これなら民進党で戦えば良かった…

前原誠司さん
選挙戦も折り返し、中盤に差し掛かったときのことだ。元民進党の関係者からこんな声が聞こえてきた。
「前原さんの決断? これなら、民進党として野党と組んで戦ったほうがマシ。それに尽きるでしょう」
9月28日の解散当日の時点では、事実上の解党、希望の党合流を決めた前原さんを賞賛する議員が多かった。
「前原さんの決断は最高の一手。1ヶ月後を見ててごらん。これで政権交代だよ」という声も聞こえてきた。
何かにつけ勢いと風ばかりを重視して、少しでも情勢が悪くなると決定を批判する。旧民主党から続く悪癖——それをまた見せつけられる一言だった。
前原さん、代表辞任へ
前原さんは硬い表情のまま10月22日、こう述べざるを得なかった。
「私自身は責任を取る。(民進党代表を)辞任をするということは当然」
立憲民主、響きわたる拍手と歓声

枝野幸男さん
同じ日、立憲民主党の開票センターとなった東京都内のホテルでは、断続的に拍手と歓声が響いていた。
共同通信の出口調査で、無党派層の支持は自民党を上回りトップに。当初は難しいと見られていた野党第1党も確定した。
枝野幸男代表は、報道陣の質問に間髪入れずにこう語った。
「次の衆院選で過半数の獲得を目指す」。あくまで目指すのは政権交代という宣言だった。
なぜ支持が広がったのか?

なぜ、無党派層にも支持が広がったのか。いくつかの要因がある。
SNSを通じた動員戦略を徹底したことも大きいだろう。
「ずっとやってみたいと思っていた。私たちのSNSチームは非常に優秀だった。今後もSNSを通じて、国民の声を集めたい」
この記事でも書いたが、立憲民主党のSNS戦略は、国会前デモ、2016年参院選の野党共闘の流れの中にある。
この動きをリードしたSEALDsの元メンバーが関わっているからだ。
安倍政権、自民党に批判的なリベラル層の受け皿になる、ということを明確に意識したメッセージを発信し続けた。
それ以上に大きかったのは筋を通したこと

だが、それ以上に影響が大きかったことがある。
枝野さん本人の言葉を使えば「筋をしっかりと通して」いったこと、つまり「政治姿勢」だ。
この日の会見で枝野さんは政策以上に強調したのはこういうことだった。
「上からの政治ではなく、下からの政治を目指す。永田町の内側ではなく、外側。国民のほうを向いた政治をやる」
「理念・政策をぐらつかせてまで自民党に対抗する政党を作るという考え方には国民の皆様に拒否感があった。今回の結果で証明された」
「理念や政策よりも永田町の数合わせを優先していると受け止められないことが大事だ」
思想・信条を超える支持

小池百合子さん
安保法への対応など、これまで民進党として掲げてきたはずの理念・政策をあっさり捨て、「数あわせ」と捉えられた、希望の党合流騒動を意識した発言だろう。
確かに前原さんが希望の党合流を決めた時、単純に世論調査の数字を足し合わせれば、自民党に対抗できる勢力ができるはずだった。
しかし、希望・小池百合子代表のリベラル派排除発言に始まり、協定書をめぐるゴタゴタが続いた。
足し算は破綻

結果的に、足し算は破綻し、政策や理念を貫こうとした立憲民主党のほうが選挙戦中に評価をあげた。
石原慎太郎・元東京都知事など、理念が大きく異なる保守系の論者からも枝野さんの対応をする賞賛する声があがることになった。
演説にいけば、本人も「最初は戸惑った」という「枝野」コールが若い女性からも沸きおこり、立憲民主党のパンフレットを「こっちにください」と求める声もそこかしこであがる。
いみじくも選挙戦前、枝野さんは単独インタビューでこう語っていた。
——立憲民主への支持はリベラルだからではなく、主張を貫こうとする政治的態度に集まっているのではないか?
「そう思いますよ。その意味では、民進党から希望の党に行った人が一番、選挙がきついでしょうね」
この読みは正しかった。
現実は与党の大勝

筋を通して躍進したことは一面では事実、しかし、現実は300議席超を獲得した、自民・公明の圧勝だ。
見方を変えれば、反安倍政権を掲げてきた野党勢力は、惨敗を喫したと言ってもいい。
「自民党一強などと言われていますが、私は安倍政権の支持は意外と脆いと分析しています。安倍さんが選挙で勝ってきた最大の勝因は『低い投票率』と『野党』です」
これは政治学者の中北浩爾・一橋大教授の分析である。
投票率は戦後2番目に低い、53・6%前後になりそうだ。
政治への関心を掘り起こせず、低い投票率になれば組織力のある与党が議席を伸ばすのは当然の帰結。その上、野党が分裂してしまっては、政権与党を利するだけだった。
この現実を受け止めているからだろう。枝野さんの表情は終始硬いまま。
集まった写真家から「笑顔をお願いします」とリクエストを受けても、硬い表情で受け流し、笑顔を見せる機会は最後までそう多くなかった。
国政選挙で、自民党・安倍政権の圧勝が続く中、今後の政治はどうなるのか。舞台は国会へと移っていく。
真価が問われるのは、これからだ。
バズフィード・ジャパン ニュース記者
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