衆院選:自民大勝で改憲論議加速も-国民の理解に努力と安倍首相

更新日時
Japan's Prime Minister Shinzo Abe Reacts To The Election Results

安倍首相

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  • デフレ脱却、消費増税、成長戦略と経済は課題山積
  • 改憲優先で改革の遅れに懸念-慶応大大学院・岸教授

衆院選での与党大勝を受け、安倍晋三首相は東京都議選惨敗などで陰りの見えていた求心力を回復、来年秋の自民党総裁選での3選に道を開いた。憲法改正に向けた議論の活発化が予想される一方で、成長戦略実行の遅れを懸念する声も出ている。

  安倍首相は23日の記者会見で憲法改正について、「与党、野党で幅広い合意を形成することに努めることが必要であり、国民投票において半数を得るべく、国民的な理解を得るよう努力もしていきたい」と述べた。

  自民党は衆院選公約で、自衛隊の明記など4項目を中心に「党内外の十分な議論」を踏まえ、原案を国会に提案・発議し、改憲を目指す方針を掲げた。首相は5月、2020年の施行を目指す考えを表明したが、公約には盛り込まなかった。

  NHKの開票速報によると、衆院選では自民、公明の与党だけで3分の2超、希望の党と日本維新の会を合わせた改憲勢力では約8割の議席を確保した。

  大和大学講師の岩田温氏は安倍首相が提唱している憲法に自衛隊の存在を明記する案は、ほとんどの国民から支持を得られるとして、安倍政権の下で改憲について「一定の結論を出しておくのは当然のことだ」と指摘。保守政党を自称する希望の党にも改憲論議を「リードする役割を担ってほしい」と期待感を示した。

経済

  慶応大学大学院の岸博幸教授は、衆院選で自民党が大勝したことで憲法改正が安倍政権の「メインテーマ」になることから、「憲法改正で忙しいから改革は進まないということになる可能性が高くなってしまった」との見方を示した。

  経済政策では、デフレ脱却は達成できておらず、アベノミクスの第3の矢として位置付けられた成長戦略の実行や19年10月に予定される消費増税など課題が山積している。金融緩和からの出口戦略を見据える日本銀行では、来年4月に任期満了となる黒田東彦総裁の後任人事が懸案となる。

  東京大学大学院の内山融教授は、今後の政権運営に当たっては金融緩和と財政出動を進めたアベノミクスの出口戦略の検討が必要だと指摘。安倍首相は「アベノミクスの継続で支持をキープしながら憲法改正したいのかもしれない」が、「特に財政再建をちゃんと考えていかないと、下手をすると金利が急騰してハイパーインフレになる可能性もある」と注文を付けた。

  政府の規制改革推進会議の委員で、政策コンサルティング会社「政策工房」の原英史社長は、アベノミクスは「成長戦略がまだ十分ではないと長く言われてきており、特に十分に進んでいなかったのは規制改革だ」と述べた。具体的には電波割当制度や規制を一時凍結して迅速な実証試験を促す「日本版レギュラトリー・サンドボックス」などに取り組むよう求めた。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE

日経平均歴代トップの15連騰達成、米政策期待と自公政権圧勝を好感

更新日時
1502920771_nikkei japan stock
Photographer: Noriko Hayashi
  • 東証1部33業種は32業種上げる、輸出や素材セクター中心
  • 衆院選は与党議席が3分の2超す、11月1日に安倍4次内閣発足へ

23日の東京株式相場は、日経平均株価が歴代最長となる15連騰。米国の税制改革の実現期待に加え、衆院選での与党圧勝で政権安定を好感する買いが膨らんだ。為替が3カ月ぶりの円安水準に振れた影響もあり、電機など輸出株、鉄鋼や化学など素材株中心に幅広い業種が高い。

  日経平均株価の終値は前週末比239円01銭(1.1%)高の2万1696円65銭で、1996年7月以来の高値。TOPIXは14.61ポイント(0.8%)高の1745.25と11営業日続伸し、連騰記録は昨年11月28日までの12連騰に次ぐ。水準は2007年7月以来の高値。

  アセットマネジメントOneの柏原延行チーフ・グローバル・ストラテジストは、「マーケットフレンドリーと言われる安倍政権の枠組みが維持されたことを好感する投資家は多い」と指摘。日本銀行の緩和的金融政策が据え置かれるとの見方が大勢の中、「米国で税制改革が進展していく可能性が高まり、米株高、景気加速、米金利上昇でドル高・円安が進みやすくなり、日本株の将来的な株高への信認が強くなった」と言う。

東証内
東証内
Photographer: Yuriko Nakao/Bloomberg

  20日の米国株は、S&P500種株価指数が0.5%高となり最高値を更新、ダウ工業株30種平均も165ドル高と強い動きだった。19日夜に上院が2018年度連邦予算の大枠を定めた決議案を可決したことを好感した。また、9月の中古住宅販売件数が市場予想に反し、前月比0.7%増となったこともプラスに働いた。政策進展が米経済を刺激するとの見方から米国債は下落し、10年債利回りは2.38%と7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇。

  国内では第48回衆院選が22日に投票、一部を除き即日開票され、定数465議席のうち、自民党が単独で過半数(233議席)、連立政権を組む公明党と合わせると3分の2(310議席)も超え、与党が圧勝した。共同通信の23日午後の報道では、自公両党は11月1日に特別国会を召集し、首相指名選挙を経て第4次安倍内閣を発足させる方針を確認。同日の読売新聞によると、安倍首相は全閣僚を再任する意向という。野村証券投資情報部の山口正章エクイティ・マーケット・ストラテジストは、衆院選結果にサプライズはないが、「アベノミクスが見直される可能性が後退し、安心感はある」と話していた。

  週明けの日本株は日米の政策進展期待から幅広い業種に買いが先行、記録的連騰による高値警戒感を投資家のリスク選好姿勢が上回り、日経平均は午後にきょうの高値となる265円高の2万1723円まで上昇した。きょうのドル・円相場が一時1ドル=114円10銭と、7月11日以来のドル高・円安水準を付けたことも企業業績の上乗せ期待につながった。しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、「日本の企業業績は良好、米国経済も堅調で、今はあまり売る材料がない」とし、年末までの上値余地を日経平均で2万2000円、TOPIXで1770とみている。

  東証1部33業種はパルプ・紙、鉄鋼、電機、化学、保険、鉱業、機械、非鉄金属など32業種が上昇。空運1業種のみ下落。売買代金上位では、ゴールドマン・サックス証券が目標株価を上げた日本電産、電池部材事業のミーティングで拡販を確認とSMBC日興証券が指摘した住友化学が高い。半面、NTTや花王、電通は安い。

  • 東証1部の売買高は15億8207万株、売買代金は2兆5942億円、代金は前週末に比べ5%増えた
  • 値上がり銘柄数は1639、値下がりは313

 

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE