ブロックチェーンが引き起こす、送電網の抜本的変革
再利用可能エネルギーで発電した電力の管理・追跡にブロックチェーンを利用しようとする動きがある。現在の証書ベースの取り引きに比べて誤りやコストを低減できるだけでなく、電力の売買の仕組み自体を抜本的に変革できるかもしれない。 by Mike Orcutt2017.10.23
送電網において、太陽光や風力、あるいは他の再生可能な資源から作られた電力と、化石燃料から作られた電力を区別することはできない。そこで、全世界の行政機関は、クリーンエネルギーの生産量を追跡・管理するためにグリーン電力証書に基づくシステムを構築してきた。
しかし、これらの証書の管理の仕方は「最悪」であり、再生可能エネルギーへの投資の妨げになっているとジェシー・モリスは指摘する。モリスは独立非営利法人ロッキーマウンテン研究所(Rocky Mountain Institute)に務めるエネルギーの専門家だ。ビットコインや他の電子通貨の中核技術であるブロックチェーンをベースにした新たなシステムが、この問題を解決できるだろうとモリスは言う。
モリスによれば、グリーン電力証書の追跡管理は、ブロックチェーンのあまたある適用分野の一つだ。普段の業務に支障をきたすことなく、電力分野のデータ管理の課題を解決できるだろうという。実際、長期的に見てブロックチェーンが送電網の構造そのものを変革するだろうと考える専門家は多い。
ブロックチェーンは暗号化されて共有される元帳であり、コンピューターのネットワークにより管理されている。ネットワーク上の複数のコンピューターを使って、取り引きを認証する。ビットコインの場合であれば、取引は個人ユーザー間の暗号通貨の移動を指す。各ユーザーが元帳にアクセス可能であり、管理権限を持つ単一の組織が存在するわけではない (「Why Bitcoin Could Be Much More Than a Currency」を参照)。ブロックチェーンの支持者たちは、データを共有するピアツーピア・ネットワークを使う業種で、この技術は特に有望だと主張する。たとえば、送電網を経由してつながる電力事業者と消費者である。
現在、再生可能エネルギーを利用する発電所が相当量の電力を生産しているが、電力メーターが出力するデータは、まず帳票に記録される。この帳票が登録担当の事業者へ送られ、新しいシ …