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【社説】

アベノミクス 再加速の前に検証せよ

 総選挙に勝利した安倍晋三首相はアベノミクスを再加速させるというが、待ってほしい。物価目標も財政再建目標も達成できず、大企業や富裕層を利して格差を広げる政策を強化していい訳がない。

 選挙で勝利が決まるやいなや、早くも来年の通常国会への補正予算案提出が話題に上っている。

 ある時は景気拡大が戦後二番目の長さで続いていると喧伝(けんでん)する。またある時は国難だとか、少子高齢化が最大の課題だと危機を煽(あお)り、財政出動の必要性を強調する。少子高齢化はもう積年の課題である。ご都合主義も甚だしい。

 第一の矢である異次元緩和は、二年で2%の物価上昇を目標とした。だが、もう六回も達成時期を先送りし、いつ実現するか展望できないままだ。

 第二の矢の機動的な財政出動は、超低金利ですっかり財政規律が緩み、大盤振る舞いが止まらない。国と地方の借金は一千兆円を軽く超えた。赤子からお年寄りまで国民一人八百万円超の借金を背負う状態だ。財政健全化目標だった二〇二〇年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させる国際公約も達成できない。

 毎年、看板を付け替える成長戦略も、経済の実力を示す潜在成長率が1%に届かない現状をみれば不発だとわかる。

 「成長と財政健全化の両立」をうたったアベノミクスは完全に失速している。再加速させれば、何とかなるとでも思っているのか。

 首相は選挙中、正社員の有効求人倍率が一倍を超え、雇用環境が改善したと胸を張った。だが地域差が大きいうえ、高倍率は警備や建築・土木、接客・給仕、介護、トラック運転手など厳しい労働条件の割に待遇が良くない職種だ。

 そもそも首相が国難と呼ぶ少子高齢化が人手不足を生み、それが雇用の数字を改善させているだけなのではないか。

 企業業績が最高益を記録するのに賃金はほとんど伸びない。金融資産を三千万円以上保有する富裕層の比率が上昇する一方、保有ゼロ世帯は三割を突破した。自らに都合のいい数字ばかり取り出して強調するのではなく、高まる一方の財政や金融のリスクも同時に俎上(そじょう)に載せ検証すべきだ。

 格差を放置せず、効果が見込めないアベノミクスには見切りを付け、労働分配率を高めさせたり所得の再分配に力を入れるべきだ。

 今のままでは確実に主要先進国に置き去りにされる。再加速よりもまず検証と見直しを求めたい。

 

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