日本は世界でも稀に見る程、ペットショップが乱立しています。
そうなると里親が見つからない子達も出てくるのは必然でしょう。
では、引き取られなかった犬はどうなるのでしょうか?知られているようで、余り深く考える機会が少ないのが現状です。
先日まで目にしていた子犬はどうなったのか、引き取られたのかそれとも何らかの理由でどこかに連れて行かれたのか、犬好きとしては勝手に心配してしまいます。
メディアにも取りざたされるような状況に、売れ残った犬がどうなるのか?どんな生活を送るのか?調べてみました。
■目次
売れ残りは負の流通スパイラル
そもそも、どうしてペットが売れ残ってしまうのか。沢山の里親候補が居る中でもこの問題は解決する事が難しいです。
タイミングの問題もありますし、人気のある犬種は在庫をストックしておきたいものですから、犬種による需要と供給のバランスにも寄る所も大きいのです。
また、犬の性格や動きに違和感を感じたり、先住犬との愛称が悪そうだったりと理由は色々考えられます。
ですが、一番大きいのはペットショップとそれを取り巻く流通の在り方そのものなのです。
生後どれくらいまで子犬が売れるか
生後間もない子犬は本当に可愛いですよね。
ペットショップには産まれてすぐの子達が沢山並んでいますし、その可愛さに沢山のお客さんが人だかりを作っている光景を良く見かけます。
では、その子達は何歳までいるのか?と言いますと、実は生後半年未満の子達がほとんどです。
犬の需要される年齢は相当に短く、人気犬種などによっては例外もありますが、基本的に子犬が高値で取引されるのは生後3ヶ月未満がほとんどです。
そこから少しずつ人気にかげりが出始め、半年を過ぎて来るともう売れ残り対象になってしまうのです。
その為、次から次へと新しい子が入ってきて、もと居た子たちが止む無く出て行く結果になってしまうんですね。
なぜペットは売れ残ってしまうのか
ペット大国日本だからと言って、国内全ての犬を全人口で飼育するわけにはいきません。
つまり、せっかく産まれてきても、全ての犬が幸せな家庭に引き取られるとは限らないということです。
むしろ繁殖量に比べて里親になれる人間の割合は不十分と言えます。
ペットオークションに出すブリーダーからすれば人気犬種はいくら居ても困らないですし、沢山居ればそれだけ儲かると在庫を抱えたがるブリーダーもいます。
また、ショップの中にもそんな事はお構いなしの人たちが多数居ます。
ペットショップも商売ですから、沢山売る事で成り立ちますし、特に人気のペットはペットオークションで仕入れるだけでなく、大量生産を目的としたような繁殖を自社でさせているショップすらあるのです。
「大量生産すれば当然売れ残りも出る」と公益社団法人動物愛護団体の方も現実に頭を悩ませているものです。
売れ残り対象の犬達
月日が経ち、大きくなってきた売れ残り対象の犬達は、連休などを利用して値引きセールなどで販売促進を掛けます。少しでも売れるように企業努力をしているんですね。
これまでに投与してきたワクチンや薬代を回収する為にも、ワンちゃんの幸せの為にも必要な事です。
良く知っている方はすぐに散歩に連れ出せるとの思いから、このチャンスに更に値引き交渉する方もいらっしゃいますが、ほとんどの方は大きくなるにつれしつけ等もしにくくなったり、小さい子の方が可愛く見えたりと見向きもしないものです。
セールで買われていく子もたちそう多くはないんです。
売れ残り確定の犬達のその後
最後のチャンスに、譲渡会に参加し里親募集してもらう子たちもいますが、そこで里親が見つからなければ終了です。
飼い主が見つからなかった子たちには様々な運命が待っています。
運が良い子達はお店の看板犬になったり、店員さんの友人に引き取ってもらって、しっかり可愛いがってもらう子たちもいます。
また、系列店などの安売りしているショップに回して再販の努力をしているショップもあります。
しかし、幸せになれる子たちばかりではないのです。
繁殖業者に引き渡され、繁殖犬としてただひたすらに繁殖を繰り返すだけの地獄のような日々を送る子たちもいるんです。
または保健所に持ち込まれて処分されてしまいます。その他にも山林に捨ててしまう悪徳業者も存在します。どのケースでも子犬にとっては決して幸せでない事だけは間違いないです。
放り出された犬達のその後
繁殖業社に引き渡された犬にも引退は来ます。
精一杯生きてきた子ですが、繁殖引退犬となればもう用無しです。
産まれ持っての病気でショップからブリーダーへと帰ってくる可愛そうな子達と同様に、商品価値はないのです。
これまでに沢山産まれてきた子たちも増えすぎてしまえば、みんな処分対象と見なされてしまいます。
売れ残れば仕方ないと言わんばかりの悪徳ブリーダーが横行している為に、供給過多になる事も多く、社会的問題になっている現実もあります。
私たちが知っている以上に、想像以上に生産過多なのです。
そうなると、動物には最低でも水とフードが絶対に必要ですから一刻も早く手放したいものです。
とはいえ、動物愛護法改正によって保健所が引取りを拒否できるようになってからは簡単には手放せなくなりました。
そこで動物取扱業者が使う手が「引き取り屋」です。
引き取り屋とは、1万円前後で犬猫を引き取る業者の事で、この引き取り屋に多くのペットが引き取られ、犬たちも劣悪な飼育環境で心を折られていく事になるのです。
引き取り屋と犬の生活
闇の犬猫販売業者で「引き取り屋」をしていた男が動物愛語法違反の容疑で告発された事があります。
犬舎はボロボロで狭い檻に何頭も詰め込み、ろくに掃除もエサも与えないというような環境に犬たちは晒されていました。
これは明らかな虐待です。
エサも散歩もない、ケージはボロボロ、掃除をしない為に皮膚病その他の病気にもかかる、飼育環境が劣悪で犬側の視点に立てばストレスのはけ口が見当たりません。
犬は次第に心を閉じて何も感じないようなり、そこに居ない事にしてただ「居るだけ」の生活を送るようになるんです。
ただ産まれて、引き取り手がなく流れ着いたのが最悪の世界です。
公的機関が動くにもそれなりの理由も必要となりますし、虐待やネグレクトに介入するのは難しく、彼らは震える事しかできません。
これがペットショップから流れた犬の末路です。
これからも増える保護犬
メディアでも保護活動や処分ゼロに取り組むものがありますが、現実はテレビのように必ずしも上手くいく訳ではないです。
命は大切、処分が可哀想だからと沢山の犬を保護した人物が、結局手に負えなくなり犬たちを置き去りにして消えたというような事もありました。
保護施設に収容されてはいるが、収容環境や場所が遠い問題があり、引き取り手が決まらない事や持病や怪我、年齢が仇となり中々里親が見つけられないという事もあります。
個人や一団体では限界があるのも事実で、保護された子達はまともな生を送れているだけでも良かったとは思いますが、この先の現実を見ると次々に保護しなければいけない難民犬が増え続け、手が回らなくなるのではないかと不安になります。
ここでもまだ負のスパイラルが続いています。売れ残った子たちはどの子たちも苦労していく事になるのです。
このままでは動物福祉自体が破綻してしまいます。
過度の繁殖を無くさない限り続く売れ残り
冒頭でも触れましたが、ブリーダーからペットショップへと流れる、この流通システム自体に問題があります。
ペットショップからお客さんではなく、業者に流れていく事もあるこのシステム。
沢山作って沢山仕入れる。全て売れていないのに新たに送り込まれた分がはじき出される事は、自然の摂理ですから。
現状を変える為にはこのシステムから変更しなければ、生産過多のまま難民の数は増える一方です。
繁殖時期や繁殖の回数制限、取り扱い業者の責任負担増などが叫ばれています。
その為には法改正するしかないでしょう。
愛護団体や専門家からも声は上がっていますが、簡単に片のつく問題でもない為に難航している状況です。
不幸な子たちが産まれてこないようにする為にも、管理面から見直さない限り現状は打破できないでしょう。
まとめ
ペットの売れ残りは人為的に引き起こされているものであり、放出後の放置や処分、虐待までに行き着くような残念な人生も、また人間の手によって引き起こされているものです。
もう少しだけ皆さんがペットの事を考えてあげられたらと残念でなりません。
確かに、日本は先進国ではありますがペット後進国でもあります。
長らくショーケースで展示して販売する方法が取られていますが、産まれたばかりの子犬に負担が掛かると、他の先進国では動物虐待に当たるのでは?と批判の声も上がっていたりします。
動物愛護の法律にしても動物取扱資格にしても、海外とは比べ物にならない程遅れているのが現実です。
海外にはペットショップ自体がない国の方が多く、日本のように放出されて残念な人生を送る事はまずありません。
また、ペットショップ経営に当たり、いくつもの厳しい審査基準をクリアしない限りライセンスの発行もしてもらえないのです。
近年の日本でも意識が高まってきていますが、命を扱う限りの最低限のモラル的法律を整備してもらわない限り、終わりは見えません。
売れ残りやその他の放出も含め、少しでも減らすには意識改革をさせる縛りが必要です。
皆さんに少しでもこの記事を通じて現実を伝えられたらと思います。
癒しを与えてくれるペット達に幸せに生きて欲しいと願っています。