サラリーマンの借金の実態と上手に借りるテクニック~その2 住宅ローン
サラリーマンの借金の実態と上手に借りるテクニックその1では、カードローンについて、銀行系と消費者金融系の違い、おまとめローンのメリット・デメリットなどについて解説しました。その2では、サラリーマンがする最も大きい借金である、住宅ローンについて解説します。
住宅ローンの歴史は、実は相当古い
住宅ローンのサービスは、戦後発達したサービスですが、実は、すでに100年以上の歴史がある古くからのサービスになります。
住宅ローンのはじまり
出典 東京建物株式会社
https://tatemono.com/company/history.html
住宅ローンの最初は、1896年に、東京建物から販売されたと言われています。日清戦争が終わったころ、経済も活況になり、市民に対しても新築住宅のニーズが高まってきました。
しかし、市民が高額を手当てするには、個人金融業者に頼るしかなく、これが売買の弊害になっていました。そこに目を付けた、安田財閥の創始者の安田善次郎により、創設されたのが、東京建物だったのです。
東京建物はもともとは金融を扱ってたのですね。このころの住宅ローンは、返済期間を5年以上15年以内、と定めていたそうです。
関西の産声
出典 阪急電鉄
http://www.hankyu.co.jp/cont/ichizo/
一方、関西では、阪急電鉄の創始者である小林一三により、住宅ローンが行われたそうです。もともと、阪急電鉄を創業した際に、鉄道沿線の負荷を高めるため、百貨店(今の阪急百貨店)や、娯楽施設(宝塚歌劇団など)を設置していきました。
その一環で、事前に安くしいれた土地に、鉄道を敷き、住宅を販売していました。この際に、土地付き住宅を月賦販売ではじめたそうです。これにより、いわゆるサラリーマンにも、住宅が買えるようになりました。
その後の普及は?
その後、1950年代に、特殊法人住宅金融公庫が設立され、持ち家普及が進んでいきました。
住宅投資政策の一環や財政投融資による潤沢な資金調達環境を背景に、25年超の長期間固定金利で貸し出すことができ、かつ民間金融機関よりも低い貸出金利であったこと等から、これを背景に、バブルの後押しもあり、住宅ローン、住宅保有が進んでいったのです。
アメリカでも住宅ローン制度は盛ん?日米住宅ローンの違い
一方アメリカでも、古くでは住宅を持つことが、「アメリカン・ドリーム」と言われていたように、古くから住宅ローン制度は盛んでした。
貸付の対象が違う
日本とアメリカでは、住宅ローンは大きな違いがあります。日本は、主に借主の収入や保有資産、返済能力など、「人」に貸し付けるローンです。一方、アメリカでは、不動産の評価を非常に重要視します。
その価格が住宅マーケットから見て妥当か、何年か後に競売にかけた時に債務を回収できるかどうかを、免許を保有した査定業者に査定してもらいながら、金融機関自身が判断します。市場価格の他に、更地にしたら、同じ間取りの家を建てるにはいくら掛かるか、どの程度の家賃を取れるかを検討しながら査定を行います。
これは、日米の住宅マーケットの違い、およびローンの違いによるところが大きいです。日本ではまだまだ新築願望が強いですが、アメリカでは中古住宅のマーケットが明らかに大きく、成熟しています。よって、不動産価値が中古であっても、比較的きちんと価格づけられることが特徴です。
売却時の違い
また、ローンの種類も異なります。日本はリコースローンという方式をとっており、仮に住宅を売却し、その売却価額を返済に充てた際、返済額に売却額が足りない場合は、借主がその責任を負います。一方、アメリカでは、ノンリコースローンの方式をとるところが多く、仮に返済額に売却が足りない場合は、借主でなく、金融機関が損金として処理します。
もともとの金額が鑑定価格に足りなくても、値上げを見込んで、金融機関が満額貸す場合があります。こういったローンは、リスクがある分、金利も高くなります。こういうローンをいろいろな金融商品に商品化し、混ぜ込んだ結果、不動産バブルの崩壊とともに引き起こされたのが、2006年のサブプライムローン問題になります。
住宅ローンの知られざる3つのメリット
住宅ローンは、満額借りたい人もいれば、できるだけ借りたくない人もいると思います。住宅ローンといっても、借金には変わりないですからね。
しかし、住宅ローンには、通常の借金よりはるかにメリットが大きい場合があります。住宅ローンのメリットには、以下のようなものがあります。
【住宅ローンのメリット】
- 大きな金額を安い金利で借りることができる
- 団体信用生命保険による、安心保証
- 住宅ローン控除による、税務メリット
大きな金額を安い金利で借りることができる
まず第一のメリットが「大きな金額を安い金利で借りることができる」ということです。住宅ローンの金利は、通常の金利と比べると、随分低く設定されています。借り方によっては、1%を切る金利で借りることができます。ラリーマンの借金の実態と上手に借りるテクニックその1で出てきたカードローンに比べると、信じられないくらい安い金利ですね。
固定金利のメリット
また、固定金利で借りれることもメリットです。通常、長期で金利を読むことは不可能です。たとえば30年前は、金利が5%を超えていたのが当たり前でした。今は超低金利自体と言われております。この金利で、35年や25年など、お金を長期期間借りることができるわけです。
金利が固定されているというのは、安い金利で借り続けられることはもちろん、金利が安定しているのは、返済の計算をする際に非常に便利です。事業用のローンは、大抵は変動金利で設定されますので、これは住宅ローン特有のメリットといえるでしょう。
団体信用生命保険による、安心保証
もう一つ、住宅ローンを利用する大きな利点として、団体信用生命保険の利用があります。民間の住宅ローンを使うときには、必ず加入を求められます。
加入者に”もしも”のことがあった場合には、生命保険金からローンの残金が支払われます。これにより残された家族はその先のローンの支払いを心配することなく、持ち家に暮らし続けることができます。
もしものこと、というのはあまり考えたくありませんが、こういう保証があることで、住宅ローンの心配をしなくてもいいことは、隠れたメリットと言えるでしょう。
住宅ローン控除による、税務メリット
「住宅ローン控除」や「住宅ローン減税」と呼ばれる、住宅ローンにだけ優遇される税制があるのも大きなメリットです。これは、国が住宅取得を後押ししているようなものです。
ローンを組んで住宅を購入した人に対しては、所得税や住民税が軽減されます。サラリーマンは思った以上に税金を払っているので、これは嬉しい仕組みですね。
減税対象となるのは、新築住宅の購入だけではありません。中古物件や増築、リフォーム工事などでローンを利用した場合も、控除対象になる場合がいくつもあります。
税制は年度ごとに変わったり、何年かにわたる時限措置だったりするので、購入時にどの税金がどれだけ軽減されるのかを確認するとよいでしょう。
- もっとお得に
- 減税だけでなく、各地自治体による助成制度がある場合もあります。例えば、耐震性を高めるような建築や、太陽光発電システムの施工などの省エネ関連の工事には、多くの自治体が助成支援策を打ち出しています。これをチェックすることで、お得に住宅を建てることができます。
住宅ローンを満額借りるべき理由
では、住宅ローンを借りる際、頭金は最小限にした方がよいのでしょうか、それともできる限り頭金を入れて、残債を少なくした方がよいのでしょうか。
先ほども説明した通り、住宅ローンの金利は非常に安くなっています。1%を切る金利で借りれるのは、個人では住宅ローンだけです。これを利用しない手はありません。
住宅ローンを満額借り、1,000万円を投資にまわした場合と、住宅ローンを1,000万円減額してみた場合を計算し、それぞれ比較しましょう。
同じ5,000万円の家を、金利1%の35年固定金利で買った場合、4,000万円の場合、返済額は約4,750万円になります。一方5,000万円の場合は、約5,930万円なので、200万円ほど差が出てきます。しかし、1,000万円を複利で運用した場合、おなじ1%でも400万円の利息がつきます。
つまり、>頭金を入れない方がお得なわけです。これは、返済の場合、残債が減っていくので、返済利子はどんどん少なくなっていく一方、運用資金はどんどん増えていくので、利息もそれに伴い増えていくからです。
また、株等であれば、1%以上の運用は十分に可能です。リスクをとる必要はありますが、選択肢としては検討したいですね。
その他にも、途中で何かあった場合、団体信用生命保険によって、借金はチャラになります。これを踏まえても、少なければいいものではない、ということがわかると思います。
心情的にはあまり借金はしたくないですが、住宅ローンであれば、上手に活用してもいいかもしれません。
まとめ
その2では、サラリーマンが利用する中で最も大きい借金の住宅ローンについて解説しました。住宅ローンは、歴史は古く、日本でも、海外でも、国がその利用を後押ししてきた背景があります。
そのため、通常の借金では考えられないくらい、低金利で長期間借りることができます。また、団体信用保険や、固定金利制、様々な税務メリットや助成金など、優遇されている仕組みを活用することが可能です。
住宅ローンは、金額が大きいので、なかなか借りる金額を大きくしたくないかもしれません。しかしながら、状況をよく判断し、冷静に借りる金額を決めていき、上手に活用していきましょう。