JR九州を猛烈に突き動かした「逆境と屈辱感」

「本気になって何が悪い」著者の唐池会長語る

もうダメだと思われた九州の鉄道は、JR発足時の1.4倍に拡大した(撮影:梅谷秀司)
昨年上場を果たしたJR九州。唐池恒二会長が執筆した『本気になって何が悪い』からは、ダイナミックな事業展開の裏話はもとより、次々と壁を突破してきた著者の人となり、周囲を盛り立てる「気」のようなものが生き生きと伝わってくる。洒脱な語り口も魅力。ビジネス本にしてワンダーランドを旅するような、楽しさに満ちた一冊だ。

 

――今回も御自身で執筆。テンポよく笑わせつつ胸に迫る箇所もあり、プロ顔負けの筆力ですね。

んー、なかなかのもんですな。ねえ(笑)。

――上場までの道のり、丸井への出向、博多─釜山(プサン)間高速船「ビートル」就航、外食事業の再建、農業参入ほか内容てんこ盛りです。

国鉄民営化直後の若い頃に丸井で学んだことが、僕の強烈な土台になった。今の自分があるのは外食事業、ビートル、そして丸井で学んだことが3分の1ずつ。それほど大きな先生です。丸井での経験は3つのカルチャーショックでした。当時の意識はまだまだ国鉄マン。その国鉄と民間とのものすごい落差。頑固でお堅い鉄道業と生き馬の目を抜く流通業の差。そして当時は本社が門司だったから、仕事のテンポ、人のアンテナの高さが東京と全然違ったのね。

中央の傲慢さを見返してやりたい

――会社発足30年目で上場を果たせた理由として、真っ先に挙げられたのが「逆境と屈辱」。

屈辱感はありましたね。中央の傲慢さを見返してやりたいっていうのは、現場にも経営陣にもみんなありました。九州は赤字の鉄道を国鉄から引き継いだ。何を要請しても「それより地方はコスト削減せよ」。列車体系も中央の事情最優先で、地元のためのダイヤは後回し。おまけに九州では高速道路の整備が一気に進み競争が激化、逆境からスタートした。

一方JR東日本・東海・西日本は最初からいつ上場しようかって話で、JR九州、北海道、四国はいつまでもつかというのが大方の見立てだった。そのときに「JR三島会社」という言葉が生まれたんです。学校で教わる大きな島といえば佐渡島や淡路島でしょ。北海道と九州と四国を島と呼びますか? それにいちばん腹が立ったんです。

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  • NO NAMEa83feda3375e
    JR北海道の再建お願いします。

    鉄道だけではやっていけない。
    気候寒冷
    自然豊か
    温泉あり
    観光資源あり
    外国人観光客来る
    ロシア人比較して多い
    レジャー施設あり
    土地広大
    過疎化深刻
    財政難自治体多い

    何がヤレる?
    JRならなんでもヤレる!

    この人なら考え出すだろう。
    up15
    down0
    2017/10/22 16:13
  • NO NAME6a0b455e8f33
    このインタビューを受けている方も仰っていますが、北海道での鉄道は誰が経営しても至極困難でしょう。九州は、他に産業があり、JR発足以後に、退職してくれる層や、退職に追い込める層がいたから、良かったんでしょう。地の利、これが全てです。港区の大不動産屋さんも、地の利で勝負していますからね。北海道はその上、豪雪でしょう。でも、北海道旅客鉄道を再建という方がいらっしゃったら、注意が必要ですよ、外食もなんでもそうですが、そういう御仁は、コストカットや無理無駄の削減、費用の見える化とかキーワードを並べて、そんでもって実行できるのは労働条件の改悪と外注化による経費圧縮だけですから。
    up2
    down0
    2017/10/22 23:22
  • NO NAMEe3c22d26a093
    中央に頼っては地方は再生されない。ということを地で行った人ですね。頭が下がります。
    地方がどんどん衰退しているのは、中央政府が強すぎることも一因でしょう。地方に活気をもたらすには、その自治体に活気がないといけません。そのためには地方交付税に頼らない財政の確立が必要です。税財源配分の見直しを一刻も早く進めないといけません。また、道州制導入も一つの方途だと思います。
    up4
    down2
    2017/10/22 18:48
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