自治体の提案相次ぐ 外国人の農業就労 人手不足を背景に
2017年10月25日
国家戦略特区内で農業への外国人の就労が可能になることを受け、特区への指定を国に提案する自治体が相次いでいる。生産現場の人手不足を解消しようと、これまでに少なくとも9区域が提案。国に実現性をアピールするため、JAグループと連携して受け入れ体制をつくる提案をする自治体も目立つ。一方で、政府は外国人就労だけでなく、従来にない大胆な規制改革の提案を求めており、特区指定を得るために、自治体が幅広い提案をする動きが強まりそうだ。
政府は、大胆な規制緩和を実証する国家戦略特区法を6月に改正し、特区内で取り組める50超に上る規制緩和のメニューの中に、新たに外国人の農業就労を加えた。今後、受け入れ農家の詳細条件などを定める指針が固まれば、全国で10区域ある既存の特区では取り組みが可能になる。
一方、政府は新たに特区に指定する自治体を年内をめどに選ぶ方針だったが、加計学園問題を巡る混乱を受け、追加指定は年明けにずれ込む見通しだ。
同法改正前から農業への外国人就労の解禁を国に提案してきたのは群馬県昭和村や秋田県大潟村、茨城県、長崎県、愛知県。一方、同法改正以降も7月に長野県、8月に鳥取県境港市、米子市、大山町が合同で、9月に熊本県、群馬県が外国人就労の解禁を提案した。このうち、愛知県は特区に指定済みで、指針の決定を待って手続きを進め、来年中の受け入れを目指すとしている。提案には、JAグループとの連携を盛り込んだものが目立つ。長崎県の提案では、JA島原雲仙を外国人の受け入れ組織に位置付けた。同JAが人手不足の農家に支援人材を手当てする事業を展開している実績から、提案の実現性を訴えている。長野県も県域で外国人を受け入れるにはJAとの連携は不可欠だとして、提案をJAグループ長野と共同で行った他、熊本県もJAグループや行政などでつくる協議会が、外国人の受け入れ支援を担う内容とした。
政府は、外国人材の受入促進を特区で取り組む重点分野に掲げるが、「新たな思い切った規制改革の提案も重視する」(内閣府)と強調。農業への外国人就労という単一の内容での提案では、特区に追加指定されにくい状況だ。
政府は、大胆な規制緩和を実証する国家戦略特区法を6月に改正し、特区内で取り組める50超に上る規制緩和のメニューの中に、新たに外国人の農業就労を加えた。今後、受け入れ農家の詳細条件などを定める指針が固まれば、全国で10区域ある既存の特区では取り組みが可能になる。
一方、政府は新たに特区に指定する自治体を年内をめどに選ぶ方針だったが、加計学園問題を巡る混乱を受け、追加指定は年明けにずれ込む見通しだ。
同法改正前から農業への外国人就労の解禁を国に提案してきたのは群馬県昭和村や秋田県大潟村、茨城県、長崎県、愛知県。一方、同法改正以降も7月に長野県、8月に鳥取県境港市、米子市、大山町が合同で、9月に熊本県、群馬県が外国人就労の解禁を提案した。このうち、愛知県は特区に指定済みで、指針の決定を待って手続きを進め、来年中の受け入れを目指すとしている。提案には、JAグループとの連携を盛り込んだものが目立つ。長崎県の提案では、JA島原雲仙を外国人の受け入れ組織に位置付けた。同JAが人手不足の農家に支援人材を手当てする事業を展開している実績から、提案の実現性を訴えている。長野県も県域で外国人を受け入れるにはJAとの連携は不可欠だとして、提案をJAグループ長野と共同で行った他、熊本県もJAグループや行政などでつくる協議会が、外国人の受け入れ支援を担う内容とした。
政府は、外国人材の受入促進を特区で取り組む重点分野に掲げるが、「新たな思い切った規制改革の提案も重視する」(内閣府)と強調。農業への外国人就労という単一の内容での提案では、特区に追加指定されにくい状況だ。
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[2017衆院選] 社会保障を問う 持続可能な制度を示せ
日本は、これまでに経験したことのない少子高齢時代を迎えている。このままでは戦後日本社会を支えてきた社会保障制度は行き詰まる。この現実を前に政治は危機感が足りない。
これから日本が進む道は、いばらの道かもしれない。2065年に人口は8800万人に減り、65歳以上の高齢者比率は4割近く、15~64歳の生産年齢人口は今の6割から5割に落ちる。先行する農山村に見られるように生活環境は激変する。
この超高齢化時代をどのように乗り越えるか。今一番重要な政治の争点である。しかし、各党公約で目につくのは教育費の無償化。全党ほぼ足並みをそろえる。違いは財源。自民は10%に引き上げる消費税の使途を変更して財源を確保。公明も歩調を合わせる。希望、立憲、共産など野党は、消費税の凍結を前提に歳出カットや大企業への課税などを挙げる。
教育の無償化は、子育て世代の負担を減らし、子どもを増やす対策として有効だろう。高齢者対策に重点を置いた社会保障制度を補うものとして検討に値する。ただ、有権者に受けのいいことだけにとどまっていないか。社会保障制度全体の在り方を問うべきである。
超高齢化で確実に増えるのが社会保障給付費だ。統計を取り始めた1950年度から一貫して伸び続け、115兆円(2015年度)に達した。保険料では6割に満たず、残りを税金などで埋めている。現在の年金、医療、介護のサービス水準を維持するには、税金投入を毎年1兆円以上増やす必要があるとの試算がある。
1947~49年生まれの団塊の世代が75歳以上の後期高齢者の仲間入りすれば、給付費はさらに増える。1000兆円超の借金を抱える国や地方の財政を圧迫するのは確実だ。50年以内に1人の高齢者を1・3人の現役世代で支える「肩車型社会」になる。とても維持できない。制度の存廃に関わる。
持続可能な社会保障制度を実現するには、女性や元気な高齢者の就労を促し、支える側の層を厚くする必要がある。その前提としてみんなで支え合う意識、相互扶助の思想が欠かせない。「全世代型」社会保障に転換するなら、なおさらである。
しかし、アベノミクスは都市と農山村の格差を広げ、中間層を分断した。「1億総活躍」を唱えても、競争を優先する新自由主義の考え方を改めなければ、みんなで支え合う意識が根付くはずがない。社会保障制度は国民が安心して暮らしていくための基盤だ。財源も含め、制度の青写真を提示するのは、政権を担おうとする政党には避けて通れない課題である。
政権与党が消費税の使い道を変更することを表明した今回の総選挙は、少子高齢時代の社会保障制度の在り方を問う絶好の機会でもある。選挙後に、国民に負担を押し付ける一方的な議論になっては困る。
2017年10月19日
[2017衆院選] 西川元農相が落選 党農政トップ不在に
22日投開票の衆院選栃木2区で、西川公也元農相(74、党農林・食料戦略調査会長)が落選した。西川氏は党内規の年齢制限で比例に重複立候補しておらず、議席を失うことが確定。無所属で立憲民主党などの推薦を受けた前職・福田昭夫氏(69)との一騎打ちに敗れた。自民党は農政のトップを失い、混乱は避けられない。
今回の衆院選では、山本有二前農相、中川郁子元農水政務官、細田健一前農水政務官も選挙区で破れた。与党は大勝したものの、安倍農政に対する農村部での根強い不信感を裏付けた。
西川氏は通算で衆院当選6回。党農林部会長やTPP対策委員長など農林関係の要職を歴任し、2014年9月には第2次安倍改造内閣で農相に就任した。現在は、党農政トップの農林・食料戦略調査会長やTPP・日EU(欧州連合)等経済協定対策本部長を務める。
栃木2区は14年の前回衆院選でも、福田氏が現職農相だった西川氏に199票差で勝利しており、今回も全国屈指の激戦区となった。西川氏は“背水の陣”で臨み、自民党は安倍首相(同党総裁)や二階俊博幹事長、小泉進次郎前農林部会長らが応援に入るなど挙党体制で支援したが、及ばなかった。西川氏は今後について「後援会と相談して、自分でどういう道を行くか決めたい」と述べるにとどめた。
2017年10月23日
天気と気分には相関があるのか
天気と気分には相関があるのか、このところの雨続きと冷え込みで気持ちが晴れない▼投票日を直撃した台風21号は各地に爪痕を残し、農業被害も広がる。吹き返しの風に気持ちはさらに滅入る。漱石の自伝的小説『道草』は全編重い感じを引きずった作品で、縁を切った養父や身内から金を無心され続ける。作者の分身である健三にこう言わせて終わる。「世の中に片付くなんてものは殆んどありゃしない」。安倍晋三首相に聞きたい。この選挙で何が片付いたのかと▼〈国難〉の北朝鮮核ミサイル開発は日米が圧力を強めても断念の兆しは見えない。かの最高指導者と危うい舌戦を繰り広げるトランプさんにピタっと寄り添う外交は、暴発の巻き添えを食わないかと不安が募る。来日の際の“無心”も気掛かりである▼3分の2を得て改憲論議に弾みがつきそうだが、友党の山口那津男代表は「国会で多数の合意を」と早速くぎを刺した。森友・加計問題も一丁上がりとは行くまい。この選挙には600億円もかかったそうな。農水省が求める収入保険の原資より多い。国政選挙5連勝で歴代首相在任期間の記録越えが見えてきた▼“1強”が“一恐”に変質しないように。再スタートは低姿勢を強調した。民意の賞味期限の短さを知っているのだろう。
2017年10月24日
比良青豆味噌 大津市
大津市比良の農家の主婦ら7人でつくる農産加工組織「北比良グループ」が販売するこだわりのみそ。
「青豆(青大豆)の煮豆がおいしいから、みそも青豆で造ってみよう」と3年前に売り出した。地元産米と、滋賀県産青豆を100%使った。米こうじと青豆の割合を2対1に工夫し、甘味のある、まろやかな味に仕上げた。現在は月に約100パック(1パック400グラム換算)売れる人気商品だ。
400グラム480円、800グラム900円(いずれも税別)。JAレーク大津の農産物直売所「JAグリーンファーム堅田店」、アンテナショップ「ほっとすてぃしょん比良」などで販売。歳暮セットの販売も予定する。問い合わせは同グループ、(電)077(575)1332。
2017年10月25日
国際空港で日本産人気 青果、精肉、弁当、加工品 シンガポールに常設店 輸出増へ宣伝役 全農関連会社が供給
シンガポールのチャンギ国際空港に、日本産の農産物や加工品を販売する初の常設店舗「プレミアム・ジャパン・ファーマーズ・マーケット」が開店し、22日で1カ月となる。アジア最大級の国際空港という好立地から、こだわり産品を求める旅行客や地元買い物客の来店が続く。日本産農産物の輸出拡大に向けた宣伝機能を発揮し、じわり注目を集めている。
現地で日本産食材を販売するアディレクト社が運営し、JA全農の輸出事業を担う子会社・JA全農インターナショナルがほぼ全ての日本産農産物や加工品を供給する。
一番の売れ筋は、日本の食材を使い現地製造する弁当「ゴゼン ベントー」。牛丼や、焼きサケなどの総菜を組み合わせた4種セットを約980円で提供する。「空港利用者以外にも、地元の買い物客から好評を得ている」(アディレクト社)。
店の入り口近くでは全農ブランドの国産米を使った飲料「お米のミルク」(約230円)を扱う。熊本産の大麦や玄米で製造した「グラノーラ」の隣に並べて、併せ買いを提案する。
精肉や青果も好評だ。栃木産和牛A4等級のサーロイン(1キロ約2万6000円)や、奈良産や和歌山産の柿(1個約640円)、全農オリジナルのミニトマト「アンジェレ」(1パック約480円)などをそろえる。
全農インターナショナルは「今後は日本の季節感や旬を感じてもらえる企画を展開していく」(川松義丈事業開発部長)と話す。日本産品の現地ニーズを探りながら、「日本産地の輸出戦略を描く材料を提供していく」(同)考えだ。
2017年10月22日
農政の新着記事
危険な用水路 大雨、大雪時に転落 減らぬ死者・不明 年80人も 事故対策を徹底
全国で、農業用水路に人が転落する事故が後を絶たない。台風や豪雨での増水時にも田畑を見回るなどして命を落とすケースも多い。農家の命を守ろうと、防止柵の設置など対策に乗り出す自治体が増えている。24日には台風22号が発生、週末にも日本に接近する恐れがある。田畑の様子が気になっても、危険が迫る時には田畑や用水路に近寄らないのが鉄則だ。
900カ所に柵 岡山市
岡山市は、全国の市町村でも用水路の転落事故が多い。頻発ぶりに同市の担当者は「“人食い用水路”とインターネットに流れたほどだ」と打ち明ける。
農村整備課によると14~16年の3年間で水路転落事故は391件、死亡者数は34人に上る。「高齢で足の機能が衰えた農家がつまずき、慣れたはずの水路に転落することも多い」とみる。
同市は1880年代、平野に網目状に用水路を張り巡らした農業地域。幹線と支線をつなぐと4000キロと北海道から沖縄までの距離より長い。1980年代後半から新興住宅地が増え、用水路沿いに非農家の住宅も増えた。
同市は、事故の頻発を深刻に受け止めて2016年8月、市内の町内自治会600組織に水路沿いの危険地域2500カ所を挙げてもらい、このうち最も事故発生率の高い900カ所を選び出した。
今年度から2年間で、選出場所に転落防止柵などを設置する。柵を設置する費用は1メートル当たり1万円と高額で、約5億2000万円を計上。同市は「高齢化が進む農村地域では転落防止対策は必須」と強調する。
市は予算を捻出するために、農村整備課と道路港湾管理課の予算を合わせた。道路港湾管理課は「農村には不可欠な設備だが、道路管理上は危険な場所にもなり得る。両課が関わって当然」と説明し、「地域ごとに農家と非農家両方の意見を聞き、農業の用水管理を妨げない安全対策を実施する」と言う。
地図で啓発 山形県酒田市
雪国では、大雪に埋もれて段差や水路が見えなくなり、除雪作業中に用水路に転落する事故が多い。
山形県酒田市では、今年3月に高齢男性が除雪作業中に水路に転落し流されて溺死したのをきっかけに、日向地区の12の自治会が形成する日向コミュニティ振興会が水路地図の作成を開始した。12月までに水の流れや災害記録をまとめ、降雪が本格化する前に危険地点の周知徹底を急ぐ。「冬は、自治会や土地改良区が用水路の水流を強めて落ちた雪を流しやすくしている」と、同会の工藤志保事務局長は危険度が増すことを強調する。
同会は9月、地元の大学生約30人と連携し、地域住民に過去に事故が起きた用水路の聞き取り調査を始めた。
水路の幅は30~40センチから2メートルまである。幅が狭く底が浅い水路でも「転落時に水路底や側面で頭部を強打し、気絶して溺死することがある」と工藤事務局長は指摘する。
地域に応じた安全確保策を
用水路の安全対策には課題もある。水路の保有や管理が一つの自治体に統一されておらず、土地改良区などの異なる団体が管理している地域も少なくない。岡山市は、水路の9割が市の保有だったことで対策が進んだ。
また、柵を設けると用水路管理がしにくく「農作業の邪魔になる」と設置に同意が得られないケースもある。同市は「ガードパイプや反射板など、柵の代わりとなる対策も地域の測量メーカーが提案してきている。効果を検証し、その場所に合う選択肢を増やす」としている。
台風 見回り厳禁
警察庁のまとめでは、16年の用水路転落による全国の死者・行方不明者数は前年比2割増の81人に上る。4、5日に1人が命を落としている計算だ。
農水省によると、農業用水路やため池などでの水難事故は、農繁期の春から夏にかけてが多いとするが、台風襲来時や豪雨時の事故も各地で相次ぐ。台風18号が日本列島を縦断した9月17日には、高知県四万十町で車ごと水路に転落した男性が死亡する事故も発生している。
気象庁は、今後は地球温暖化の影響で豪雨の頻度がさらに増すと分析。また、台風も大型化する傾向があるとしている。豪雨や台風が接近した時は、用水路や田畑に近づくことは厳禁だ。
農水省は「台風の通過前後には、農業施設などを見回ることは控えてほしい」として、注意を呼び掛けている。(齋藤花)
2017年10月25日
[2017衆院選][岐路の農政 霧中の船出](下) 対抗軸は視界不良 民進分裂 受け皿 見えず
「安倍1強打破の受け皿ではなく、批判の対象になったことは悔やんでいる」
衆院選開票の22日、希望の党の小池百合子代表は、出張先のパリで完敗を認めた。一時は政権交代さえ視界に入った勢いは急速にしぼみ、残したのは民進党3分裂の禍根。大勝した自民党への対抗軸は最後までぼやけたままだった。
希望は公示前勢力も下回る50議席と惨敗。民進党農政を支えた村岡敏英氏(秋田3区)や福島伸享氏(茨城1区)ら農林議員も相次ぎ落選の憂き目に遭った。体制や公約は急ごしらえで曖昧さが拭えず、「政策をじっくり話す選挙ではなくなってしまった」(福島氏)。
「安倍1強」打破で一致しながら「排除」する矛盾も自民の大勝を許した原因だ。静岡3区はその象徴。農政に詳しい小山展弘氏が、民進を離れ無所属で立候補したが、希望の党が対抗馬を立て、野党票の食い合いを引き起こした。両候補の得票数を合わせると約12万票。自民の当選者を2万票上回る。
躍進した立憲民主党は、農業地帯・北海道では12選挙区中五つで勝ち、3人が比例復活した。「1対1」の構図に持ち込み、農業政策では戸別所得補償制度を旗に支持を訴える戦略。米どころの新潟でも民進系が勝ち越し。西川公也、山本有二の農相経験者も野党候補一本化の前に敗北した。
立憲民主の福山哲郎幹事長は「農家が安倍政権の5年間の農業政策を支持していないことはこの結果で明らか」と、「安倍農政」批判の受け皿となったことを強調する。
希望は、結党メンバーが苦戦したが地方で強い基盤を築いた民進系が残った。「結党メンバーとのパワーバランスが変わるのでは」(民進系希望関係者)との期待も高まる。農政公約は「農業補助金を大胆に廃止し、農家への直接払いに」と改革色を強めたが、農村部での訴えの中心は戸別所得補償制度の復活。立憲民主や無所属との大きな違いはなく、政策別の連携を期待する声もある。
ただ、政策的な協力がすぐに進むかは不透明だ。無所属で当選した民進系ベテラン議員は「合流と排除で生まれた感情的なしこりはそう簡単に消えない」と、分裂劇の後遺症の重さを語る。両党とも選挙を終え新たな体制づくりを急いでいる。個別政策とはいえ拙速な「再結集」の動きは、また新たな火種を生む可能性が高い。何よりも有権者の支持を得られない。
「官邸主導が過ぎて不満が内閣支持率にも表れているのに、与党に入れざるを得ないジレンマがある」(鳥取の米農家)。「安倍1強」農政への批判の受け皿不足が続く農村部。分裂で生まれたあつれきを乗り越え選択肢を示せるのか。視界はまだ開けていない。
2017年10月25日
TPP11 集約狙うも波乱含み 30日から首席会合 NZの対応が焦点
茂木敏充TPP担当相は24日、環太平洋連携協定(TPP)の首席交渉官会合を30日からの3日間、千葉県浦安市で開くと発表した。参加国は目標とする来月の大筋合意に向けて、残る論点を絞り込む。政権交代したニュージーランド(NZ)が協定の修正を求め議論が混乱する可能性もある。
米国を除くTPP11カ国は、来月上旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて閣僚会合を開き、協定の大筋合意を目指している。茂木氏は「TPPの高水準を維持しつつ、良い結果を出すために着地に向けた議論が進展することを期待する」と述べた。
TPPで合意した貿易・投資ルールの水準を維持するため、米国復帰まで凍結する項目は最小限にする方針。
議長国の日本は、これまで各国から出た50ほどの凍結要望項目を今回の会合で半分程度に絞り込みたい考え。閣僚会合に向けて、事務レベルである程度凍結を認める項目のめどを付ける。
一方、日本と共に議論を主導してきたNZは、新政権が協定の修正を求める意向を示している。公約に掲げた外国人の中古住宅購入を規制するためだ。ただ政権交代間もないため具体的なTPP方針の決定が今回の会合に間に合わず、議論に参加しない可能性もある。
日本は、米国の離脱を受けて乳製品の輸入枠の縮小を探っている。水面下でNZなど関係国と協議するとみられる。事務レベルでは閣僚会合に向けた最後の会合となるため、今回で輸入枠縮小への道筋が付くのかが焦点となる。
2017年10月25日
自治体の提案相次ぐ 外国人の農業就労 人手不足を背景に
国家戦略特区内で農業への外国人の就労が可能になることを受け、特区への指定を国に提案する自治体が相次いでいる。生産現場の人手不足を解消しようと、これまでに少なくとも9区域が提案。国に実現性をアピールするため、JAグループと連携して受け入れ体制をつくる提案をする自治体も目立つ。一方で、政府は外国人就労だけでなく、従来にない大胆な規制改革の提案を求めており、特区指定を得るために、自治体が幅広い提案をする動きが強まりそうだ。
政府は、大胆な規制緩和を実証する国家戦略特区法を6月に改正し、特区内で取り組める50超に上る規制緩和のメニューの中に、新たに外国人の農業就労を加えた。今後、受け入れ農家の詳細条件などを定める指針が固まれば、全国で10区域ある既存の特区では取り組みが可能になる。
一方、政府は新たに特区に指定する自治体を年内をめどに選ぶ方針だったが、加計学園問題を巡る混乱を受け、追加指定は年明けにずれ込む見通しだ。
同法改正前から農業への外国人就労の解禁を国に提案してきたのは群馬県昭和村や秋田県大潟村、茨城県、長崎県、愛知県。一方、同法改正以降も7月に長野県、8月に鳥取県境港市、米子市、大山町が合同で、9月に熊本県、群馬県が外国人就労の解禁を提案した。このうち、愛知県は特区に指定済みで、指針の決定を待って手続きを進め、来年中の受け入れを目指すとしている。提案には、JAグループとの連携を盛り込んだものが目立つ。長崎県の提案では、JA島原雲仙を外国人の受け入れ組織に位置付けた。同JAが人手不足の農家に支援人材を手当てする事業を展開している実績から、提案の実現性を訴えている。長野県も県域で外国人を受け入れるにはJAとの連携は不可欠だとして、提案をJAグループ長野と共同で行った他、熊本県もJAグループや行政などでつくる協議会が、外国人の受け入れ支援を担う内容とした。
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2017年10月25日
[2017衆院選][岐路の農政 霧中の船出](上) “政高党低”拍車の恐れ 農林幹部 落選 批判の矢面に
ふたを開ければ、自民党の圧勝だった。野党が分裂して政権批判票が割れ、自民党が相対的に支持された。だが、永田町や霞が関の農政関係者に激震が走った。党農林のトップ、西川公也党農林・食料戦略調査会長が落選したからだ。
「西川先生は、われわれの考えを理解し(安倍『1強』農政の)行き過ぎにブレーキをかけてくれていた。官邸主導が強まるのではないか」
22日夜、西川氏の敗北が伝えられると、栃木県のJA幹部はこう懸念を口にした。西川氏は、党内規の年齢制限で比例代表の重複立候補はできず“背水の陣”で臨んだ。結果は惜敗。「西川先生は矢面に立つ身。結果的に(行き過ぎた安倍農政の)責任を負ってしまった」(同JA幹部)。
安倍晋三首相(自民党総裁)は23日、党本部で記者会見し「国民から力強く背中を押していただいた」と強調した。
だが、自民党の大勝は、野党の“敵失”によるところが大きい。その証拠に野党候補が一本化した北海道や新潟などの小選挙区では自民が相次いで敗れた。西川氏の栃木2区も典型で「米問題の影響が相当出た。TPP(環太平洋連携協定)も(有権者に)分かってもらえなかった」と肩を落とした。安倍農政を支えた山本有二前農相も小選挙区では敗れ「政策が伝わらなかった」と敗戦理由を語った。
二階俊博幹事長の派閥幹部でありながら菅義偉官房長官とパイプが太い西川氏は、党と官邸の“間”で立ち回る「唯一無二の存在」(党関係者)。官邸農政の一翼を担いながらアクセルとブレーキを踏み分け、さらに財務省にもにらみが利き農林予算の獲得で豪腕ぶりを発揮してきた。
今後も、生産調整の見直しや卸売市場改革、2国間の貿易交渉に意欲を示すトランプ米大統領の来日、TPPの早期発効に向けた閣僚会合と重要局面が続く。西川氏の後継には、森山裕国対委員長や宮腰光寛首相補佐官の名が挙がるが、党や政府の要職にあり難しく「代わりが見つからない」と党幹部は言う。
衆院選後に、TPP交渉参加や農協改革に踏み切ってきた安倍首相。今回も選挙結果を受け「ぶれることなく政治を前に進め、結果を出す」と語った。
「ブレーキ役がないまま急進改革が進んでしまう」(北海道の酪農家)との懸念がある一方、内閣支持率は低迷し「首相の求心力が弱まるのは必至」(党関係者)との見方もある。
党農林幹部は「新自由主義の論理は農業に合わない。政治家はそれを忘れてはいけない」との思いを強くする。党と官邸を巡る力学がどう変わり農政はどこへ向かうのか――。
党農林の最高幹部ポストが空白のまま、安倍政権は走りだす。
2017年10月24日
[2017衆院選] [注目の選挙区 結果編] 農林候補に“明暗”
22日投開票の衆院選では、与野党の農林系候補の明暗も分かれた。特に、自民党前職の4人の農相経験者は“四者四様”。現職の斎藤健氏と森山裕氏は早々と当選を決めたが、山本有二氏は比例での復活当選、西川公也氏は議席を失った。
「いい感覚できていたが、甘かった。深くおわびを申し上げます」
22日午後10時45分。栃木県さくら市の特設集会所で、西川氏が頭を下げた。当初から接戦が伝えられ、険しい表情で開票速報を見守っていた約120人の支持者に吉報は届かなかった。栃木2区で、立憲民主党などの推薦や共産党の支持を受けた無所属前職に敗北。党の「73歳定年」内規で比例には重複立候補しておらず、議席を失った。
現職農相だった前回は同じ候補に199票差で敗れ、比例で復活当選。党農政のトップ、農林・食料戦略調査会長として臨んだ今回も農政での実績を強調したが「米の直接支払交付金(廃止)の影響が相当出た」「環太平洋連携協定(TPP)や経済連携協定(EPA)の説明が足りなかった」などと振り返った。
安倍晋三首相や二階俊博幹事長、小泉進次郎前農林部会長らが応援演説に入ったが、無党派層の支持を欠いた。今後については「支持者や後援会と相談して決めたい」と述べるにとどめた。
前農相の山本氏は10選を果たしたが、高知2区では敗れ、自民党が比例四国で得た3議席の3番目に辛くも滑り込んだ。
開票直後に選挙区での落選が報じられたため比例復活を諦め、政界引退も考えていたという山本氏。帰宅後、テレビで復活当選を知り、23日午前1時すぎに高知市の事務所に戻ると、残っていた支持者の前で「奇跡だ。再び仕事をしろということなので、頑張っていきたい」と誓った。
在任時にはTPP国会承認の“強行採決”発言で批判されたが「(選挙への)影響はなかった」と記者団には強調。「(地元に多い)中山間地の農業の可能性を探っていきたい」と話した。
対照的に盤石だったのは斎藤、森山の両氏。午後8時の開票と同時に当選確実と報じられた。
千葉7区で4回目の当選を決めた斎藤氏は、流山市の事務所で「(農相就任で)地元に入る機会が減ったが、それ以上に皆さんが汗をかいてくれた」と150人の支持者を前にあいさつ。山積する農政課題に対し「農家やJAなど現場と協力しながら成果を出していきたい」と述べた。
党国対委員長の森山氏(鹿児島4区)は東京・永田町の党本部で当選確実の一報を受けた。今回から区割り変更で選挙区が広がったが、7割を超える得票率で圧勝し、6回目の当選。地元事務所とテレビ電話でつなぎ、「1次産業をどう発展させていくのかが大事な課題だ」と語った。
与党が定数の3分の2超の議席を得た中、自民前職の中川郁子元農水政務官(北海道)や今津寛氏(同)は選挙区で落選し、比例復活もかなわなかった。公明党前職の上田勇元農林水産部会長(神奈川)も落選した。
2017年10月24日
[2017衆院選] 西川元農相が落選 党農政トップ不在に
22日投開票の衆院選栃木2区で、西川公也元農相(74、党農林・食料戦略調査会長)が落選した。西川氏は党内規の年齢制限で比例に重複立候補しておらず、議席を失うことが確定。無所属で立憲民主党などの推薦を受けた前職・福田昭夫氏(69)との一騎打ちに敗れた。自民党は農政のトップを失い、混乱は避けられない。
今回の衆院選では、山本有二前農相、中川郁子元農水政務官、細田健一前農水政務官も選挙区で破れた。与党は大勝したものの、安倍農政に対する農村部での根強い不信感を裏付けた。
西川氏は通算で衆院当選6回。党農林部会長やTPP対策委員長など農林関係の要職を歴任し、2014年9月には第2次安倍改造内閣で農相に就任した。現在は、党農政トップの農林・食料戦略調査会長やTPP・日EU(欧州連合)等経済協定対策本部長を務める。
栃木2区は14年の前回衆院選でも、福田氏が現職農相だった西川氏に199票差で勝利しており、今回も全国屈指の激戦区となった。西川氏は“背水の陣”で臨み、自民党は安倍首相(同党総裁)や二階俊博幹事長、小泉進次郎前農林部会長らが応援に入るなど挙党体制で支援したが、及ばなかった。西川氏は今後について「後援会と相談して、自分でどういう道を行くか決めたい」と述べるにとどめた。
2017年10月23日
[2017衆院選] 自民大勝、政権継続 農政改革 加速へ 立憲 躍進、希望 苦戦
第48回衆院選は22日、投開票され、自民党が単独で過半数(233議席)を上回る議席を獲得し、大勝した。野党は、立憲民主党が躍進し、希望の党は苦戦。安倍晋三首相(自民党総裁)「1強」の政権運営の是非が問われたが、野党の分裂が結果的に自民を利した。内閣支持率は低迷し、政権を支えた農政の大物が相次いで敗退。4年10カ月の「安倍農政」が全面的に支持されたとは言えない。安倍政権は継続し、農政改革は加速するが、生産現場に根差した農政へ軌道修正できるかどうかが焦点となる。
安倍首相は、党本部で「(政権に)厳しい視線が注がれていると改めて認識した。今回の勝利には謙虚に向き合わなければいけない。謙虚に誠実に結果を出していく」と述べ、政策推進に意欲を示した。
自民党は、公明党と合わせた連立与党で国会運営を主導できる絶対安定多数(261)を確保した。両党は農業の成長産業化路線の継続を訴えたが、北海道や信越地方を中心に、農村部を含め、野党候補と一騎打ちとなった小選挙区では苦戦を強いられた。
一方、立憲民主党は、戸別所得補償の復活などを掲げて農村部でも善戦し、公示前から議席数を大きく伸ばした。「規制改革の徹底」を訴えた希望の党や日本維新の会は苦戦した。
選挙結果を受け、自民公明両党は、連立政権を継続。安倍首相は11月1日にも特別国会で、第98代首相に指名され、第4次安倍内閣が発足する。二階俊博幹事長は、来年秋の自民党総裁選で安倍首相の3選を支持する考えを示した。
ただ、内閣支持率は低迷し、不支持が支持を上回り、「安倍農政」を支えた与党候補者の苦戦も目立った。今後、農政の主導権を巡る官邸と与党の綱引きもありそうだ。一方、野党乱立による混乱も予想され、政権の歯止めとして機能するかは見通せない。
政府・与党は、2018年産からの米の生産調整見直しや卸売市場改革の議論を加速させ、年内の結論を目指す。日欧経済連携協定(EPA)の国内対策は、11月末までに取りまとめる方針だ。
外交では、5日にトランプ米大統領が3日間の日程で来日する予定。米政府は日本が警戒する2国間の自由貿易協定(FTA)に意欲を示しているだけに対応が注目される。11月上旬には、米国を除く11カ国での環太平洋連携協定(TPP)の早期発効を目指す協議が控える。
今回の衆院選には1180人が立候補した。台風21号の悪天候の影響などで投票率は低迷した。
<解説> “准組”慎重議論を
衆院選は与党の大勝に終わり、安倍政権は今後、農業改革を加速させる方針だ。農協についても、准組合員の利用制限を含めた、抜本改革に踏み込んでくる懸念が高まった。
政権がまず、狙いを定めるのは卸売市場だ。年内に具体的な改革内容を決める方針で、政府関係者によると、政府の規制改革推進会議は25日にも本格議論に入る。市場流通の要、産地の出荷物を卸が必ず引き受ける規定「受託拒否の禁止」の廃止などに踏み込む可能性がある。
推進会議は来年以降、農協改革の議論に着手する。准組合員の利用制限の是非が最大の焦点となる。15年に成立した改正農協法では、今後5年間で准組合員の利用実態を調査した上で利用制限を検討することになっている。
今回の衆院選では、「安倍1強」を強く批判する立憲民主党が躍進した。支持率が伸び悩んでいる安倍政権が今後、支持回復に向け「一段と改革に前のめりになる可能性がある」(政府関係者)。
だが、今回の結果で「信任を得た」と、改革をいたずらに進めるのは無理がある。与党大勝は野党が分裂し、政権批判票が分散したことに助けられた面が大きい。与党と野党の一騎打ちになった選挙区では、与党候補が相次ぎ苦杯をなめた。
本紙農政モニター調査では、安倍農政の評価は3割にとどまり、農政不信は根強い。今回の衆院選で農相経験者が苦戦したことは、そうした不信の表れといえる。
農協改革に限って言えば、自民党は公約でJAグループの自己改革を後押しする方針を明記。本紙アンケートでは、准組合員の利用制限を「すべきでない」と明言しており、極めて慎重な議論が欠かせない。
今回の選挙結果を謙虚に受け止めて、強引な官邸主導に待ったをかけ、生産現場の声に耳を傾けた丁寧な農政運営へと改められるか。国政へ戻ってくる与党農林議員に問われることになる。
2017年10月23日
[2017衆院選] 農林系候補 次々と 石破氏、斎藤氏ら当選
自民党が多くの議席を獲得する中、斎藤健農相(千葉7区)や森山裕元農相(鹿児島4区)、宮腰光寛首相補佐官(富山2区)ら同党農林系候補が続々と当選を決めた。公明党の稲津久元農水政務官(北海道10区)、野党から希望の党の玉木雄一郎氏(香川2区)、立憲民主党の佐々木隆博元農水副大臣(北海道6区)らが勝利。農業改革が加速する可能性がある中で、現場の声を反映した農政の実現へ役割発揮が求められそうだ。
自民党の大島理森前衆院議長(青森2区)、石破茂元幹事長(鳥取1区)ら、大物の農相経験者は貫禄勝ち。現職閣僚の小野寺五典防衛相(宮城6区)、野田聖子総務相(岐阜1区)も早々と当選を決めた。
同党の山本有二前農相(高知2区)は、選挙区では無所属・広田一氏に敗れた。
同党で農林関係の要職を務める候補者も早々に当確。江藤拓農林・食料戦略調査会筆頭副会長(宮崎2区)、吉川貴盛同調査会幹事長(北海道2区)、坂本哲志農業基本政策検討委員会委員長代理(熊本3区)、伊東良孝元農水副大臣(北海道7区)が順調に勝利した。
同党の武部新環境政務官(北海道12区)、中谷元・元防衛相(高知1区)、小里泰弘元環境兼内閣府副大臣(鹿児島3区)、遠藤利明元五輪相(山形1区)、農林部会長として農業改革に関わった小泉進次郎筆頭副幹事長(神奈川11区)らも議席を確保した。
公明党では、石田祝稔政調会長(比例四国)、佐藤英道党農林水産部会長(比例北海道)が当選した。
与党以外の農林系候補では、無所属で立候補した篠原孝元農水副大臣(長野1区)、立憲民主党の赤松広隆元農相(愛知5区)が議席を確保した。北海道11区では、立憲民主党の石川香織氏が、自民党の中川郁子元農水政務官に競り勝った。
立憲民主党では、北海道3区で荒井聰元国家戦略担当相、辻本清美元国交副大臣(大阪10区)ら、希望の党では岸本周平元経済産業政務官(和歌山1区)らが勝った。
無所属では玄葉光一郎元外相(福島3区)、野田佳彦元首相(千葉4区)、岡田克也元民進党代表(三重3区)が勝利を収めた。
政権に注文相次ぐ
自民党の大勝を受け、今後、農業政策も含めて官邸主導の政権運営が加速するとみられることに対し、当選を決めた与野党の候補者から注文が相次いだ。
鳥取1区で当選を決めた石破茂元農相は、安倍政権が規制改革推進会議の提言などを基に、選挙公約と違う急進的な政策を打ち出してきたことに対し「規制改革(推進)会議がいかなることを言っても、法律にならなければ仕方がない。立法の過程で、立法府の一員であるわれわれがどう考えるか。それだけ立法府の責任は重い」と語った。
安倍政権が支持されたかとの質問には「内閣支持率が下がっていて、自民党が多くの議席を頂くというアンビバレント(相反する意見)が起こっている。どう考えるか」と答えた。
青森2区で当選を決めた同党の大島理森前衆院議長は「安倍政権は国民の信任を得たが、主権者あっての政治運営でなければならない」と述べた。
他方、愛知5区で当選を決めた立憲民主党の赤松広隆元農相は「戸別所得補償制度の復活しかない。農家が安心して農業に打ち込めるようにしないといけない」と述べた。
2017年10月23日
[2017衆院選] 安倍農政の是非 問う 米、農協改革、通商 きょう投開票 465議席に1180人
第48回衆院選は22日、投開票される。4年10カ月にわたる安倍晋三首相(自民党総裁)の政権運営への審判となる。農政では、首相官邸が主導する米政策や農協改革、環太平洋連携協定(TPP)をはじめとする通商戦略の是非が問われる。選挙後には、米の生産調整の見直しや卸売市場改革の議論が本格化。外交でもトランプ米大統領の来日やTPPの早期発効に向けた協議など重要局面が続くだけに、各党の主張を慎重に見極めることが必要になりそうだ。
自民党、公明党の連立与党は、市場原理や競争に軸足を置く農業の成長産業化路線の継続を訴える。一方、希望の党は直接支払いを軸とした農政転換を主張。共産、立憲民主、社民各党は所得補償など農家を下支えする経営安定対策を重視する。日本維新の会は、株式会社の農地所有解禁をはじめ急進的な改革路線を唱える。
各種世論調査では与党の堅調が伝えられるが、態度を明らかにしていない層もあり流動的な要素もある。与党は農政公約で過激な主張は控えているが、安倍政権は選挙後にTPP交渉参加や農協改革などを一気に加速させた経緯がある。今回も選挙後の勢力図によっては、農業分野を含めて規制改革の流れが強まる可能性がある。
今回は計1180人が立候補。「1票の格差」是正のため、前回2014年12月の衆院選より10議席少ない戦後最少の465(小選挙区289、比例代表176)議席を争う。小選挙区では、複数の野党候補が立候補する野党分裂型が227選挙区と、全体の8割を占めている。選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられてから初めての衆院選となった。
与党の公示前勢力は、自民党に党籍を残して無所属で立候補した6人を含めると計325人。首相は与党の勝敗ラインを過半数の233議席に設定した。自公に加え、地方分権などで憲法改正に前向きな希望や維新などを合わせた「改憲勢力」が、国会発議に必要な3分の2(310議席)を占めるかも焦点だ。
2017年10月22日