からの知り合いで、党の人事を取りしきる中央組織部の副部長を務める陳希氏や、1期目の習近平指導部で経済政策をつかさどる党の中央財経指導グループの主任を務めた劉鶴氏なども昇格しています。

こうした習主席の信頼が厚い人物が25人の政治局委員のうち半数以上を占め、今後、習近平指導部の中核として党や政府の要職に就くものと見られています。

外交重視姿勢も

今回の党大会では、指導部に当たる政治局委員に、外交を統括する楊潔※チ国務委員が昇格しました。外交担当の国務委員が、政治局委員になるのは、江沢民元国家主席の下2002年まで政治局委員を務めた銭其※シン氏以来で、習近平指導部が外交を重視する姿勢を示した人事だと受け止められています。

今後の外交方針について、中国外務省の耿爽報道官は25日の記者会見で「中国は『習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想』の指導の下、平和共存の原則を基礎とすることを確固たる方針とし、各国と友好的な協力関係を発展させていく」と述べ、習近平国家主席の指導理念に基づいて、外交を進めていく姿勢を強調しました。

※「チ」は竹かんむりに褫のつくり
※「シン」は王へんに深のつくり

軍制服組トップにも習主席に近いとされる人物

25日に開かれた中国共産党中央委員会の総会で、中国軍の制服組トップである中央軍事委員会の副主席2人のうちの1人に、習近平主席と関係が深いとされる張又侠氏が新しく選出されたほか、これまで5年間、副主席を務めてきた空軍出身の許其亮氏が再選されました。

張氏の軍歴以外の経歴は公表されていませんが、習主席同様、かつて革命に参加した軍幹部の子息、いわゆる紅二代の1人で、張氏の父親と習主席の父親の習仲勲元副首相は戦友と伝えられており、習主席の信頼が厚いと見られます。
張氏は陸軍出身で、これまで宇宙開発や軍備を担当する装備発展部のトップを務めていました。

軍は、ここ数年進めてきた機構改革や軍幹部の汚職の摘発を通して、習主席と接点があったとされる幹部が重要ポストに多く登用され、習主席が強い実権を握っており、中央軍事委員会の主席もかねる習主席のもとで、「今世紀半ばまでに世界一流の軍隊を目指す」とする中国軍の今後の動向が注目されています。

「間違いなく5年後もトップ」

中国の新しい最高指導部について、長年、中国政治を研究してきた東京大学大学院の高原明生教授は「習近平国家主席は間違いなく5年後も引き続き党のトップに立つ」と述べ、習近平国家主席は5年後に開かれる次の党大会の後に引退せず、中国のトップとしての権力を保持し続けるだろうという見方を示しました。

その理由として、高原教授は、新しい最高指導部に次の世代のリーダー候補が選出されなかった点を挙げ、「後継者が現れなかった点が大事なポイントです。今回の党大会を通じて習主席の1強体制がさらに強化され、少なくとも第3期までトップを務めるという意気込みを感じた」と指摘していました。

また、地方で勤務していたときのみずからが信頼を置く人物を最高指導部のメンバーに登用した点については「いちばんコアの部分では習主席の権力が強化されたのは間違いない。習近平思想が党のイデオロギーにもなったので、さらなる権威の引き上げ、権力の集中が進む」と述べました。

一方、習主席が長く中国の最高指導者であり続けるための課題については、「いまだ、権力強化を考える際に信頼できる有能な部下が足りないのが大きな問題だ。政治的な安定のためには経済運営や社会の安定がうまくいくかどうかも重要で、この5年間の業績が厳しく問われることになる」と分析していました。

官房長官「戦略的互恵関係の下で懸案処理」

菅官房長官は午後の記者会見で、「新指導部に選出された方々に対し祝意を申し上げたい。ことしの日中国交正常化45周年に続き、来年は日中平和友好条約締結40周年になる。新指導部との間でも、引き続き戦略的互恵関係のもとで懸案を適切に処理しながらあらゆる分野で協力や国民交流を推し進めたい」と述べました。

そして、菅官房長官は、日本、中国、韓国の3か国による首脳会議の年内開催を目指して引き続き調整にあたる考えを示したうえで「大局的な観点からさらなる関係改善を進めていきたい」と述べました。