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【格闘技】

村田諒太が世界王座奪取 ミドル級五輪王者史上初

2017年10月23日 紙面から

アッサン・エンダムに7回TKO勝ちでWBA世界ミドル級新王者となった村田諒太は、顔をゆがませながら声援に応える(北田美和子撮影)

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◇WBAミドル級タイトルマッチ

 日本のボクシング界に、新たな歴史が加わった。村田諒太(31)=帝拳=が5月の王座決定戦の再戦となったWBAミドル級タイトルマッチで、王者のアッサン・エンダム(フランス)を7回終了TKOで破った。五輪金メダリストのプロ世界王者は日本人初。日本人の同級世界王者は1995年の竹原慎二以来で2人目。WBCフライ級王者・比嘉大吾(22)=白井・具志堅スポーツ、WBCライトフライ級王者・拳四朗(25)=BMB=は、ともに初防衛に成功。日本人世界王者は11人になった。 

◆強がって“否定”

 村田の顔がくしゃっと崩れた。ベイレス・レフェリーに左腕を上げられながら、こぼれる涙を抑えることができない。5月に不可解な判定で負けても、一言も不平を漏らさず、公の場では涙を見せなかった男が、リングの上で男泣きに泣いた。

 「涙ぐんでいたかって? ノーコメントです。ベルトを取ったことがないから、今までにない表情になりましたけど」と、本人は強がった。だが、あふれた感情は見た者すべてが証人だ。ベルトはそれほどまでに重かった。

 因縁の再戦が、これほどまでに一方的になるとは誰が予想しただろう。1回からエンダムは村田のプレッシャーに後退を続け、パンチを打たずにクリンチする消極的ボクシング。村田は3回以降、接近戦でボディーを打ち込み、相手のガードが下がってきた4回と6回に右ストレートをたたきこんだ。王者は戦意を失い、7回終了時に力なく首を振って試合を放棄。その瞬間、日本人五輪金メダリストが初めて世界のベルトを手にした。村田も「このままいけば、ギブアップに追い込める」と思っていたという。

 「前回がああいう内容(ダウンを奪いながら、不可解な判定負け)だったので、勝って当たり前と思われている。そのプレッシャーは大変なもの。そのせいでしょう、練習中の好不調の波が前回よりも大きくなっている」と、近くで見守り続けた元WBCスーパーライト級王者の浜田剛史・帝拳ジム代表(56)はいう。試合20日前になっても調子が悪すぎて、スパーリングを早めに切り上げる場面もあった。

◆運動会で調子↑

 試合2週間前ごろから調子が上がっていった。きっかけは練習休みだった今月8日、6歳の長男・晴道くんと3歳の長女・佳織ちゃんの運動会だった。

 「2人とも足が速くてね。下の子は気が強いし。おんぶ競争にも(親子で)出て、本当に人生で一番幸せな日でした」

 ミドル級の五輪王者が同級で世界王者となったのも、世界初。だが、目線はもっと先にある。「ミドル級にはぼくより強いチャンピオンもいます。そこを目指して頑張りたいと思います」。3団体統一王者ゴロフキン(カザフスタン)、そのゴロフキンと引き分けたアルバレス(メキシコ)…。そんな世界的スーパースターとの対戦を目指し、新王者は戦い続ける。 (藤本敏和)

 

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