今日、息子の気持ちが崩れそうになっていた。
朝起きた時から、目が潤んでいた。
「怖い夢でも見たの?」
「違う」
「……とりあえず、トイレ行って着替えようよ」
できるだけ穏やかに、そう言いながらも、内心ドキドキしていた。
本当に具合が悪くなって、会社を休みことになるのが嫌だったからだ。
昨日も、台風の影響で、出勤日を変えてもらったのに、今日まで、行けないとは言いにくい、でも……。
本当に、体調が悪いのか、精神的なものなのか、どちらかの見分けにナーバスになった。
その後、息子は、トイレに行くと
「お腹が痛いのに、便が出ない」
と言った。
「とりあえず、ご飯を食べちゃおうよ!」
なんとかごまかしながら、食卓に着かせると、息子がいよいよ泣き出した。
「昨日は、台風で、3時間目からの授業で楽だったのに、今日は、6時間もあって、しかも習字もあって、本当に嫌だ」
途切れ途切れではあったけれど、そんな風に言って、息子は大泣きした。
そっか、どっちかと言うと、気持ちの問題が大きいのか……。
決して、気持ちの問題ならいいというわけではないけれど、体の具合が悪いよりは、どうにかなりそうな気もする。
本当は、イライライしていたし、「そんなことで泣かないで」と言いたかったけれど、グッと堪えた。
それは、優しさからではなく、私の打算的な考えからだった。
今追い詰めて、もっと泣かせても、誰も幸せにならないと思ったから。
「そっか、なるほどね。そう思ったんだね」
私がそう言うと、今度は旦那が、
「そうだよな。そりゃそう思うよな」
と言った。
すると、息子は、もうひと泣きしてから、トイレに行ったようだった。
そして、スッキリした顔で出てきた。
私は、洗面所で手を洗う息子に、こう言った。
「お母さんもさ、頑張ってくるから、ユウも頑張って。一緒に頑張ろう」
息子は頷いた。
頑張らないと行けないのは、わかっているけれど、どうしようもない気持ち。
それを、誰か、今日の場合は、おそらく、私にわかってほしかったんだと思う。
うん。気持ちわかるよ。
そうなんだね。
気持ちを受け止めることで、物事がスムーズに進んだ。
だけど、偉そうに、さも、優しい母のような顔をしながら、事情を受け止めてもらったのは、きっと私の方だと思う。
ごめんね。
気持ちを奮い立てて、学校へ行ってくれてありがとう。
息子も頑張っているんだと思うと、私も頑張れる。
そして、そんな私たち二人を見守ってくれているのが、旦那。
旦那には、もっと感謝しないといけないな。
気持ちが崩れそうな息子を支えたのは、誰なのか?
私に見えて、本人かもしれないし、旦那かもしれない。
家族って不思議なバランスだなと思った。