元ヤクルト・宮本が「野球離れ」に投じる一石

サッカーに子どもの参加者を奪われる現状

なぜなのか。「今の子どもの頭には、野球って選択肢に入ってこないんですね。そもそも知らない」と宮本は述懐する。「そんな子どもたちが、みんな楽しくやってくれている、つまらなさそうにやっている子はいない、というのが収穫といえば収穫かな」。

子どもだけでなく、その両親もプレーに参加

最近では、園児とともに、その父母も野球教室に参加するようになった。「幼稚園や保育園に行き始めた頃は、園側が気を利かせて、父兄の方はご遠慮くださいという感じだったのですが、僕のほうから『いやいや、お父さん、お母さんも一緒に』と呼びかけて一緒にやってもらうことにしました。子どもはたぶん僕のこと知らないけど、お父さんお母さんは僕のことを知っている人が多いでしょう、そちらを取り込まないとなかなかやってくれない。終わってから意識的にお母さんと写真を撮って『野球やってくださいね』と声をかけたりもしています」。

この教室で行うのは、厳密に言えば野球そのものでなく、「ティーボール」というゲーム。ティーボールは軟らかいボールを使い、本塁の後ろに設置した器具(バッティングティー)にボールを乗せて、止まったボールを打つ競技である。

キャッチボールをしたことのない子どもも多い。野球に親しんでもらうために、ボールを投げたり、打ったりする楽しさを知ってもらうところからスタートしている(撮影:今井康一)

宮本は、NPBの指導者講習会に参加してティーボールに触れたという。「あ、これだったら野球と違って、打って走るだけだし、わかりやすいんじゃないかと。それに、ボールが飛ぶとそこにみんなが集まっていくので、ぼーっとしている子もいなくなるし、みんなが参加できるし、いいなと。野球って考えてみれば難しいスポーツなんですが、興味を持つとっかかりになればいいですよね」。

宮本は、2014年にNHKの「課外授業 ようこそ先輩」という番組に出演し、母校の大阪府吹田市の藤白台小学校を訪問した。この番組では、3人1組でダブルプレーを体験させようとしたが、思わぬところで壁にぶつかった。宮本の遠い後輩にあたる小学生たちに野球のルールを知る子がほとんどいなかったのだ。「僕らの時代はテレビをつければ野球をやっていたが、今は違う。そのことを実感しましたね」。

こうした「野球離れ」の原因を、宮本はどのように感じているのか?「今は何でも自由じゃないですか。社会全体が何でもありになっている。僕らは規律の中で育ったし、ちょっと違う。その点、サッカーは自由な部分が多いように感じます。入ってみたらそうでもないのかもしれませんが、野球はそれに比べれば入りづらい。今のお父さんやお母さんがすっと入っていけるのがサッカーなんじゃないですか」。

次ページ宮本が現役のプロ野球選手に期待すること
関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

  • NO NAME81aafd22bda1
    野球人がサッカーや他の競技に子供を取られてるという被害者意識を持ちづづけている限り上向くことはないだろう。それこそサッカー帰りの子供がふらっと参加したりしなかったり出来るぐらいのカジュアルさが必要。野球のために子供がいるわけではないし、野球以外からも大切なことは学べるのだから。
    up73
    down8
    2017/10/9 17:22
  • NO NAME5deccdb13a1e
    野球って他競技と違って「野球だけの普及活動」しかしないよね
    しかもメディアや信者がそれを賛美するから本当に煩わしい
    常に自分達の利益になる事しか考えていない

    他競技は「夢先生」など子供に様々なスポーツを楽しんでほしいために教えるのにね
    up59
    down6
    2017/10/9 13:49
  • NO NAMEad7201252f90
    ゲーム(試合)中の運動量は、他の競技に比べると極端に少ない。攻撃側にいるときは、打者以外はベンチで休憩できるので、汗をかくスポーツが好きな子どもやサッカーのように動的な判断力や運動能力を面白いと思う子どもは、他のスポーツを好むのか。
    up54
    down6
    2017/10/9 10:03
  • すべてのコメントを読む
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!
トレンドウォッチAD
日本を動かす<br>地方の名門企業77

日本各地には、地元財界の顔として政治力・経済力をいかんなく発揮している企業がある。圧倒的な存在感とパワーを持つ名門企業の実態に迫り、今後の成長が期待できる地方発“次世代企業”を取り上げた。