WHO、ムガベ氏親善大使任命を取り消し
世界保健機関(WHO)は22日、ジンバブエのロバート・ムガベ大統領のWHO親善大使任命を撤回した。心臓病などを啓発する親善大使へのムガベ氏の任命をめぐっては批判の声が多方面から出ていた。
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は声明で「懸念を表明したすべての声に慎重に耳を傾けた」と述べた。
テドロス氏は以前、公衆衛生の向上に貢献したとしてジンバブエを称賛していた。
しかしジンバブエの医療システムは近年、破綻していると指摘する声もある。
37年に及ぶ統治の最初の20年間、ムガベ氏はジンバブエの医療を大きく拡充した。しかしこのシステムは、2000年以降のジンバブエ経済の破綻のあおりを大いに受けた。
医療従事者は頻繁に給料をもらえず、薬も不足している。その一方でジンバブエの平均寿命より30年長生きしているムガベ氏は、治療のため外国に渡航している。
テドロス氏は今年5月に「不可能なものはないと証明しよう」というスローガンの下、WHO事務局長に選出された。テドロス氏はムガベ氏に対し、親善大使の役割を「地域の仲間たちに影響を与える」ために使ってほしいと述べていた。
しかし今回の任命には驚きと非難が殺到した。英国政府、カナダのジャスティン・トルドー首相、英国のウェルカム・トラスト財団、非感染性疾患(NCD)のネットワーク「NCDアライアンス」、国連の監視団体「UNウォッチ」、世界心臓連盟(WHF)、米国の禁煙団体「アクション・アゲインスト・スモーキング」(ASH)、ジンバブエの弁護士たち、それにソーシャルメディアなどがこの決定を批判した。
南アフリカのヨハネスブルグで取材するBBCのアンドリュー・ハーディング記者は、ムガベ氏の支持者たちは今回の一連の出来事を、西洋諸国からのアフリカへの干渉とみるだろうと指摘した。
広報活動の失態で芽生える疑問――イモーゲン・フォークス記者、BBCニュース(ジュネーブ)
人権団体などからの非難の嵐や加盟国からの失望の声を受け、WHOはロバート・ムガベ氏の親善大使への任命を取り消すほかなかった。
急な方針転換を受けて、WHOの事務局長になったばかりのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス氏の指導力を問う声が出るだろう。
ムガベ氏を親善大使とする決定は数週間前になされたとみられる。にもかかわらず、人権侵害の疑いがかけられ、自国の医療サービスを破綻させた人物を親善大使に任命することが、物議を醸すかもしれないとテドロス氏は認識していなかったようだ。
WHOは改革の新時代に乗り出していたはずだった。しかし実際には、広報活動の大失敗に陥ってしまった。