北海道議会予算特別委員会 (2011年12月6日)
◆(小野寺秀委員) 本当にそれでいいのですかね。知事が、財団に対しても厳しく指導する、アイヌ協会に対しても厳しく指導すると言ったにもかかわらず、現物がなく、払ったお金を返してもらう努力をしているだけで、本当にいいのか。私は、もしかしたら、これは犯罪かもしれないというふうに思っておりますが、多くの質問がありますので、次に進みます。
次に、アイヌ文化振興財団がつくっている副読本についてお伺いをしてまいります。
アイヌ文化振興財団が、小学校4年生と中学校2年生の全道すべての生徒に副読本を配って、授業を行っているというようなお話をお聞きしておりますが、副読本に書かれている表記には、多くの問題があるというふうに私は思っています。
例えば、「1869年に」──明治2年ですが、「1869年に日本政府は、この島を「北海道」と呼ぶように決め、アイヌの人たちにことわりなく、一方的に日本の一部にしました。」という表記があります。この記述では、明治2年当時、アイヌが北海道を支配していたと認めるような文章になっていて、これは誤解を招く表記ではないかというふうに思いますが、この点について、私は、歴史的事実と認識が食い違うというふうに考えておりますが、部の見解をお聞かせ願います。
○(道下大樹委員長) 環境生活部長山谷吉宏君。
◎(山谷環境生活部長) 副読本の記述内容に関連してでございますが、財団で発行しております小学生向け副読本には、委員が御指摘の点が記述されておりますが、北海道の帰属などにつきましては、平成4年1月の、参議院議員からの質問主意書に対する政府答弁書によりますと、「いわゆる北海道本島は、我が国の固有の領土であって、これが具体的にいつ我が国の領土となったかは明らかではないが、江戸時代末から明治時代初めにかけて、我が国とロシアとの間で国境の確定が行われた際、いわゆる北海道本島については全く問題とならず、これが我が国の領土であることは当然の前提であった。」「いわゆる北海道本島は我が国の固有の領土であり、アイヌの人々は本来日本国民である。」「いわゆる北海道本島において、アイヌの人々が古くから住んでいたということは、文献等からみて通説になっていると承知している。」と記されており、そうした歴史的経緯を踏まえて、今日に至っているものと理解をしております。
以上でございます。
◆(小野寺秀委員) では、この副読本に書いてある「アイヌの人たちにことわりなく、」という表記は必要ないのじゃないでしょうか。何で断りを入れなきゃいけないのだというふうに思いますし、そこら辺のことは、しっかりと精査をしていただきたいというふうに思います。
副読本について質問を続けますが、北方領土の件に関係してお伺いしますけれども、北方領土に関するパンフレットの「北方領土問題を学ぼう」の中に、「北方四島(北方領土)は、いまだかつて一度も外国の領土となったことのない」との記載がありまして、北海道本島も同じであるというふうに私は思います。
平成19年に、国連総会において、アイヌが先住民であるという決議をしておりますが、この採択に当たって、我が国の考え方をしっかりと説明した上で、国連の決議として採択をしたというふうに考えておりますが、アイヌ民族を我が国がどう考えているのかということを御説明願います。
◎(山谷環境生活部長) 北海道の帰属の考え方などについてでございますが、先ほど御答弁を申し上げましたとおり、平成4年1月の、参議院議員からの質問主意書に対する政府答弁書によりますと、「江戸時代末から明治時代初めにかけて、我が国とロシアとの間で国境の確定が行われた際、いわゆる北海道本島については全く問題とならず、これが我が国の領土であることは当然の前提であった。」とされているところでありまして、そうした歴史的経緯を踏まえて、今日に至っているものと理解をしております。
また、先住民族の権利に関する国際連合宣言の採択に際しての政府の考え方についてでございますが、平成21年7月に取りまとめられた、国における、アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会の報告書によりますと、政府の考え方につきまして、我が国政府は、宣言に言う自決権については、宣言が明らかにしているように、先住民族に対して、居住している国から分離、独立する権利を付与するものではないこと、宣言に言う集団的権利については、宣言に記述された権利は個人が共有するものであり、各個人がその有する権利を、同じ権利を持つ他の個人とともに行使することができるとの趣旨であると考えること、さらに、宣言に記述された権利は、他者の権利を害するものであってはならず、財産権については、各国の国内法制による合理的な制約が課されるものであると考えていることなどを説明したとされているところであります。
以上でございます。
◆(小野寺秀委員) ということは、多分、国連宣言の言う先住民と、我々がアイヌを先住民だとする先住民の意味は違うというふうに私は思っておりますし、ともすれば、アイヌの方々が先に北海道に住んでいて、日本人がそれを奪ったというような間違えた認識が広がっていると感じておりますので、それは違うのだということを、北海道としてもしっかり広報していただきたいと思いますし、それが非常に重要なことだと思っております。
次に、副読本の編集委員の選任についてお聞かせ願いたいというふうに思いますが、この副読本は、編集委員会をつくって作成しているわけですけれども、編集委員長がアイヌ協会のある支部の支部長さんで、あとの多くは小学校の先生というメンバーで、この副読本をつくっています。本当に、これで問題がないのか。専門家が余り入っていないのですが、その点についてお聞かせください。
○(道下大樹委員長) アイヌ政策推進室長和田秀樹君。
◎(和田アイヌ政策推進室長) 副読本の編集委員の選任に関連してでございますけれども、財団では、この副読本の作成に当たり、学校教育の場で活用する補助教材として、道内外の小学校、中学校に配付するため、アイヌ文化伝承活動実践者が3名、アイヌの歴史や文化に関する研究者が2名、学校でアイヌに関する授業等に取り組んだ経験のある教員が4名、計9名から成る編集委員会を設置し、数次にわたる検討を行い、それぞれの専門分野ごとに分担執筆をし、相互にチェックするなどして作成するなど、財団において所定の手続を経たものと承知しております。
副読本が義務教育課程において活用されることを財団におきましては十二分に認識して作成されることは、当然のことでありますので、このような視点のもとで、選任手続が進められることが必要ではないかと考えているところでございます。
◆(小野寺秀委員) 財団がつくっているからといって、北海道がその内容を知らないということにはならないと思います。
先ほど言ったように、北海道に関して、アイヌに断りもなく、一方的に日本にしたというような表記は、本当に問題があると思いますし、日本国民の概念についての表記も、日本国民は多民族である、その中には、アイヌ民族や和人、在日朝鮮・韓国人が含まれるというようなことを書いてありますが、民族の定義もなしに、そのようなことを書いていいのかというふうに、私は非常に疑念を持っておりますが、もし、こういうような間違えた表記があった場合には、道は、どのような責任をとる必要があると考えているのか、お聞かせください。
◎(山谷環境生活部長) アイヌに関します小中学生向け副読本の発行にかかわる道の対応などについてでございますが、委員が御指摘の副読本につきまして、その編集等につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、財団で、それぞれ編集委員等を選任し、編集委員会を設置して作成してきているところではあります。
しかしながら、その記述内容や表現などにつきましては、学校教育の場で利用されるという観点から、児童生徒の発達段階に即し、わかりやすく、より適切なものとなるよう、不断に努めていかなければならないものであり、そうした観点に立って、編集の進め方などについて、財団を所管する国と協議し、適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
以上でございます。