自治体の提案相次ぐ 外国人の農業就労 人手不足を背景に

 国家戦略特区内で農業への外国人の就労が可能になることを受け、特区への指定を国に提案する自治体が相次いでいる。生産現場の人手不足を解消しようと、これまでに少なくとも9区域が提案。国に実現性をアピールするため、JAグループと連携して受け入れ体制をつくる提案をする自治体も目立つ。一方で、政府は外国人就労だけでなく、従来にない大胆な規制改革の提案を求めており、特区指定を得るために、自治体が幅広い提案をする動きが強まりそうだ。

 政府は、大胆な規制緩和を実証する国家戦略特区法を6月に改正し、特区内で取り組める50超に上る規制緩和のメニューの中に、新たに外国人の農業就労を加えた。今後、受け入れ農家の詳細条件などを定める指針が固まれば、全国で10区域ある既存の特区では取り組みが可能になる。

 一方、政府は新たに特区に指定する自治体を年内をめどに選ぶ方針だったが、加計学園問題を巡る混乱を受け、追加指定は年明けにずれ込む見通しだ。

 同法改正前から農業への外国人就労の解禁を国に提案してきたのは群馬県昭和村や秋田県大潟村、茨城県、長崎県、愛知県。一方、同法改正以降も7月に長野県、8月に鳥取県境港市、米子市、大山町が合同で、9月に熊本県、群馬県が外国人就労の解禁を提案した。このうち、愛知県は特区に指定済みで、指針の決定を待って手続きを進め、来年中の受け入れを目指すとしている。提案には、JAグループとの連携を盛り込んだものが目立つ。長崎県の提案では、JA島原雲仙を外国人の受け入れ組織に位置付けた。同JAが人手不足の農家に支援人材を手当てする事業を展開している実績から、提案の実現性を訴えている。長野県も県域で外国人を受け入れるにはJAとの連携は不可欠だとして、提案をJAグループ長野と共同で行った他、熊本県もJAグループや行政などでつくる協議会が、外国人の受け入れ支援を担う内容とした。

 政府は、外国人材の受入促進を特区で取り組む重点分野に掲げるが、「新たな思い切った規制改革の提案も重視する」(内閣府)と強調。農業への外国人就労という単一の内容での提案では、特区に追加指定されにくい状況だ。

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