3 Lines Summary
- ・介護事業者の倒産件数はここ5年で急増
- ・倒産が相次ぐ背景にあるのは「介護スタッフの不足」
- ・倒産によって入所者が大金を失うこともある
老人ホームなど介護事業者の倒産件数はここ5年間で急増。
去年は108件と最多となった。
介護の需要は増えているのに、なぜ介護事業者の倒産が相次ぐのか?
介護施設の運営会社が倒産、閉鎖を告げられる
北海道・旭川市に住む山口美保さん(62歳)。
88歳の母・洋子さんが1年入居していた、市内の介護施設の運営会社が倒産。
先月、閉鎖すると告げられ、別の施設へ移らざるを得なくなったのだ。
洋子さんは現在、着替えや入浴に介助が必要な「要介護1」。
介護施設からの退去の期日はわずか“3週間”。
10カ所近くの施設に足を運び、母の友人が入る施設に移ることが決まったのだが、洋子さんは「やっぱり不安でした。生活の環境が変わったらね」と不安を口にする。
突然の環境の変化は、高齢者にとって大きな負担になるのだという。
介護事業者の倒産が相次ぐ背景
事の発端は、北海道内で23の介護施設などを運営していた「ほくおうグループ」の倒産。
施設の部屋数は1600以上と道内では最大規模。
中には去年10月に完成したばかりの施設もある。
それがなぜ倒産という事態になったのかというと、競合施設の増加による競争激化の中、事業拡大を続けたが、人件費の増加などが経営を圧迫していったのだという。
老人ホームの入居支援などを行う「有料老人ホーム入居支援センター」の代表・上岡榮信さんによると、倒産が増えている背景にあるのは介護スタッフの不足。
介護施設が増える一方で、介護スタッフを確保できず、経営が圧迫されていくのだという。
退去者を受け入れた施設にも影響が
こうした倒産の影響は、退去者を受け入れた施設にも及んでいる。
たとえば、倒産した「ほくおうグループ」の施設から8人を受け入れた施設。
早朝は、わずか4人のスタッフが入居者28人の介護に奔走。
人手を補うため求人募集を増やしたが、新たな人材の確保は難しく、増加していく求人広告費が負担になっているという。
退所者2人を受け入れた別の施設、「夕焼け小やけ」の代表の代表・富居典弘さんは、人手不足の慢性化がサービスの質の低下を招くと危惧している。
倒産によって生じる想定外の出費
倒産の影響で想定外の出費に悩まされる人もいる。
札幌市に住む黒田綾子さん(62歳)。
認知症を専門に介護する「ほくおうグループ」の施設に、94歳の母・みえ子さんが入居していた。
みえ子さんは重度の認知症で要介護5。
認知症専門の施設に空きがなく、通常の介護施設に移ったところ、以前はかからなかった昼食介助など、追加のサービスが月2万7000円。
他にも部屋の管理費など、1カ月で5万円以上負担が増えたという。
黒田さんは、認知症の母への負担を考えるとこれ以上の転居は難しいと考えている。
介護施設の倒産で大金を失うことも
介護施設の倒産で大金を失うケースもある。
父親が入居する介護施設が倒産し、360万円が戻ってこないと訴える岡江さん兄妹。
入居一時金という、家賃や実費などに充てられる前払金で、500万円以上を支払ったという。
本来、施設の運営者には倒産などに備え、入居一時金を利用者に返金できるよう、保全措置を取ることが義務付けられている。
「全国有料老人ホーム協会」と保全契約を結ぶので、倒産しても返金があると説明があったそうなのだが、協会に問い合わせると、一時入居金は返金できないとのことだった。
その額が諸費用を差し引いた360万円だ。
その後、施設側が保全措置に必要な保証金、1人当たり20万円を協会に納めていなかったことが判明。
保全措置を講じなかった理由について、倒産した事業者の代理弁護人に聞くと、20万円が捻出できないほど経営が悪化していたからなのだという。
現在、岡江さんは少しでも多くお金を取り戻すべく、弁護士と協議を重ねている。
4%の施設が入居一時金の保全措置を講じず
森本さやか(フジテレビアナウンサー):
みなさんコツコツ貯めてきたお金で終の棲家をここに決めたと、そしてお金も払って施設に入ったわけですね。
それが倒産で出ていかなくてはいけない、お金は返ってこないというケースがあるそうなんです。
厚生労働省の調査では、去年6月時点で4%にあたる53施設が入居一時金の保全措置を講じていなかったことが分かっています。
保全されているかどうかは施設に確認するだけでなく、倒産したときにお金を払ってくれる保全先にも今後は確認した方がいいということです。
良い介護施設を見分けるポイントは?
では、どんな介護施設を選べばいいのか?
「有料老人ホーム入居支援センター」の代表・上岡榮信さんによると、良い介護施設を見分けるポイントは2点。
1つは「職員総数が入居者数の8割以上いるところ」。
これは介護スタッフだけではなくて、掃除をする人、食事を作る人など、働いている人の総数が、入居者数の8割以上いるかどうか。
人手足りているかどうかしっかり確認することが大事。
もう1つが「90歳以上の入居者が3割以上いるところ」。
これは看取りまでちゃんとケアができる取り組みがされているか。
入居者の年齢が高いということは、入居年数が長く、満足度が高いということでもあるので、こういったところをポイントに選ぶといいのだという。
獨協大学経済学部特任教授の深澤真紀さんは、良い介護施設を見分ける方法として重要事項説明書の熟読をすすめている。
深澤真紀:
重要事項説明書って契約するときに見せてもらうわけじゃなくて、その前から実は必ずインターネット上とかに見せなきゃいけないっていう決まりがあるらしいんですね。
入る前はみなさん、きれいなパンフレットだけをご覧になるらしいんですけど、最初から重要事項説明書が見られるそうなので、職員の数も分かりますし。
あと私が大事だって聞いたのは、何年その施設で働いているかっていうことも、重要事項説明書に書かなきゃいけないんですって。
1年以下という施設もあるそうなので、長く働いている職員の方が多い施設を選びなさいっていう風に聞きました。
(『とくダネ!』10月18日放送分より)
介護施設で相次ぐ倒産。需要は増えているのになぜ?(この記事)
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