この長い記事は、アメリカで白人至上主義がどのように広がったのかを示すものだ。トランプ政権・彼を支持するメディア・白人至上主義者の隠された関係を詳細に記している。最終回の3回目は、ドナルド・トランプが政権を取った後、キーマンだったバノンとヤノプルスは、どのような関係になったのか。
1回目「右派サイトとの隠された関係」
2回目「オルタナ右翼は文化的戦争を仕掛けた」
ブライトバートと、白人至上主義者との関わり。
ヤノプルスと近い関係にあったのが、デヴィン・ソシエという人物である。
ソシエはこの10年で、アメリカの白人至上主義における有望な若手として地位を確立した。
2008年、ヴァンダービルト大学在学中のソシエは、白人至上主義者の学生グループ「Youth for Western Civilization」の地方支部を設立した。現在は消滅したこのグループには、白人至上主義者のリーダー、マシュー・ハインバックがいた。著名な白人至上主義者のリチャード・スペンサーは、ソシエを友人と呼んでいた。
ソシエは、バージニア州の復興異教主義グループで、「白人至上主義の狼カルト」とも呼ばれた 「Wolves of Vinland」とも関係している。歴史的な黒人教会に放火し、有罪判決を受けたメンバーもいる。
極右運動ウォッチャーによれば、ソシエは過去数年間、おそらくアメリカで最も有名な白人至上主義者、ジャレッド・テイラーのアシスタントとして働いてきた。
BuzzFeed Newsが入手したEメールによると、ソシエはテイラーの雑誌「American Renaissance」でペンネームを使って記事の執筆、編集をしている。
2016年10月のEメールの中で、ヤノプルスは28歳のソシエを「僕の親友」と表現している。
「親友」というのは、誇張だったかもしれない。
ヤノプルスはソシエにプレゼントをした形跡がある。だが、それは知人で小説家のブレット・イーストン・エリスのサイン入り著書『アメリカン・サイコ』だった。描かれるのは、裕福で恵まれた男性のうわべだけの付き合いと、抑えられない殺人願望……。決して親友への贈り物として、ふさわしい本ではない。
だが、二人が親しかったのは間違いない。2016年3月にワシントンD.C.ジョージタウンで夕食をともにした後、絶えず連絡を取り続け、イギリスのEU脱退に興奮し、「Soldiers of Odin」というフィンランドの極右グループについての見出しを賛同するようにシェアし、ケネディセンターでのワーグナーの『ニーベルングの指環』を観に行く予定を立てた。
ソシエには何度もコメントを求めたが、回答はなかった。
2人の関係からも、白人至上主義を公然と唱える人たちと、ブライトバートが密接につながっているのは明らかである。
2016年の春までには、ヤノプルスは広報手段として、知的なガイドとして、そして編集者として、ソシエを使うようになっていた。
5月1日、階級に基づいたアファーマティブ・アクション(訳注:収入などの社会階層に基いて大学などの入学枠を設ける制度)に関連する参考文献を送るよう、ヤノプロスはソシエに依頼した。ソシエは関連するリンクを添えて返信した。
5月3日には、ソシエは「記事のアイデア」という件名のメールを送っている。「トロール(ネットで挑発的な文言を投稿する人々)はいかにしてトランプのために大衆の心をつかめたか」というテーマだった。
ヤノプルスはそのメールをボカリに転送し、こう書いた。
「今やっていることをすぐやめて、僕のためにこれの下書きをしてくれ」
ヤノプルスの署名のもと、「Meme Magic: Donald Trump Is The Internet’s Revenge On Lazy Elites(ミームのマジック:ドナルド・トランプは、怠惰なエリートへの、インターネットからの復讐だ)」という記事が翌日公開された。
5月初旬、ソシエは、テイラー・スウィフトに粘着するオルタナ右翼についての情報提供者を、ヤノプロスに引き合わせた。
ソシエは記事の掲載を止めるくらいの影響力もあったようだ。
5月9日、ヤノプルスは階級に基づいたアファーマティブ・アクションの記事の草稿全文をソシエに送った。「あまりよくない」と、ソシエは返答した。
同時に、「真に階級に基づいたアファーマティブ・アクション」によって「あらゆるまともな大学への黒人の入学」がいかにして「大幅に低下する」か、細かい説明をした。
次の日、ヤノプルスは別の草稿を添えて返事を書いた。「納得行く指摘を受けた気がする」。
それに対し、ヤノプルスが人種による知能の差を「控えめに表現」しようとしたのだろうとソシエは思い、「ハッキリ言って、僕ならこの記事はボツにする」と返信。結局、その記事は掲載されなかった。
ヤノプルスの記事に喜んだこともある。
6月20日、ヤノプルスは自分の記事「Milo On Why Britain Should Leave The EU — To Stop Muslim Immigration.(マイロ、英国がEUを離脱すべき理由を語る — イスラム教徒の移民を阻止するために)」のリンクをソシエに送った。
「良い記事だ」とソシエは返答した。「ヨーロッパのアイデンティティと、西洋の偉人に言及したところが特にいいと思う」
6月25日には、「Brexit: Why The Globalists Lost(グローバル主義者はなぜ敗北したのか)」という分析記事をヤノプルスは送る。
その中の「(孤立しても)高IQ、高スキルな経済を持つイスラエルのように、イギリスも独自に繁栄するだろう」という文に対し、ソシエは「ささやかだが真実の爆弾」とメールで評した。(ソシエが関わる「American Renaissance」は人種間のIQの違いに固執している)
「みんなに優しい表現で、安心させているんだ」とヤノプルスは返答した。
「たぶん僕の『我慢しろ、潤滑剤なしでぶちこむぞ』戦略より良いと思う」とソシエは返事した。
だがヤノプルスは、ブライトバートの上司をいつでも安心させていたわけではない。
「浄化」のため、編集のアレックス・マーローが、反ユダヤ的・人種差別的なアイデアやジョークを削除せざるを得ない時もあった。
2016年4月には、ネオナチ主義者のハッカーで「Daily Stormer」のシステム管理者、「ウィーヴ」・オーエンハイマーを自分のポッドキャストに出演させるべく、承認をヤノプルスは求めている。
「素晴らしい、刺激的なゲストです」と彼は書いた。「面白くて、賢くて、興味深い。…まさに僕のブランドにぴったりです」
「要検討だ」。マーローは返事を書いた。
「彼は真正の人種差別主義者だ。…我が社にとって重要な戦略判断で、今のところノーの方に気持ちが傾いている」(ウィーヴがこのポッドキャストに出演することはなかった)
ヤノプルスが2016年9月に登壇する講演原稿を編集していた際、マーローはイスラエルの通貨「シェケル」についてのジョークは承認した。しかし「ガス室についてのツイートをふざけて容認してはいけない」と付け加え、該当部分は削除するよう求めた。
反ユダヤ、反黒人的発言の多いオルタナ右翼のアカウント「リッキー・ボーン」のTwitterアカウントが削除されたことを報じる記事をマーローは保留にした。
そして2016年8月、「The Alt Right Isn’t White Supremacist, It’s Western Supremacist(オルタナ右翼は白人至上主義者ではない、西洋至上主義者だ)」と題した記事の草稿をボカリが送ったが、この記事もマーローは保留とし、「ナチスのミームを認める考えに手を出したくない」と説明した。
「マーローの限界がわかった」とヤノプルスは返した。
人種や反ユダヤ人に関してどこまでやっていいのか、限界を極める。それはブライトバートにおけるヤノプルスの大事な仕事だった。
彼が構築した不透明な「組織に付随する組織」も、クラウドソーシングを使ったアイデア形成と執筆プロセスも、ブライトバートの目的に完ぺきにかなっていた。仮に何か問題があっても上層部は「我々は関与していない」ともっともらしく否認できる。
だがそれは、BuzzFeed Newsが入手したEメールを誰も見なければという話だが…。
ヤノプルスはこうした構造を、なるべく表に出さないよう尽力していたようだ。
2016年8月、ボカリが代筆した記事の承認を得ようと、スタッフがバノンとマーローに直接メールを送ったときのことだ。
「ソーセージ作りのプロセスを見せるような、こういうEメールチェーンを(上層部に)転送しないでくれ」と、ヤノプルスはメールした。
「(ヤノプルスの記事をスタッフが書いていることは)みんな知っている。でも毎回、思い出させる必要はない」
人種差別主義者や白人至上主義者から見かけ上、十分な距離を保つ。それは、バノンが築き、ヤノプルスが育てた「マシン」にとって何より重要だった。
人々の注目を集めるにつれ、人種差別的なフォロワーを大量に惹きつけた。
そうした人々がTwitter上で『ゴースト・バスターズ』の黒人女優レスリー・ジョーンズに嫌がらせをしたとき、ヤノプルスも彼らを煽ったとして、Twitterからアカウントを凍結された。
新復古的思想を持つカーティス・ヤーヴィンは2015年11月、「1488人のクズたちの終わらない営みをさばくプロの秘訣」という記事をヤノプルスに書き送った(「1488」は白人至上主義者がよく使うスローガンで、「88」は「ヒトラー万歳」を意味する)。
「ヤツらに対抗しろ。完ぺきに仕立てられた、高潔な共産主義者のニューヨーク・タイムズの記者が、油臭い無政府主義者のヒッピーを扱うように。恩着せがましい、上から目線。お嬢さん、君の心は正しい場所にあるのだから、シャワーを浴びて、わき毛を剃りなさい、とでも言いたげな。リベラルが共産主義を排除するのは、共産主義が憎いからじゃない。自分にとって恥だからだ。…リベラルは自分の左に敵を見ているのではなく、左側に敗者がいるのを見ているだけだ。そして、敗者はかすんで消えていく」
「1488の件、ありがとう」とヤノプルスは返答した。
「でも、こういうので苦労してきたんだ。完全にクリーンではないとしても、十分にクリーンでいる必要があるから」
クリーンでいるために、ヤノプルスは外部の協力を受けていた。彼を人種差別主義者や白人至上主義者と評した報道機関に対して、即座に激しく「告訴する」と脅迫するメディア対応のための組織だ。
「ヤノプルスは白人至上主義者ではありませんし、オルタナ右翼の一員でもありません」
ブライトバートのメディア対応を請け負うCapitalHQの上級顧客担当部長、ジェニー・ケファウバーは、反トランプ活動家がヤノプルスの講演の場で発砲したという報道の後、シアトルにあるCBS系列の会社に書き送った。
「常に彼らを非難してきましたし、彼らと関係しているという証拠をそちらは提示していません。私たちが次の手段を検討する前に、今すぐ訂正を発表してください」
2016年から2017年の初めにかけて、ロサンゼルス・タイムズ、The Forward、ビジネスインサイダー、グラムール、フュージョン、USAトゥデイ、シカゴ・トリビューン、ワシントン・ポスト、CNNに対し、こうした要求を送りつけた。
記事取り下げや修正、または修正拒否といった各メディアの反応をブライトバートはさらに記事にして、新しいカテゴリーを作った。
ヤノプルスとソシエの関係や、ブライトバートでガス室のジョークを載せようとしたことや、ポッドキャストにウィーヴを登場させようとしたことを、他のメディアのジャーナリストや編集者は知るよしもない。
2016年4月2日の夜についても知らなかったはずだ。
その夜、ヤノプルスはダラスのバー「One Nostalgia Tavern」で過ごし、白人至上主義者リチャード・スペンサーを含む聴衆が「ジーク・ハイル(訳注:「勝利万歳」、ナチスでよく使われた)」を連呼する前で、カラオケ版の『America the Beautiful』を歌い上げていた。
動画には、ソシエの姿もある。同じ夜、ソシエとスペンサーは上機嫌のヤノプルスの前で、デュラン・デュランの『A View to a Kill』をデュエットした。
訴訟を起こすと脅されたジャーナリストたちが、ヤノプルスのEメールのパスワードを知っていたはずもなかった。
4月6日のEメールの中で、アラム・ボカリはヤノプルスのアカウントに「Kristallという言葉で始まるパスワード」でアクセスしたことに軽く触れた。
突撃隊(SA)— ヒトラーが権力の座に就くのを手助けした準軍事的な組織 — が1938年に実行したドイツのユダヤ人に対する悪名高い暴動「Kristallnacht(水晶の夜)」は、ホロコーストの始まりとされる。
2016年6月のアシスタントへのEメールの中で、ヤノプルスは自分のEメールのパスワードをシェアしたが、それは「LongKnives1290」で始まっていた。「長いナイフの夜(The Night of the Long Knives)」は、突撃隊幹部に対するナチスの粛清だ。広く知られているように、ゲイのリーダー、エルンスト・レームも殺された。1290年は、エドワード1世がイングランドからユダヤ人を追放した年である。
2016年8月17日の朝早く、トランプの選挙運動のためにバノンがブライトバートを去ると報じられると、マイロ・ヤノプルスはメールを送った。
「おめでとうございます、チーフ」
「『お悔やみを』のつもりだな」と、バノンは返信する。
「あなたの使命感には恐れ入ります(いや、マジで)」
「そんなことわかってるだろう」
このやりとりの後、1カ月間、ヤノプルスとバノンは密接に仕事を続けた。
バノンと編集者のマーローは、7月後半にヤノプルスのTwitterが凍結されたことに関して記事を連発。だが、チャールズ・ジョンソンのTwitter告訴計画からは距離を置いた。
「チャールズは広報活動の毒です」とヤノプルスは書くと、「意図は間違えてない。でも彼はひどいね」とバノンは返した。
オルタナ右翼を擁護する8月の記事で、ポール・ライアンをどのくらい叩くかをめぐって、前に進まなかった。
「ライアンをおちょくるのは見出しだけだ」「記事の本文では、ライアンが腰抜けだとか書かないだろうな?」とバノンはヤノプロスを制している。
しかしバノンがブライトバートを去ると、2人のメールのやりとりは一気に減った。
8月25日、ヒラリー・クリントンがオルタナ右翼についてのスピーチで触れると、ヤノプルスはメールを送った。
「こんなに爆笑したことはありません」
「あの女のくそいまいましい頭の中に、俺たちがいるなんてね」とバノンは返信した。
そして9月15日、当時トランプ陣営のアドバイザーだったセバスチャン・ゴルカは、「Twitterで見つけた」ミームを送った。
宛先は、ヤノプルス、バノン、そしてほどなくトランプの国家安全保障問題担当顧問となる人物の息子、マイケル・フリン・ジュニア。
2010年のシルヴェスター・スタローンの映画『エクスペンダブルズ』のパロディだ。
「The Deplorables」(残念なやつら)と題された画像には、ヒーローたちの上に、トランプに関係する面々の顔が合成されていた。保守風刺サイト「Patriot Retort」の透かしが入っている。
「あなたたちがこれを了承したのでしょう?」とゴルカは書いた。
「最高だね。フリン中将にCCする」。フリン・ジュニアは返信した。
「LOL(大爆笑)!」と、バノンは返す。
「(面白すぎて)妬ましいですよ!」とゴルカ。
大統領選が終盤に入ってからも、バノンがブライトバートを動かし、成長を続けるスター、ヤノプルスのキャリアを導いていた形跡がある。
9月1日、バノンはラトガース大学に導入された、いじめ防止のための言動ガイドラインについての記事をヤノプルスに転送した。ヤノプルスはそれをボカリに送り、記事を書くよう指示した。
3日、バノンは「ドナルド・トランプのインタビューを準備しようとしている」とヤノプルスにメールで伝える。(結局、実現しなかった)。
そして9月11日、バノンはデジタル戦略専門家でトランプ支持者のオズ・スルタンに面会するよう、ヤノプルスに指示した。
文化的戦争の理想を推進するため、トランプとの距離の近さをバノンが利用していたフシもある。
10月13日、白人至上主義者のリーダー、ネイサン・ダミゴのツイートをソシエはメールでヤノプルスに送った。ダミゴは今年4月のカリフォルニア大学バークレー校で開かれた集会では反ファシストの女性の顔を殴り付け、シャーロッツビルではデモを先導した人物だ。
そのツイートとは、「@realDonaldTrumpが、大学キャンパスでの言論の自由を保護すると言ったばかりだ」というものだ。
「ダミゴが僕に似たフレーズを使っていた——バノンが吹き込んでいるんだ」と、ヤノプルスは返信した。
だがトランプが大統領に就任し、オルタナ右翼内での過激派から、「オルタナ右翼」を再定義しようという機運が高まると、バノンは公式にそしてはっきりと、ヤノプルスとの距離を置いた。
2017年2月14日、ほんの数カ月前まで密にやりとりをしていたバノンに接触するために、ヤノプルスは共通の知人の広報担当者に頼らざるをえなかった。
「本の原稿です。もちろん極秘扱いの……今でも、バノンかドン・ジュニア(ドナルド・トランプ)かイヴァンカから、推薦の言葉をもらえたらうれしいのですが!」
その翌週、ヤノプルスが小児性愛を容認しているように見える動画が発表された。ヤノプルスは追い詰められ、2日後にブライトバートを辞職した。弁護士がヤノプルスを職に留めておくよう、ブライトバートCEOのソロフと編集者のマーローに強く求めた。
「13カ月も前の動画が理由で、人気急上昇中のスターを見捨てないよう切に願います。この動画が彼の本意を反映していないことは、私たちみなが知っています」と弁護士は書いた。
トランプの混沌としたホワイトハウスの中にバノンは身を隠し、コメントもせず、メインのメールでヤノプルスに連絡を取ることもなかった。
だが、「マシン」は壊れていなかった。
ただ、静かに動いていただけだった。価値のある部品を完全に捨てようとしたわけでもなかった。その部品が、小児性愛の支持者に見える人物であったとしても。
ヤノプルスがクビになったあと、マーローは新たなプロジェクト「マイロ社」について話し合うため、ヤノプルスを連れて富豪・マーサーの自宅に赴いている。
2月27日、スキャンダルが勃発してから2週間も経たないうちに、ヤノプルスは「ロバート・マーサーの会計係」と称する女性からメールを受け取った。
「今日、電信送金します」
その日遅く、会計係とロバート・マーサーに宛てたメールで、ヤノプルスは個人として礼を伝えた。著書の出版を準備している最中でも、レベッカ・マーサーと親しい関係を保ち、ニューヨークで歯周病専門医が必要になったときはテキストメッセージを送って良い医師を推薦してもらったほどだ。
バノンがホワイトハウスを去ってから、ヤノプルスと再び協働している兆候がある。
8月18日、ヤノプルスはInstagramに「Winter is Coming(冬がやって来る)」と言葉を添えて、バノンの白黒写真を投稿した。
結局実現しなかったが、カリフォルニア大学バークレー校でのヤノプルスのイベント「Free Speech Week」でバノンは講演を予定していた。
9月に入ってイベント自体が中止され、実現しなかった。中止の理由は、発起人の学生グループが必要な手続きを怠ったからだとされている。もし予定通り開催されていれば、極右の論客がオールスターで集まるイベントとなっただろう。
さらにヤノプルスは親しい人々に、間もなくブライトバートに復帰できそうだと語っている。
スティーブ・バノンの活動は、公言するイデオロギーのレンズを通して分析される。
反イスラム、反移民、反「グローバリズム」で、移民や多様性、経済に関して広く受け入れられているリベラルな思想の破壊を目指すイデオロギーだ。たしかにBuzzFeed Newsが入手した文書の中でも、その多くが見てとれる。
そこにいるのは、欧米に多数の移民が流入して西洋文明が破壊される様子を描いた1973年の小説『Camp of the Saints』を愛読するバノンだ。
2016年2月には、西洋のための「#war」について語りながら、記事の中の「難民」を「移民」に書き換えるようヤノプルスに要求している。
だが我々は、民間メディア企業の幹部としてバノンを見ることはめったにない。
成功しているメディアの幹部は、読者の規模を拡大するためコンテンツを日々、生み出している。マイロ・ヤノプルスが具現化したブライトバートというオルタナ右翼「マシン」は、この見方から捉えるのが実は一番わかりやすい。
それはみごとな読者獲得マシンだった。
富豪から資金を調達し、アイデンティティ政治や、イスラム教徒・ヒスパニックの移民、ヒラリー・クリントンやバラク・オバマが大統領の座に就くことなどにうんざりした人々を取り込むべく綿密に設計されていた。
仮に読者層の拡大が、白人至上主義者やネオナチ主義者を取り込むことを意味したとしても、見かけだけ浄化して、彼らとのつながりを隠すのは簡単なことだった。
ヤノプルスのウリは、彼のエゴそのものだ。報道機関がソーシャルメディアに成長を賭けるこの時代に、アイデンティティ政治の中を生きる読者層を惹きつける、それがメディアの生態系におけるヤノプルスの役割だった。だが、その役割は彼が思うほど、唯一無二のものではなかった。
多くの報道機関が記者を解雇し、資金を動画に投入している。さらにシャーロッツビルの事件で、オルタナ右翼の読者が扱いにくいことが明らかになった今、バノンにとって、ヤノプルスの利用価値がなくなった可能性がある。
いや、そうでもないのかもしれない。
バノンが描くヤノプルスの未来は、常に動画やショーの中にあった。2017年には多くのショーが生まれ、注目を浴びている。先述の「Free Speech Week」も、内部崩壊しなければスペクタクルとなる可能性があった。
バノンとヤノプルス。声をあげ、目立つ。その価値を、この2人は知り尽くしている。
2016年6月、バノンの熱烈な後押しを受け、ヤノプルスはストックホルムのイスラム教徒居住区でゲイ・プライド・マーチを先導する計画を立てていたが、ヤノプルスが身の安全を不安視。結局、ブライトバートがセキュリティ上の理由で中止を決めた。
だが6月26日、ヤノプルスは「死ぬほどすごい計画」についてバノンに書き送り、こんなジョークを上機嫌に綴っている。
「もし僕が死んだら、今日の午後くらいは、Breitbart.comのサイトをブラックアウトしてほしいですね」
数時間後、バノンは返信した。
「哀悼のために、トラフィックを逃せっていうのか?」
(完)
この記事は英語から翻訳されました。
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Joe Bernstein is a senior technology reporter for BuzzFeed News and is based in New York. Bernstein reports on and writes about the gaming industry and web culture.
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