家庭内の間取り情報を吸い上げる「ルンバ」
消費者のプライバシーも脅かされている。例えば、米アイロボットの掃除機「ルンバ」が、床を掃除するだけでなく家庭内の間取りデータを収集し、メーカー側がそれを外部企業に売り込もうとしていると報じられた時は、ユーザーたちを愕然とさせた(しかし、アイロボットはそのような意図はないと強調している)。
また、「ウィーバイブ」というバイブレーターを製造販売しているカナダのスタンダード・イノベーションは、そのユーザーに関する非常にプライベートな情報を収集、記録していることがハッカーによって暴かれた。これを受けて、同社は、原告1人当たり最大127ドル(約1万4300円)、総計で最大320万ドル(約3億6100万円)を支払うことで示談に同意した。
さらに、トラクターのジョンディアについては、メーカーが認定したソフトしか使用が認められていないことに対し、農家側が反発している。問題が発生した場合、遠く離れた修理店まで行かなければならないため、繁忙期に故障が起きたら商売上、大きな痛手を被る可能性があるというのだ。一部の農家は、ユーザーが自分で直せないように組んであるソフトの制限を解除してある。制限を回避するために、東欧で開発されたソフトを利用しているという。
こうしたメーカー側による消費者のプライバシーへの介入を前に消費者たちは、自分たちの所有権というものを注意深く守らなければならないことを改めて認識すべきだ。
自分の「所有物」に手を加え、改造したければ好きなように改造できる権利、そして、そこから収集されるデータを誰が使っていいのかを決める権利に至るまで、闘ってでも守らなければならない。
米国の十数の州では「修理する権利」を法制化する動きも
米国ではこうした考え方が浸透し、「修理をする権利」というのを定めるための法案が十数の州で検討されている。また、欧州議会は、洗濯機などの製品をもっと修理しやすくするようにメーカーに働きかけている。
フランスの家電メーカーは、予想される耐用年数を買い手に伝えることを義務付けられている。それによって、修理しやすいかどうかがある程度わかるというわけだ。
デバイスによって得られる「自由」が損なわれる
さらに、規制当局はもっと競争を促すために、メーカーが認定する修理店と同様に、独立系の修理店も商品に関する情報やスペア部品、修理ツールなどを入手できるようにするべきだろう。これは既に自動車業界では当たり前のルールとなっている。
「所有」という概念は決して消滅しつつあるわけではない。その意味が変化しつつあるだけに、今よく考える必要があるということだ。
概してスマホをはじめとしたデバイスは、それを使う人にとって、様々なやりたいことを実現させるための手段という前提で販売されている。しかし、それが他の誰かにコントロールされているとなれば、せっかくそのデバイスの入手によって新たに手にした自由が損なわれてしまうことを意味する。
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